『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1120

2017-09-15 10:03:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスは、木板に工作図を描き、採寸して寸法を書き込んでいく、慎重に事を運んでいく、陸揚げされている試作艇の舵部分も採寸して工作図に書き込んでいった。
 イリオネスはパリヌルスらを招集する、アエネアスも加わって打ち合わせを行う、マリア往き計画の概要を話す、一同が理解する。
 イリオネスが話を締めくくる。
 『一同!解ってくれたな!そういうことで、明後日、アエネアス暦8月6日、昼にはキドニアに着くように時を見計らって出航する』
 打ち合わせを終えてパリヌルスら3人は、手配に散っていく。  
 パリヌルスは、明朝のキドニア行きの用船の手配に小島に向かう。暮れなずむ茜の海上をハシケで向かった。アレテスにキドニア通いの要請である。
 『アレテス、そういうわけで軍団長の一行が帰港するまでだが、キドニア通いをよろしく頼む』
 『予定は、何日ぐらいですかな?』
 『長くて7日くらいと考えてくれ』
 『解りました。明朝からですね。朝の出航が陽の出の頃合いですね。了解しました』
 オロンテスは、総勢55人に及ぶ一行の食糧手配計画をセレストスと事細かに打ち合わせる伝えた。。
 『ギアス、お前にはまだ正式には伝えていないのだが、明後日、軍団長がマリアへ我らが建造している船舶の営業航海に出航することになっている。それに使用する用船は、戦闘艇の試作艇とヘルメス艇を使う。明日、その航海に参加する全員を集めて航海の概要について説明をする。その全員招集をお前にやってもらう』
 『隊長、その時と場所は?』
 『時間は、朝食を終えたら建造の場の広場でだ。いいな』
 『解りました。ヘルメスの方は私が全員を掌握していますが、戦闘艇の試作艇のメンバーについては、誰に聞けばよろしいかですか?』
 『それは、ゴッカスに言ってくれればいい』
 『了解しました。その頃合いには指定の場所に全員の招集を終えます』
 『おうっ!』

 イリオネスのマリア往きの出航日の前日の朝が明ける。当事者たちの目の色が変わっている、浜が凛として緊張している、通常の朝との違和感が漂っている。
 アレテスが運航する舟艇がキドニアに向けて航跡を引いて出ていく、艇上のオロンテスがアレテスに話しかける。
 『おう、アレテス、今日からだが、1日に二往復だな、その大変を察しる。安全運航で行こう!』
 『はい!心して努めます』
 ギアスは、アサイチに戦闘艇の試作艇の操船担当をするゴッカスを訪ねテ伝える。
 『おう、ゴッカス、明日、出航する軍団長のマリア往き航海の概要説明をする会合をやる。漕ぎかた一同を連れて出席してくれ。マリア往きに使う船は、戦闘艇の試作艇とヘルメス艇を使うことになっている。時間は朝めしを終えたら、建造の場の広場へ集合だ。以上だ!』
 『解った』
 『おうっ!』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TRPY   第7章  築砦  1119

2017-09-14 08:34:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、ドックス!今日の仕事の進み具合は?』
 『はい!建造の用材が届いてから、順調に進んでいます。申し分ありません』
 『それは、重畳!そこでだが、急用だ、すぐにパリヌルス隊長のところへ行ってくれ』
 ドックスが首をかしげる、何事かと問いかけようとする風情をオキテスが読みとる。
 『行けばいい!彼が説明する』
 『はい、解りました』
 ドックスは、現場の者に、二言三言、言い置いてパリヌルスのところへ足を向ける。
 『パリヌルス隊長!来ました、急ぎの用件はなんでしょうか?』
 『おう、ドックス、急な用事なのだが』
 パリヌルスがドックスと目を合わせる。
 『ヘルメス艇の造作だ。ヘルメスに新舵構造を取り付ける。ヘルメスが帰ってきたら、即、建造の浜に揚陸して、算段、段取りをしてくれ。俺もすぐに駆けつける』
