『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  271

2010-09-17 06:33:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『こりゃ!キノンっ!それ以上言ってはならん。今、言ったことも少し言いすぎだ。明日、浜の皆に言う話のねたがなくなるがな。ワッハッハ』
 話をしている間に自分たちの浜に来ていた。静かな波の海を十六夜の月が明るく照らしていた。
 アエネーダナエの砦の者たちも、この十六夜の月を眺めていた。
 宴で話題にあがったアーモンドの大群生の話が、もう皆に伝わっていた。彼らも話に尾ひれをつけた。話が膨らんでいく、夏の宵がふけていった。
 誇大妄想は、彼らの希望を膨らませた。この時代を生きている彼らの思いを満足させるのか、それとも、この膨らむ思いを制御するのか。
 しかし、結果として、彼らの思いを、この大自然が彼らに与えるのか。
 彼らは、大いなる摂理に気づいてはいなかった。

第2章  トラキアへ  270

2010-09-16 18:58:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 宴は終わり、トリタスたち6人は帰路についた。彼は、道すがら二人の浜衆に声をかけた。
 『俺の話をきくか。今度の山行の旅でイリオネスさんからもらった道具だが、それはそれは、フシギで奇妙な代物なのだ。明日、皆に見せようと思っている。お前たちも明日だ。
想像して夢に見るなよ。ワッハハハ』
 『あ~あ、キノン、荷役の二人も、明日、皆に見せるまで話してはならんぞ』
 浜衆たち二人は、暗がりの中でキノンたち三人の顔を覗き込んだ。
 『キノン、ちょっと、その道具の話をしないか。そんなにフシギ、奇妙、キテレツな道具なのか。ちょっと、話をしろよ。俺たちが見て知っている道具の類かな。さわりでいいから話せよ』
 『だめだめ、浜頭もあのように言ってだ。話すわけにはいかん!まあ~、勝手に想像しろ。全く持ってフシギな道具だからな。あれがあれば、航海の心配がなくなる。あっ!いけねえ!浜頭ごめんなさい』

第2章  トラキアへ  269

2010-09-15 08:05:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 皆が杯を片手に立ち上がる、杯を酒で満たす、アエネアスが声を上げた。
 『乾杯っ!』
 一同は、杯の酒を飲み干した。
 アエネアスは、トリタスに近ずき言葉をかけた。
 『トリタス、ありがとう。ここに集まった者たちを、こんなに喜ばせ、いい明日に命をつなぐ。トリタスありがとう。厚く礼を言う。明日は、頃合を見て、会議を開く、トリタス、お前も出席してくれ。昼飯を一緒にしようではないか。ここにいる浜衆もともに来てくれていい、俺たちは待っている。よろしいかな』
 『統領、ありがとうございます。喜んで出席します。』
 彼も明日につながる、ときとところにスタンスしていることに礼を述べた。
 周りにいた者たちも、一斉に『トリタス殿、ありがとう』 と声を上げた。
 『ところでイリオネス様、例のあの不思議な道具、私、いただいておいてもよろしいのですか』
 『あ~あ、いいともいいとも、ささやかではあるが、私たちからの貴方への感謝の品です』

第2章  トラキアへ  296

2010-09-14 07:39:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ギアスにとって、人間以外の生き物との命のやり取りは始めてであったのだ。今、改めて思いおこせば、俺が今、此処に生きているいるのが不思議に思われた。そう感じたとき、ギアスは、なんともいえない思いに襲われた。どちらにしても得がたい体験であったのだ。俺とあの大熊だけが、あの時、あの場所にいたのである。如何なる者も介入することの出来ない空間においてギアスと大熊が対峙していたのである。そのような感慨がギアスの胸のうちを通り過ぎて去った。
 統領アエネアスを囲んでの宴は、旨い旨いとしたたかに酒を飲み、供された魚をたらふく腹に収めた。しかし、彼らは、節度をわきまえていた。酔いつぶれる者はいなかった。彼らは、自分たちのおかれた立場を理解し、大いなる希望を胸に抱き、謙虚にふるまって生きていたのである。
 アエネアスが立ち上がる、彼は皆に話しかけた。
 『お~い、皆、動だ。よく飲みよく食べたか。オキテス、カピュス、ありがとう。旅からかえった俺たちを、このように歓待してくれた、礼を言う。明日は、朝から会議だ。宴は、これからの乾杯で終わるとしよう。いいな』

