『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY         第4章  船出  8

2011-11-16 08:02:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、オキテスに引き継いだ。
 『オキテス頼む。このように配属と乗船人員をを決めたのだが目を通してほしい。手直しのところがあれば訂正かたよろしく頼む。君や俺の考えでやらねばならないことは、命令系統とその遂行の確実さの問題だ。よろしく頼む。それでよろしようであれば、全員に配属を申し渡してくれ。それが終わったら、出航準備の本日の作業予定を指示してやってほしい』
 『判った』
 少しの間をおいて再びオキテスに声をかけた。
 『あ~あ、俺はオロンテスのところを見に行く。頼んだぞ!』

 『お~お、オロンテス、どんな具合だ、うまく進んでいるか。どうだ』
 『え~え、うまくいきそうです。この地に残ると言う者が59人います。事情が事情ですから、私は了承しました。最終的に集計した数字はこれです』 と言って木板をパリヌルスに手渡した。
 パリヌルスは、木板に書かれた数字に目を落とした。
 『う~ん、そうか。判った』
 彼は、その数字に納得した。この地に残る希望者は、59人、その内訳は、男子16人、女子34人、子供は9人であった。9人の子供は乳飲み子であり、この子らの両親がこの地に残ることを希望していた。
 軍団員の方は、老齢者3名を含めて、12人が残ることになっている。そのようなわけで、エノスの土地を離れる者の総数は、658人となった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY         第4章  船出  7

2011-11-15 08:26:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『俺たちがこの地を離れる。今、ここで打ち合わせたことは、最善の策として、浜頭及びエノス砦の領主と話し合う。この地に残る者たちの身の安全と彼らにいい未来のあることを祈る』
 ここで一息ついて、一同と目を合わせた。
 『俺は、明日、トリタスを連れて、エノス砦に領主を訪ねる』
 『判りました。それがいいでしょう』
 『よしっ、打ち合わせを終えよう』
 砦は、深まる秋の早い夕闇の訪れに包まれていった。
 
 朝である、明るくなるのもおそいが、砦の浜は薄暗いうちから騒々しかった。彼らは船長、副長を真ん中にして集まり何事かを話し合っている。いずれのグループにも属しない連中が、あちこちにたたずんでいた。人々の群れる習性と弧で漂う風景であった。しかし、彼らの係わり合いと日常の行動にかかわる連帯感の細い絆の糸が、ひと言の声の掛け合いで結ばれていった。たたずんでいた者たちが、ひとり減り、二人減りして、いずれかのグループに加わっていった。
 パリヌルスは、船長、副長を集めて、彼らから状況説明をうけ、各船の乗り組み状態に目を通した。乗船人員の数の多い少ないを許容範囲以内で認めた。
 彼は、船団の総指揮に当たる責任を全うする必要があるため、航海技術に関連する命令、指示の確実を期して、自分の隊の者を各船に配置した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROI         第4章  船出  6

2011-11-14 07:58:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、任命した船長及び副長を招集した。
 明朝、軍団の者たちに申し渡す配属指示に関する要領についての手順を説明した。
 『どうだ、判ったか。要領を納得したな。物事がうまくいくか、いかないかがそれにかかっている。洋上に浮かんでいる船の中だ。そこにいる者たちの協力こそ、航海の安全を約束してくれるのだ。それを心に刻み込んで仕事をするのだ。俺が指示したとおりの要領で一同の配属を決めるのだ。なを、女性、子供たちを含む市民たちは、2隻の改造交易船への分乗となる。乗船人員はできるだけ均等を図ること、1隻あたりの乗船人員は、110人余りとなるはずである。また、改造交易船2隻の軍団の者の数は、50人くらいとして配属を決めること、市民たちの割り振りは、明朝、浜において、オロンテスがやる、以上だ。一同、質問はあるか』
 『判りました』
 『よっしゃ!やってくれっ』
 短いやり取りで一同はうなづいて、木版を片手に持ち協議を進めていった。
 側近幹部連は、パリヌルスの来るのを待っていた。
 アエネアスは、打ち合わせの案件について、率直な考えを述べた。
 案件は、次の諸件であった。まず一つ目は、この地に残る者たちの処遇、二つ目は砦を誰に引き継ぐか、三つ目は、浜頭トリタスとの話し合い、それとのからみで、エノス砦の領主エノゼリアスとの話し合いの件であった。
 打ち合わせの話し合いは進んだ。アエネアスは打ち合わせを締めくくった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY         11月5日投稿記事の一部訂正

