『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  70

2019-07-20 04:56:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが提案した事案に決断を下す、アエネアスが感じていた得体の知れない不安感が消える。
 クレタ島の東部地区の商圏において潜んでいた懸念が完全に消滅する。願ってもないことである、後事を託する者らの安心立命である。彼は安堵する。
 このあと、新暦第一の月の建造予定艇数が話し合われる。受注艇の引き渡し計画をオキテスが報告して話し合いが終結する。
 アエネアスがオキテスに話しかける。
 『おう、オキテス隊長、展示試乗会催行の旅の無事を祈る。あくまでも安全航海だぞ!』
 『ありがとうございます。展示試乗会催行の旅は、安全航海をもって無事を誓います!』
 『おうっ!無事に帰ってくるのだ』
 会所に会同している四人に親密の心情が通う、感動する、業務遂行の成功と無事を一同に予感させて終わる。
 パリヌルスがオキテスに声をかける。
 『おう、オキテス、無事に帰ってきてくれよ、待っている!その間にやることは、ドックスととことん話し合って遂行する』
 『おう、よろしく頼む』
 二人はそれぞれに担当する場に歩を向ける。
 アエネアスとイリオネスが顔を合わせる。
 『統領、俺らが見落としていたところをオキテスにつかれましたな。それを事案として提案される。決定する。喜ばしいことです』
 『そうだな、今後の営業活動において、エドモン浜頭との間に起こるかもしれない営業に関しての摩擦をけん制したと思う』
 彼ら二人は、営業活動に関しての話し合いを終える。
 パリヌルスは、会所をあとにする、自分の持ち場に戻ってくる、頭の中の懸案は軍船の改造の件である。
 帆柱構造については構想ができている、残るは用材の件である。
 次の件は、船としての安定走行構造を考えねばならない、そして、舵構造を思案しなければならない。
 彼は木炭を手にして木板に対峙する、脳漿を絞る、絞って落ちる脳漿のしずく、落ちていく先を確かめる、砂地に落ちる、しみこんで消える。
 思考が次に移る、手順、段取りを考える、思考が造作工程のあちこちに飛ぶ、考える焦点が定まってくる。
 彼は立ちあがる、波打ち際に立つ、波立つ海面、小島に停留している軍船に目を止める、潜在の意識が造作工程、手順、段取りを気づかせる、陸に揚げている軍船のところに歩を運ぶ、丹念に見る、手で触れる、工程、手順、段取りに基づいて思考を展開させる。
 彼は、走行安定性構造に根をつめて考える、軍船の大きさ、船長、乗り組む者らの乗船状態を思い描く、走行時の波状態と船を考える、思考がまとまってくる、大波、小波、荒れる波、船と波との親和、融和を考える。
 思考がまとまってくる、造作工程に基づく手順、段取りが決まってくる、構造構想が頭の中に描かれる、船体構造に適したスケールの構造が決まる、適正構造の形態が決まる。
 彼は瞼を軽く閉じる、風をはらむ2本帆柱4枚帆、船が波を割る、安定した走り、波立つ海と融和して走行する船のイメージが閉じた瞼の中に像となって見えた。