第2章  トラキアへ  295

2010-09-13 07:04:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らの思いは、もう、アーモンドの群生地に飛んでいた。
 『こりゃこりゃ、皆、そんな両手ばなしで喜ぶな。そこへ行き着くまでに危険が一杯ある。途中に蛇もいる。ギアスの肩を見ろ、大熊に襲われた傷だ。一瞬を間違えたらギアスは命がなかったのだぞ。明日から、アーモンドをどうするかについて、この大仕事に取り組む相談を皆でやろう。今日は、これから、このうまい魚を食べて、酒を飲んで語ろう』
 『ギアス、お前の武勇談を皆に語ってやれ。蛇もうまかったが、あの大熊の肉なかなかいけたぞ。』
 アエネアスは、ほろ酔いかげんで旅のみやげ話をした。聞いているほうは、アゴを落として聞き入っていた。
 ギアスは、大熊との決闘の始終を語って聞かせた。
 『ーー、折れた剣は、大熊の心の臓に突き刺さったまま林の中においてきた。まあ~そのようなわけだ。見てくれ、これが折れた剣の握りの部分だ。しかし、このように生きている。不思議に思う。俺もそうだったが、大熊も命がけだったのだ』 と、剣の握り部分を皆に見せて話を話を締めくくった。
 『ギアス、ところでどうだ、そんな奴と、また、会いたいか』
 『いや、もう二度と会いたくない。しかし、どうしても俺と会いたいという奴がいるのなら、会ってやってもよい。ま~、そんなところだ』
 広場は、藍色の夜のとばりに包まれつつあった。

第2章  トラキアへ  294

2010-09-10 06:44:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 三日間の山行の旅から帰った一行8人は、みごとに陽に焼かれていた。彼らは夕餉の席についた。
 アエネアスは立ち上がり、でっかいみやげ話を語り始めた。聞く者たちは真剣な目を彼に向けた。
 『やあやあ、皆、そんなに緊張するな。話しにくくていかん。トリタス隊の発見によるものなのだ。それはそれは、君らが聞いて、腰を抜かすような、でっかい!アーモンドの樹の群生地なのだ。その広さといえば、東西に120歩、南北に80歩という、とてつもなく広い群生地だ。アーモンドの樹の本数は、300本を優にに超えて、この丘陵の樹林帯、一帯に生えている。話はこれでどうだ。俺も腹が減っている。あとは食べながら話す。いいな』
 夕餉の席についている者たちは、声ひとつ、しわぶきひとつもらさずアエネアスの話に聞き入っていた。
 焼けた魚をほおばろうとあけた口を、そのままにして、話に聞きほれていた。まさに、腰を抜かさんばかりであった。
 宴は、このでっかいアーモンドの群生話に花を咲かせて、実までつけて、酒を飲み、魚を口に運んだ。
 皆、力いっぱい興奮した。話はふくらむ、ますます膨らんで、でっかくなった。彼らの意識は、採らぬ狸の皮算用である。話はふくらんではじけ飛ぶ寸前であった。
 『しかし、こりゃ、ぶったまげたな、収穫隊を編成して群生地に向かわんといかんな』
 『収穫は、時間をかけずに、いっときにやらんといかんしな』