 『解りました』
 『時間は明日一日しかない。造作の段取りを頼む』
 『解りました。その造作の件ですが、仕事に取り掛かったら、昼過ぎまでに造作は完了します。安心してください。先日、オキテス隊長からそのような話を聞いています』
 『そのつもりでいていいのか?』
 『はい』
 『よしっ!もう、そろそろ帰ってくるだろう。ゆっくりすればいい』
 少々の間である、ドックスは、パリヌルスが取り掛かっている仕事を見つめた。
 『おう、ドックス、ヘルメスが帰ってきたらしい、行こう』
 パリヌルスが艇上のギアスに声をかける。
 『おう、ギアス、ご苦労。ヘルメスをドックスの指示に従って、建造の浜に揚陸してくれ』
 『はいっ!』
 『ドックス!行こう』
 二人は建造の浜へ急ぎ向かう、ドックスが指示する、ヘルメスを艇尾より揚陸して浜に落ち着けた。
 二人は、ヘルメスの艇尾の構造を念入りに調べる、ギアスらが彼らの作業を見つめる。
 『ドックス、造作の構想を言ってくれ』
 ドックスが手を動かして説明する。
 『隊長、このように改造、造作すると、操舵棒がこれくらいのところまで長くなります。操舵半径が大きくなって艇幅を超えてしまいます。また、ここまでの造作で行きますと操舵棒が短くなり、操舵担当者に操舵負荷が大きくなって難があります』
 『そうだな、お前の言う通りだ。操船が無理な状態になる』
 『戦闘艇の操舵棒の長さが最良の長さと考えられます』
 『そうか、いいだろう!戦闘艇の舵構造を参考にして造作をしてくれ。ドックス、一切をお前に任せる。喫水に留意しろよ。造作について聞きたいことがある時は、いつでも聞いてくれ』
 『解りました』
 『俺はつかず離れずにここにいる。以上だ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1118

2017-09-13 09:02:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、袋の中から紹介の文言が記された2枚の木板を取り出す、三人が目を皿にして見入った。
 1枚は、マリア集散所の所長あてであり、もう1枚は、船舶等大型商品の担当長にあてたものである。
 木板は、集散所としての公式の通達状である。その紹介状の木板の中央上部にクレタを統治する王の紋章である『両刃の斧』の紋章が鮮明に焼印で印されている。
 『ほっほう!これは公式の通達状としての木板だ。ありがたい、これで事は半分以上なったと考えていい』と言って2枚の木板を袋の中に収めた。
 『おう、オキテス、アレテスの昼便はもう帰ったかな?船だまりを見てきてくれるか。まだいるようであれば、その帰り船に乗って帰る。待つように伝えてきてくれ』
 『解りました』
 オキテスが速足で船だまりにに向かう、アレテスの昼便の船が船だまりにいる、オキテスが用向きを伝える、彼はとってかえす。
 『軍団長、まだいました。待たせています。帰られますか?』
 『おう、帰る。お前はどうする?』
 『私も帰ります』
 『おう、オロンテス、決まりだ。俺とオキテスは、アレテスの帰り船で帰る。あとのことよろしく頼む。それからだが、マリア往きの食糧計画の件だが、お前が帰ったら打ち合わせる』
 『解りました』
 『オロンテス、俺も軍団長に同行する。そういうことだ。よろしく頼む』
 『オキテス、軍団長のマリア往きの人員計画ができたら、その詳細を俺が帰ったら打ち合わせる。解ったな!』
 『おう、了解、心得た!』
 イリオネスとオキテスは帰途に就く、アレテスは船だまりに向かって歩いてくるイリオネスらの姿に見入る、二人のオーラを身に感じた。
 二人は、帰り船の船上で話し合う。
 『おう、オキテス、そういうことだ。段取り作成に取り掛かってくれ。それからだが、クレタ言葉の通訳にクリテスを同行するからな』
 『解りました』
 帰り船は、ほぼ日常の定まった時間に浜に帰り着いた。
 イリオネスは、アエネアスと今回のマリア往きの計画の詳細を打ち合わせる。
 オキテスは、マリア往きの用船とその乗り組みについて、パリヌルスと話し合って決める。
