『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  10

2019-04-26 15:26:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスがイリオネスの態度からただならぬ気配を感じとる。
 『おう、イリオネス、どうした?』
 『この件については、統領、時間をかけて検討したいと考えています。統領の言葉の中にもありますが、承継譲渡ではなく承継と譲渡を分けて対処しなければならないのではないかと考えています』と言ってアエネアスと目を合わせる。
 『そうだな、お前の言う通りだ。承継と譲渡は、お前の言うように分けて考えねばだ。対外条件が絡む、経営的な見地から見ればお前の言うことにうなずける。対外条件と経済条件が絡む。相手と干戈を交えての勝った負けたの世界とは違う。クレタに残す当方の者らの経済面から見た安心立命を考えねばならない。我々が構築した船舶建造の技術を人に託して、人とともに譲り渡すカタチになるわけだからな。慎重に対処しなければならないわけだ』
 『そうです、その通りです承継を受けてくれる相手方がどのような人であるかを充分に考えねばならないのです』
 二人は、鋭く目線を合わせて話し合っている。
 イリオネスが話し続ける。
 『今、現在、私らが合務遂行の上で懇意にしてくれている相手がいるわけです。それらのことも考えて慎重に処する覚悟でやらねばなりません』
 『イリオネス、お前と俺だけでは、考えの行き届かぬところがあるやもしれないということか』
 『そういった懸念も考えられます。明後日には、スダヌスも来る、オキテスも加えて、考えを練るか。それとも二人だけで考えて、依怙地を張って、まず交渉のスタートを切る、やりながら考える、いかんと思えば戻る、試行錯誤をやる、やりすぎ注意だが。イリオネス、考えろ!』
 『統領、二人で話すのをやめて少々考えましょうや』
 『おう、解った。考えてもみなかった壁に突き当たったといった感じだ。少しばかり休憩だ』
 イリオネスがぶどう酒の入った壺と酒杯を持ってくる、杯に満たす、口に運ぶ、乾いたのどを潤す、何となく心がおちつく。
 二人が顔を合わせる、作業に関連した雑談を交わす、思考が展開する話が飛び出すかもしれない、雑談をいい方向へ展開できるかもしれないである、成り行きに任せて話し合う。 
 話があらぬ方向に展開していく、いい雑談にはなり得なかった。
 『おう、イリオネス、いい雑談にはならなかったな』
 『ムムッ!でしたな』
 『こうなったら方策の段取りでも考えるとするだな』
 二人は顔を見合わせた。
 『おう、イリオネス、こうなったらやむを得ない、度胸を決めて話し合い、最善を見つけるだ!覚悟を決めろや』
 『まず飛ぶ!適所見つけて、飛び込む!この一手ですな』
 二人は顔を見合わせる、大口を開ける、大声をあげる、笑い合った。