2011-11-11 15:24:35 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 11月5日の投稿記事の一部を訂正いたします。
 13行目      80人、いや、90人くらいは、、、
                 を
           180人、いや、190人くらいは、、、
 
      と訂正いたします。謹んで深くお詫び申し上げます。

                   山田 秀雄

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY         第4章  船出  5

2011-11-11 14:31:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスと側近、幹部は多忙であった。今度は広間において打ち合わせであった。
 側近及び幹部連は、人口の集計結果をオロンテスから報告を受けた。
 彼らが予想したとおりの結果であった。エノスの浜に到着したとき総員数が900人余りであったが、上陸時の小競り合いの闘い、そして、ポリメストルとの戦いで190人余りが命を失い減っていた。アエネアスまで含めた総員数が、729人となっていた。その詳細は、アエネアスの家族が3人、軍団に所属する戦闘員が550人、市民が176人であった。この176人の内訳は、成人男性が83人、老若女性合わせて75人、子供が18人と言う状態であった。
 『そうか、総数で190人も減っていたのか』
 アエネアスのつぶやいた言葉に一同がうなづいた。
 アエネアスの胸は苦衷に痛んだ、彼は目を閉じて命を失った者たちの冥福を祈った。
 目を開けたアエネアスは、一同に問いかけた。
 『そこでだが、この地に残りたいと希望している者は何人くらいと考えられる?』
 イリオネスが答えた。
 『軍団の中では、6~7人と考えられます。オロンテス、市民の方はどれくらいと考えられる』
 『そうですね。私の思いでは、20人余りと考えています』
 『この地を離れる総勢が700人くらいか』
 一同は、うなづき合った。

『トロイからの落人』  FUGITEVES FROM TROY         第4章  船出  4

2011-11-10 08:01:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『次だ。では、話を続ける。出航の準備については、パリヌルス隊長が担当して、その一切を取り仕切る。船団について説明する。船団の編成は軍船4隻、改造交易船2隻、以上6隻で編成する。これから各船の船長及び副長を紹介する、一同よく聞くのだ。一番船の船長はパリヌルス、副長がアミクス。二番船の船長はオキテス、副長がカイクス。三番船の船長はアレテス、副長がリナウス。四番船の船長はギアス、副長がアバスだ。尚、この4隻は軍船である。五番船の船長はオロンテス、副長がセレストス。六番船の船長はアンテウス、副長がリュウクスである。それからではあるが、誰がどの船に乗るか、それは明朝一番に浜において諸君らに通達する。おのおのが命令または指示を受けた場合は、責任を持って確実に任務を遂行せよ。以上だ』
 代わってパリヌルスが壇上に立った。
 『おうっ、一同。イリオネス軍団長の話を聞いて判ったと思う、いいな。明朝、朝めしを終えたら浜に集合するのだ。諸君らの配属を申し渡す。また、市民の人たち、女性、子供たちも浜に集まってもらいたい。なお、軍団長から話のあった、この地に残りたいと希望している者は、浜のほうに来るに及ばない。以上だ。それでは本会を解散する』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROI        第4章  船出  3

2011-11-09 07:29:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ウオ~ッ!』ーーー『ウオ~ッ!』ーーーー『ウオ~ッ!』
 間をおいて、あちこちから喊声らしい声があがり始めた。
 アエネアスは、壇上から、じい~っと会場を見つめている。時が停まった。会場が沸きあがった。バラバラであった喊声がひとつにまとまった。会場が大喊声で沸いた。
 『ワオ~ッ!』『ワオ~ッ』『ワオ~ッ!』
 大岩を割り砕くのではないかと思われるくらいに喊声がどよもした。
 アエネアスは、壇上にあって、空を仰ぎ、航海の安全と願望達成を太陽に祈り上げた。
 しばしの間、喊声はなりやまなかった。
 
 壇上のアエネアスがイリオネスに変わった。
 『一同、統領の言葉を聴いたな。しかと聞いたな』
 イリオネスは、反応を待った。一同は答えた。彼らは大喊声をあげた。彼は、会場に集まった者たちの心情を、この大喊声で理解した。彼は、話を続けるべく会場を見回した。
 『では、船出に関しての日程について伝える、明日から三日で出航の準備を整える。いいな。そして、船出のときを待つ。
、船出にいい風が起きるのを待つ、いいな』
 ここで言葉を切って一息入れた。
 『次はとても大事なことを言う。この地を離れるについてだが、一同の中で、ここに残りたい、そう望む者もいると思う。その者は、明後日までに、この俺か、オキテスまで申し出ること、いいな。なお、市民である人、女性、子供たちの場合は、オロンテスまで申し出てほしい。また、相談事がある場合は、この俺に話をしてくれ。一同っ、判ったな』
 イリオネスは、ここまで言って一息ついた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY        第4章  船出  2