 『パリヌルス、ところでだが、ヘルメスに造作をしたい。新舵構造を取り付けてほしい。明日一日ある、ドックスと打ち合わせてやってほしい、操船テストもよろしく頼みたい』
 『解った。今夕から取り掛かる。ドッグスが手すきになったら、俺のところへよこしてくれ』
 『手すきなんて言っていられない。すぐ、呼んでくる』
 オキテスは立ちあがる、建造の現場に向かった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1117

2017-09-12 08:27:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『軍団長、解りました。出航はいつですかな?』
 『出航は、集散所暦で8月4日だ!俺の方は、その日の昼頃にキドニアに着く、そこで乗船してくれればいい。その都合でいいかな?』
 『解りました!軍団長殿の志向に共通項を見出し、情報で共有すべきものは共有して事に挑みます。どうか、このスダヌスを存分に使ってください』
 『おう、ありがとう!よう、言ってくれた。礼を言う』
 『心得ました。8月4日、身づくろいを整えて、船だまりで待ちます』
 『今、ここで何か聞いておきたいことがあるかな?』
 『いえ、ありません!信頼いたしております』
 『そうか、伝えるべきことを伝えておく。マリアへ行く用向きは、いま、建造中の戦闘艇と新艇の営業だ。立ち寄る先は、レテムノンの何と言ったかな、彼は?』
 『テムノス殿です』
 『おっ!そうそう、テムノス殿、そして、イラクリオンのエドモン浜頭殿のところへ立ち寄ってマリアへ向かう。マリアには2日くらい滞在する、そのように考えている』
 『そうですか。そのような予定ですね、了解しました』
 『マリア往きの用船には、浜頭も知っている戦闘艇の試作艇とヘルメス艇の2艇行く。マリアへ行くスタッフは、俺とオキテス、そして、浜頭だ。よろしく頼む』
 『解りました。今後の事、これからを考えたら、もし、よろしければ、クリテスお連れください。なにかの役にたつと考えます』
 『お~、そうか、通訳がいるな。いいことに気づいてくれた。俺の考えから抜け落ちていたな。クリテスを同行メンバーに加える。これが大体のところだ』
 『了解いたしました』
 『昼めしを中断して話し込んだな。この羊肉のジャーキー、なかなかいける、うまい!』
 『そのように言っていただける。持ってきた甲斐があるというものです。軍団長との船旅は、イデー山山行から久しぶりであり、マリアへは2回目ですな。エドモン浜頭が喜びます』
 『そうだな達者でいられるかな?』
 二人は懐かしい思い出にうなずき合った。傍らのオキテスは、1ケ月前にテムノス頭領のところに新艇を納入したときのことを思い出していた。
 彼ら3人は、あれやこれやと話に花を咲かせて、昼めしを終えた。
 『では、浜頭、そういうことでよろしく頼む。少し急な申し入れをしたな、許せ!』
 『いえ、では、当日、一行の到着を船だまりで待っています』
 『おうっ!』
 彼らは場をあとにしようと立ちあがる。
 オロンテスが姿を見せる。彼は大きな袋をわきに抱えている。
 『軍団長、紹介状が届きました。ハニタス殿の持参です』
 彼はそのように告げて、届けられた紹介状の入った袋をイリオネスに手渡した。
 『お~お、ありがとう。中を改めていいかな』
 イリオネスが袋の口を開けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1116

2017-09-11 07:12:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『イリオネス殿、紹介状のほうは昼過ぎまでにパン売り場のほうに届けます』
 『了解しました。お願いします』
 オロンテスが返事を返し、彼らの話し合い、打ち合わせを終える。一行は集散所の応接の部屋をあとにする。
 見送るハニタスとトミタス、集散所の事業、彼らの業務の営みにつむじ風が舞いあがろうとしている。
 彼らは、時代の進化を意識していない。時代は、彼らに知らせることなく着実に進化の歩を緩めることなく進めている。
 『おう、オキテス思いつくままに発止発止と話を進めた。意図する結果に落ち着いた。腹が減ったな。今なんどきだ?』
