『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  290

2010-09-06 07:30:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 帰途についた一行は、ただただ、ひたすらに砦を目指して歩を進めた。太陽が照りつける原野の中を進んでいく、帰路は往路に比べて、心ばかり、足運びは楽であった。汗は滴り流れる、彼らは、汗を流れるに任せた。砦建設の資材を伐りだした森も過ぎて、砦の全体像が見えてきた。
 砦では遠目の利くアレテスが北東の櫓に立っていた。彼は、アエネアスら一行の姿を視野の中にとらえた。即、傍らにいる従卒をパリヌルスの許に走らせた。
 『パリヌルス隊長、アレテス隊長から伝言です。統領の一行の姿が見えたそうです』
 『おう、判った。見張りをアレテスと替わり、アレテス隊長に北門に来るように伝えてくれ。急げ!』
 パリヌルスは、主だった者たちに伝令を走らせた。連絡を受けた者たちが北門に集まってくる、彼らは、北門を開き、門前に列をしいた。一行の姿が見えてきた。
 『アレテス、行くのだ!走れ、迎えに行けっ!』
 彼は、走った。声の届く地点にたどり着く、大声をあげた。
 『統領っ!』
 アエネアスは、それに答える手を大きく振った。

第2章  トラキアへ  289

2010-09-03 06:49:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 トリタスは歩を停めた。
 『統領、見てください。アーモンドの大群生です』
 『おうっ!これはすごいっ!』
 アエネアスは絶句した。
 林の中に点在するアーモンドの樹の密度がずば抜けている光景を目の当たりにして感動した。イリオネスも、キノンも、この光景を見て肝をつぶした。
 『トリタス、ありがとう!』
 アエネアスは感無量であった。
 『トリタス、お前にどれだけの感謝の感情と言葉を贈っても足りない。本当にありがとう』
 アエネアスは、骨も砕けよとばかりに、しっかりとトリタスを抱きしめた。
 トリタスは、アーモンドの大群生地を案内した。
 一行は、『アーモンドの大群生』という、でっかい収穫を背負って、野営地に向けて引き揚げた。
 彼らは、アーモンドの大群生を話題に、和気を沸かせて、朝食を終え帰途に着いた。

第2章  トラキアへ  288

2010-09-02 08:59:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 程よい頃合いをみはからって寝についた。林の中に住む獣たちの吼える声が夜中中やむことはなかった。
 イリオネスが目を覚ました。東の空を見上げた。まだ、天文薄明のときである。星のきらめきが冴えていた。彼は、アエネアスを起こした。キノンが身支度を整えてよってくる。トリタスも起きてきた。
 四人は、暗がりの中で互いの意志を確かめ合った。キノンが余分に焼いておいた野ウサギの肉を配った。
 『口を動かすと気が張ってきます。どうぞ』
 『おう、少し明るくなったな、出かけるとしよう』
 四人は、林の中の暗がりに歩を進めた。トリタスを先頭に歩を進めていく。一同の気持ちは、期待にはやり、雀躍していた。
 歩き始めて、小一時間、トリタスが目印としていた樫の大木が見えてきた。
 『統領、もう直ぐです』
 陽が昇り始めて程ない頃であった。

第2章  トラキアへ  287

2010-09-01 06:44:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 トリタスは話を続けた。
 『私は、あのようにでっかいアーモンドの大群生を見たことはない。実にでっかい!東西に120歩、南北に80歩にわたる大群生地です。考えられるアーモンドの樹の本数は、300本をくだらないと思われます。いかがです、統領。上り坂、下り坂、もうひとつの『さか』の『まさか』です』
 『何っ!なんとっ!そんなにでっかい大群生か。それはすごいっ!』
 アエネアスはウシロにのけぞった。手にしていた酒杯を放り投げて、アエネアスを支えた。一緒に聞いていたキノンも、荷役の者も話を聞いてたまげていた。
 『そのような大群生、俺は、この目で見てみたい。トリタス、明日の朝、朝めし前に、なんとしても見に行く。イリオネス、キノン、お前らも一緒に来い。トリタス、明日の朝は、早だちで見に行く、案内を頼む』
 『判りました。私の肩の荷が、これでひとつおりました。統領、明朝、もう一度大感動ですよ』
 彼らは、野ウサギの肉をほうばりながら、アーモンドの大群生の話に花を咲かせた。