2011-11-08 08:50:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おうっ!諸君っ!毎日ご苦労っ!』
 イリオネスは、ここで吐く言葉をとめて、次の言葉を思案した。ここでの逡巡は許されない。次の言葉が口をついて出た。
 『今日の総会は、一国の重大事に取り掛かることを、諸君らに伝える総会である。いいな。では、統領に代わる。統領、お願いします』
 イリオネスの言葉を受けて、アエネアスは壇上に立った。
 『おうっ!』『おうっ!』『おうっ!』
 会場から喊声があがった。
 アエネアスは腕を広げて喊声を抑えた。
 『おうっ!諸君っ!』 彼は会場を見回した。
 『日々ご苦労である!』
 ここでも言葉を切って、集まっている者たちとの呼吸をはかった。
 『我々は、建国に向かって船出する。このエノスの地は、我々が一国を興す地ではない。判るな。我々が一国を興すにふさわしい悠久の地を目指して、この地を離れる。いいな』
 彼は言葉を切って、一同を見渡した。
 『我々は、この地から、今日から数えて7日以内にエーゲ海を南へ向かって船出する。以上だ』
 彼は一同にむかって、力強く宣言した。
 会場は静かである。
 突然の統領の宣言である。会場の者たちは唖然としている。彼らにとって、まさに寝耳に水であったのである。

『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY         第4章  船出  1

2011-11-07 07:24:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、無念に耐えて戦火に焼かれるトロイをあとにしてから今日まで、過ぎ去った日々を思い起こしていた。
 今日、砦の者たち全員に向かって、建国の途につくことをどのように伝えるかを思案した。
 イリオネスは、まぶたを閉じて考えているアエネアスの表情をうかがいながら静かに声をかけた。
 『統領、全員が揃いました。そろそろ始めてはと思いますが』
 イリオネスの声にアエネアスは思案を解いた。
 『そうか、全員揃ったか』 と言いながら周りを見回した。
 パリヌルス、オキテス、オロンテスの顔もあった。アエネアスは広場に集まっている全員を見ながら自分の決意を確かめた。
 決意は身体のあるべきところにしかとあった。その決意が身体中に拡がっていく。フオースに充ちあふれた決意が身体のすみずみまで拡がっていく。
 自分はここに集まっている全員、苦難をともにした同胞である、この大切な一国の民を統べていく統領であることを自覚した。
 『よしっ!イリオネス、始めよう』
 この広場に集まっている全員も、この総会が『ただならぬ総会』であることを悟っているようである。先程まで、あちこちで囁かれていた私語は絶えていた。
 広場に、イリオネス大声が響き渡った。

『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第3章  踏み出す  202

2011-11-05 08:35:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが声をかけてきた。
 『パリヌルス、もう、いいぞ。全員が揃った』
 『おう、判った。オロンテス、いいか。一同に数とりの指示を出して総員数を集計してくれ』
 『判りました』
 彼ら一同は、総員数の数とりの作業に着手した。列構成を目的にそって整えたせいもあり、数とりは時間をかけずに終えた。
 アエネアスとイリオネスは、この風景をじい~っと眺めていた。
 『イリオネス、どうだ。彼らがやっている作業だが、なかなか手際よくやっているようだな』
 『そうですね。彼ら、よくやっています』
 『どうだね、我々がこのエノスの浜に来たときと比べて、総員数がどれくらい減っているのか。その見当は?』
 『そうですね、私は、いま、そのことについては、しっかり把握はしていませんが。少なくなっていることは確かです。上陸のときの戦いとあの戦いで、80人、いや、90人くらいは命を落としています。少なくなっていることは確かです』
 『そうか、ウッウ~ン』
 アエネアスは、腕を組んで目を閉じた。彼のまぶたの裏に過ぎし日の情景が浮かび、その苦衷に耐えた。
 パリヌルスとオキテス、オロンテスの三人が近づいてくる。彼らは、イリオネスに軽く会釈を送り、数とりを終えたことを伝え、アエネアスの表情を見つめた。
 三人は、アエネアスの胸のうちを推し量った。