 『軍団長、昼にするには、ちと早すぎる頃合いだと思います』
 『かまわん!オロンテスからパンを受け取って、広場へ行く!』
 『そうしますか』
 『おうっ!』
 彼らは、頃合いに頓着せずに昼食のパンと葡萄酒を受け取って広場へと足を向けた。
 陽の光がまぶしい、身を灼いてくる、涼しいであろう木陰を選び腰を下ろす、微風が通り過ぎる、なんとなく落ち着いた。
 『おう、オキテス、俺らの暦で8月6日の昼頃にキドニアに着くようにしてマリアに向けて出港する。いいな。オキテス、その予定で段取りをしてくれ。デイスケジュール、マリア往きのスタッフメンバーについては、あとから打ち合わせる』
 『解りました』
 『おう、スダヌスがもう来るか見てきてくれ』
 オキテスがスダヌスの売り場へと足を運んでいく。
 『おう、浜頭!昼めしの頃合いだ。出れるか?』
 『いま、出ようとしているところだ。お前ら用事は終わったのか?』
 『おう、終わった。もう広場に来ている』
 『そうか、オキテス、行こう!』
 二人は、歩調を合わせてイリオネスの待つ広場へと向かう。
 スダヌスがイリオネスの用事を気にかけている。
 『軍団長の用事、なにかな、こみいった用事かな?』
 『そんなことはない!気にしているのか?』
 広場に着く二人、手招きするイリオネスの姿が目に飛び込んでくる。スダヌスが足を速める。
 『軍団長、待たせました。昼めしにするには、ちと早いのではーーー』
 『そうでもなかろう。浜頭、腰を下ろしてくれ』
 『おう、ぶどう酒とパンだ』
 イリオネスが酒杯を渡して、ぶどう酒を注ぐ。パンに噛みつくスダヌス。
 『おう、うまい!おうおうこれこれ!羊肉のジャーキーです』
 スダヌスが持参したジャーキーを二人に手渡す。
 『おう、口当たりのいい干し肉ではないか!うまい!』
 オキテスもジャーキーをほうばってうなづく。イリオネスが声をかける。
 『おう、スダヌス浜頭、旅に出よう!5~6日、身体をあけて、俺につき合え!行く先はマリアだ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1115

2017-09-08 13:08:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『いいですね、そのようにやってください。価格については、集散所の方と折り合いをつけてくれるようにと客の方へ伝えていただければよろしいです』
 『そのようなわけで営業を行うについて、当集散所よりのマリアの集散所あてに紹介を願いたい、その紹介状をいただければいいのですが』
 『解りましたよろしいです。紹介状を書きます。イリオネス殿、いつマリアへ出航されますかな?』
 イリオネスはオロンテスに声をかける。
 『オロンテス、俺のところの暦で8月6日というと集散所暦で何日だ?』
 『8月4日です』
 『8月4日に出航したいと考えています』
 『解りました。集散所として駅伝制度を持っています。その駅伝でもマリアの集散所へ連絡をします。そういうことで、マリアにおける営業の件よろしく願います』
 『ハニタス殿、私らが建造に着手している戦闘艇の仕様図面組です。当集散所の営業活動に役立ててください。マリアの分については私らが持参いたします』
 『いただきます。これがあると営業活動がやりやすいのですな』
 『私らとしては、船舶の舵構造が新舵構造になっていくと考えています。新舵構造の普及のために船舶の改造、修理の仕事を引き受ける作業部門を発足させました。集散所としての仕事の斡旋
をしていただければ幸いです。何卒よろしく願います』
 『ほう、それは都合がよろしいですな。修理受注について、どのような船でなければという制約があるのですかな?』
 『いえ、それはありません。集散所ガ窓口となって注文を受けていただければよろしいのですが』
 『解りました。その業務引き受けます。それは船の持ち主が喜びます。早速、私らもその件の告知と受注に力を尽くします』
 『ありがとうございます』
 『イリオネス殿、いろいろといい話をうかがいました。今日はいつごろまで、こちらにおいでになりますかな?』