第2章  トラキアへ  293

2010-09-09 06:47:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 水浴を終え、浜から帰った一行は広間でくつろいだ。アレテスは、ギアスの肩の傷に目をとめた。
 『お前、その肩の傷は何なのだ』
 『これか、これは名誉の勲章だ。勝負は一瞬だったが語れば長い。夕餉を食べながら話す。今は、この茶を飲ませろ』
 『お~お、そうか、それは楽しみだ話を肴に酒を飲もう』
 帰着した一行は、いっとき身体を休ませた。
 夕食の準備が整った旨、カピュスが伝えてきた。オキテスが集っている皆に声をかけた。
 『統領をはじめ、探索の皆、ご苦労でした。そして、ほかの皆も、今日一日ご苦労であった。夕食の準備が整った、西の広場です。行きましょう』
 『おうっ!オキテス、ありがとう。今日の漁、大漁だったそうだな。山からの帰りだ、海の幸をたっぷり食べたい。さあ、皆、行こう』
 アエネアスは、一同を促した。
 彼らは、西の広場に集まって砦に目を移した。
 砦は、赤々と茜の夕陽に照り映えていた。
 トリタスの浜からは、浜衆二人が、トリタスを迎えるべく、砦に着いた。彼らも夕餉の席に招じ入れられた。

変換忘れをやりました。深くお詫びします。

2010-09-08 09:53:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 第4行目です。『あれてす、---』 を
        『アレテス、---』 と訂正いたします。
 申し訳ありませんでした。
         
             やまだ ひでお

第2章  トラキアへ  292

2010-09-08 09:22:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスを先頭に漁に出ていた15人が帰ってきた。すかさず、アレテスが声をかけた。
 『おっ、オキテス、統領が探索から帰られたぞ。全員無事の帰着だ。ところで、今日の漁はどうだった?』
 『あれてす、今日は大漁だぞ。みんなに魚をたっぷりだ』 オキテスは続けた。
 『アレテス、頼みたい。カピュスに俺のところへ来るようにと誰かに伝えさせてくれ』
 『判った。お前どこにいる?』
 『これから、統領のところへ行く』
 彼は、皆の集まっている広間へ急いだ。中へ入るなり統領に持ち前の大声をかけた。
 『統領!お帰りなさい。ご無事でのお帰り何よりです』
 『おう、オキテス、無事、帰ったぞ。イリオネス、トリタス、ほかの者たちも皆、無事の帰着だ。』
 『よかったですね。夕食は魚料理がたっぷりです』
 カピュスが来た。オキテスは魚料理たっぷりの夕食を整えることを指示した。
 『判りました。隊長、ところで何人くらいですか』
 『そうだな、西の広場で30人くらいだ。それから、トリタスの浜へ、トリタス浜頭の無事帰着を知らせる使いを出してくれ。以上だ』
 アエネアスたちは、道中で汚れた身体を洗いに浜に向かった。西に傾きつつある夕陽は、海をこがね色に輝かせていた。

第2章  トラキアへ  291

2010-09-07 08:39:24 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お帰りなさい、統領!皆、無事のようですね』
 『おう!アレテス、帰ったぞ!皆、無事だ』
 イリオネスも声をかけてくる。
 『アレテス、帰ったぞ。砦の方、変事はなかったか』
 『変事はありません。ご安心ください』
 アレテスが先導して、砦へ向かった。
 開門して待ち受けている、パリヌルス以下、皆の顔が見えてきた。
 『おうっ!パリヌルス、帰ったぞ!』
 アエネアスは、しっかりとパリヌルスの肩を抱いて、互いの無事と達者を確かめ合った。
 『砦に変事はなかったか。でっかいみやげがあるぞ』
 手のあいている者たちが駆けつけてくる、皆が探索に出ていた彼ら一行を迎えた。
 パリヌルスは、一行の皆と握手を交わし、無事を確かめ、肩を抱いて迎え入れた。
 『イリオネス、ご苦労であったな、道中、大変であったろう。砦には変事はない安心してくれ。オキテスは、今日、漁に出ている、もう帰ってくる頃だ』
 『おう、パリヌルス、留守を頼んだ、ご苦労であった。探索のことだが、でっかいみやげがあるぞ。あとから、話を聞いて、腰を抜かすなよ』
 その時、門前からオキテスの大声が聞こえてきた。