 『今日は、パン売り場の業務が終わるまではと考えています』
 『解りました。それまでには紹介状を整えて、売り場の方へ届けます』
 『ありがとうございます。よろしく願います』
 彼らのマリアにおける営業展開と業務に関する打ち合わせが終わった。
 『イリオネス殿、船舶の営業に関することの話に夢中になって、飲み物を進めることを忘れていました。のどが渇いたでしょう。許してください。一服しましょう』
 『トミタス、飲み物を準備してくれ』
 彼らは、トミタスの準備したぶどう酒でのどを潤した。一同の雑談が続いた。
 『イリオネス殿、今日は私どもの業務に関していい話をうかがいました。ありがとうございました。私らも、この業務に専念していい結果を出すように努めてまいります。よろしく願います』
 『ありがとうございます。私らも鋭意この業務を推進させていきます。よろしく願います』
 イリオネスとハニタス、二人は締めの言葉を言い交わして手を固く握り合った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1114

2017-09-07 08:26:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ところで、ハニタス殿、その打ち合わせに入る前に説明したい件があります』
 『はい、何でしょう?』
 『私らが現在、建造している船舶について説明します。オロンテス、戦闘艇の仕様図面組をハニタス殿に渡してくれ』
 オロンテスは、携えてきた戦闘艇の仕様図面組をハニタスに手渡す、図面に見入るハニタス、彼は図面に描かれた戦闘艇の艇尾のことに気付いたらしい。
 パリヌルスの意向によって、図面には新しい舵構造の詳細が書き込まれていないのである。
 『イリオネス殿、艇尾のこの棒はなんですかな?』
 『はい、それについてはオキテスに説明させます』
 『オキテス、ハニタス殿の質問について説明してくれ』
 『はい、解りました』
 オキテスは、平面図が描かれた木板の裏面に木炭を借り受け、新しい舵構造の略図を描き説明に及んでいく。
 『ハニタス殿、説明いたします。それは操船のための新しい舵構造です。私らがこの戦闘艇の建造に着手した折に、新しい構造の船を造りたい。そのように考えて、新しい方式の舵構造を造作して取りつけた新しい舵です。試作した艇に取り付け、実際に使ってみたところ、その具合の良さと効果が良かった次第です。現在、船の建造の折には櫂舵も取り付け、二つの方法で建造しております。操舵担当の者に仕様具合についてたずねたところ、櫂舵よりも使い勝手がいいといっております』
 『解りました。新舵構造の理屈もなんですが、使い勝手、具合がよさそうな感じがします。今後において実物を見る機会もあると思います。よろしく願います』
 ハニタスは、図面を見てうなずいている。
 イリオネスは、ハニタスの洞察力のいいことに気付いた。
 『イリオネス殿、たずねますが、この戦闘艇の販売価格の件ですが、もう決めていられますのかな?』
 『それについてはまだです。漕ぎ座も4座増やし、長大化した船体の構造上のこともあります。価格の決定については集散所側、ハニタス殿とも相談の上、決めたいと考えています』
 『解りました。その戦闘艇をこの目で見てみたいものです』
 『いいでしょう。マリアへ出向くときに、こちらへ立ち寄ります。見ていただきます。そのようなわけでマリアへは、この新しい船と新艇の二艇で出向きます』
 『そうですか、結構です。そのようにしてください』
 『それでマリアでは、船を求めていただく方に、船を見ていただき、試乗もしていただきます。納得のいく買い物をしていただく、そのように考えています』
 『よろしく願います』
 『私らの営業においては、船の価格には一切触れません。私らが建造した船を心いくまで見ていただく、そのような営業のカタチ、方法でこの営業を展開します』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1113

2017-09-06 08:24:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『軍団長、待たせました。行きましょう』
 『おうっ!』
 三人は集散所の詰め所へと歩を運んでいく。
 オロンテスが詰め所の入口に立つ、中を見る、ハニタスがいる、彼は、ハニタスに声をかけた。
 『ハニタス殿、おはようございます。いい朝です。ごきげんはいかがですかな』
 『おう、おはよう』
 『昨日はありがとうございました。浜に帰り、承った旨を伝えると、それは礼に伺わないといけないということで、イリオネスが来ております』
 『ほう、そうか。オロンテス殿、それはそれは、丁寧ですな。お会いする場所を応接の部屋にします』
 『そうですか、ありがとうございます』
 ハニタスがトミタスに声をかける。
 『おう、トミタス、応接の部屋に皆さんを案内してくれ』
 『解りました』
 『皆さん、どうぞ、こちらへ』と一同を応接の部屋へと案内する。
 イリオネスらを待たせることなくハニタスが姿を見せる。
 『お~お、イリオネス殿、今日は、ようこそ、おいで下さいました』
 イリオネスが立ちあがる、オキテスもオロンテスもつれて立ちあがる。
 イリオネスが手をさしのべる、心がハニタスに伝わる、ハニタスも手をさし伸ばしてくる、二人が手を握り合う。思うところ、考えるところが合致しているようである。
 続いて、オキテスもオロンテスもハニタスと手を握り合った。
 『イリオネス殿、どうぞ、腰を下ろしてください。本日の来訪を心から歓迎申し上げます。イリオネス殿とお会いしたい、その一念が通じたようですな。以心伝心と申しますか、私の思念がイリオネス殿に通じたのですな、そのように思います』
 『そうですか、浜を出て、風の具合に比べて、船足が速かったのはそのせいですかな』
 『うまいこと言われる、早速、本日、来訪の用件を承ります』
 『昨日、こちらからオロンテスが、マリア集散所からの事情を承り帰りました。その報告を聞き、それならマリアの集散所に営業に出かけよう。ということになったわけです』
 『そうですか、それはそれは、ありがたいことです』
 『そのようなわけで、ハニタス殿とそのあたりの事情の打ち合わせをと考え駆けつけた次第です』
 『大型商品の営業は、日常使用するものの営業とは、異なった営業形態による購入者の意思決定によると私らは考えています。ただほしいから買うとは違います』
 『当方の営業を担当しているオキテスもそのような事情ならば、マリアへ出向くといっています。そのようなわけでハニタス殿と打ち合わせたうえでマリアへ営業出向しようと決定したわけです』
 『クレタ島内と言ってもマリアは遠いかというと遠くはないのですが近いとは言えません。私らは、そこにもどかしさを感じていたわけです。イリオネス殿のほうでマリへ出かけてくださる、それは私らにとってとてもありがたいことです。惹起しました大型の商品の受注を逃したくはない。その一念で思案いたしておりました』
 『そうですか、解りました。そのようなわけでマリア集散所での営業に関する留意点を打ち合わせたいと考えていますが』
 『解りました』
 イリオネスは、ハニタスの表情に浮かぶ喜色を読みとった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1112

2017-09-05 08:35:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 クレタの夏はいい朝が続く。
 『パリヌルス、今日もまただな。建造の場をよろしく頼む』
 オキテスが言いおく、イリオネスとともにキドニアに出かけていく、ヘルメス艇上では、オロンテスを加えて三人で話し合う。
 『おう、オキテス、艇の造作についてたずねる。このヘルメスに新構造の舵構造を造作するとすれば手間ヒマ、時間はどれくらいかかる?』
 『そうですね、やってみないと解りませんが、朝から取り掛かって、昼過ぎに出来あがる、それくらいと考えられます』
 『ところで、オキテス、ヘルメスのマリア往きの算段、どのように結論した?』
 『昨日も言いましたように軍略的にマリア往きを実行するすれば、ヘルメスも行くべきである。そのように結論づけました。我々は、目論んだ成果を手にしなければいけないのです』
 『おう、オキテス、語尾が強いな。その力みをとれ。出ないと自然な流れをせき止める。いいな。ギアスを呼んでくれ』
 『はい!』
 オキテスは艇尾にいるギアスを手で招いた。
 『オキテスもギアスも聞いてくれ。本題に入る前に言っておく、ギアス、考えるところがあってヘルメスもマリアへ行く。そのようなわけで、今日、キドニアから浜へ帰ったら、即刻、建造の場でヘルメス艇に新舵構造の造作をする。オキテス、帰着次第、造作にかかるよう手配してくれ』
 『解りました。ギアスにはマリア往きの件まだ話していません。事情を説明して二人で手配します。任せてください』
 『おう、解った。この件、お前に頼んだぞ!』
 話している間にヘルメス艇は、キドニアに着いた。
 『オキテス、俺はスダヌスのところへ行く。お前も来るか?』
 『はい、行きます』
 オロンテスと打ち合わせて、二人はスダヌスの売り場へと足を向ける。
 『おう、浜頭、おはよう!いつも忙しそうだな、重畳重畳!ところで相談事だ。手がすくのはいつ頃だ?』
 『それは、やはり昼頃ですな』
 『お前の手を借りたい用件ができた。5~6日だ、考えて欲しい。昼に広場で待っている。今日は、昼に気を使わなくてもいい。パンだけで我慢しろ!俺が持ってくる』
 『解りました。昼に広場へ出向きます』
 『おう、待っている』
 二人は、スダヌスの売り場を引きあげて、パン売り場へ来る。
 『オロンテス、売り場の準備が整ったか?それができたようなら行こうか。今日はハニタスに依頼事がある』
 『解りました。もうすぐ終わります。今日は予約件数が多いのです。それを整理しておかないと』
 イリオネスとオキテスは、売り場を見ながらオロンテスの手すきを待った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1111

2017-09-04 10:33:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスがキドニアの集散所から帰ってくる、彼は、これはと考える情報を携えて帰って来た。
 浜にあがる、いつものように、まず、建造の場に足を運ぶ、軍団長の所在を確かめた。
 オキテスと話し合っているイリオネスの姿を見とめる。傍らに立って姿勢を改めた。
 『軍団長、ただいま帰着しました』
 『おう、ご苦労!』
 『今日の活動と売り上げを報告します。今日、集散所から連絡を受け取りました。マリアからの連絡です』
 イリオネスが言葉をはさむ。
 『おう、なんと言って来ている』
 『新艇の発注の件ですが、今月の末日までには発注できると言っています。同じ島内でありながらマリアは近いとは言えない。そうであるばっかりに、もどかしいとい言っています』
 これを耳にして、イリオネスは思案した。
 『それはそうだろう。新艇は、大型の商品だ、発注する方も注文を受ける方もそれなりの気遣いをする、考えるだ。買い物には失敗したくない。それが人情だろう』
 オキテスの目を見つめる。
 『オキテスどうだ?注文する立場になって考えたらどうしてほしい?明日、キドニアに打ち合わせに出向く!スダヌスとの打ち合わせもある』
 『解りました』
 オキテスは答えて、オロンテスに話しかける。
 『オロンテス、明日、軍団長と一緒に出向く。よろしく頼む』
 『おう、心得た。打ち合わせには俺も同席ということでいいな』
 『おう、それでいい。情報は共有したほうが安心できる。軍団長のマリア行きが早まる。パリヌルスには、俺が伝える』
 『解った。ではな』
 オロンテスが場を去っていく。
 イリオネスがオキテスに話しかける。
 『なあ~、オキテス、我々が出向いて何とかする。営業だ!この成果のためなら、百里の道も遠くはない!それからだが、ヘルメス艇も行く算段をしてみろ!お前の考えるところを明日キドニアに着くまでに聞かせろ』
 『解りました。この件に関して軍団長の思考は、軍略思考ですね』
 『そうだ、この種の仕事、こういった業務は軍略的に進める。その気概でやる!』
 オキテスは、この営業にかけるイリオネスの志向している軍略的なワークモードを理解した。