『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1474

2019-02-14 04:55:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 明日にアエネアス暦の月があらたまる10月の末日の朝が明ける。
 朝行事を終える、建造の場の者らが場に集まってくる、建造の場の船台が5基となったことを話題にして話し合っている。
 何かが変わる、その予感を感じている。
 朝食の場にドックスが来る、何も言わない。
 オキテスが姿を見せる、目が合う、風情がいつもと同じである。
 朝食の終わりが近づく、ドックスが起ちあがる、声をあげる、一同に呼びかける。
 『おう、一同!聞いてくれ。今日の予定を伝える!』
 場を見まわす、一同と目を合わせる。
 『午前中は、各船台の担当は、船台を清掃する、船台の整備をする、いいな。部材製作の場も整理整頓をする。建造用材置き場も整理整頓をする、全てを明日に備えてだ。いいな!』
 ドックスが再度、場を見まわす、話しを続ける。
 『君らも知っているように、受注する艇数が増えている。これまで月産4艇であったが、建造船台を1基、増設して月産5艇体制に整える。君らが建造に出精して、いい船造りをしなければならない、解るな!その体制のための人事の件について、オキテス隊長のほうから、その辞令の伝達がある』
 場の一同の目線がドックスを注視する。
 『それにもとづいて、君らは、本日の午後から、その部署に就いて、明日からの業務スタートの準備を整えてくれ。以上だ。オキテス隊長、願います』
 オキテスが一同の前面に立つ、新人事を一同に伝える、一同が新人事を承諾する。
 オキテスからの通達が終わる、建造の場の月産5艇体制がここに整う。
 話し手がドックスに交代する。
 『もう一件、君らに伝える用件がある。今日の夕食のことだ!諸君らの日々の精勤に感謝の夕食会を挙行する。ささやかではあるが心から楽しんでほしい!以上だ』
 場から歓声があがる、拍手が沸きあがる、隣同士が顔を合わせる、笑みを交わす。
 彼ら一同に気合が入る、一斉に立ちあがる、足踏みが始まる、地を震わす野太い地声がリズムに乗って沸きあがってくる。
 二列になって隊列をつくる、歩み始める、部署別に隊列を作る、歩みだす、彼らは担当部署の場を目指す、歩が進む、意気ごみの現出である。
 担当部署に就く、足踏みは止まらない、続いている、責任担当が声をあげる、指示が飛ぶ。
 『足踏み、止め!』
 足踏みが止まる、責任担当の拳が天を突く。
 『おう!』『おう!』『おう!』
 喊声がどよめいて止む、彼らの今日がスタートした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1473

2019-02-13 05:09:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 会所においての話し合いを終えたオキテスはドックスらとともに昼食を終える。
 オキテスは、午後イチの仕事に新船台構築の場へとドックスと連れ立って歩を運ぶ、船台の出来あがりを見る。
 オキテスが声をあげる。
 『おう、ほぼ完成しているではないか』
 『責任担当からの完成報告がまだありません。報告を受け取り次第、隊長を呼びに行きます』
 『解った、待っている。ところでドックス、人事の案は出来たか?』
 『はい、出来ています。夕食後に打ち合わせようと段取りしていますが』
 『おっ!そうか、了解した。明朝、朝礼時に、一同に言い渡そうと考えている。なお、完成した4艇だが進水させてくれ。最終の出来あがり点検をする』
 『解りました。隊長、進水に立ち会われますか?』
 『そうだな、進水に立ちあう!その時に呼びに来てくれ。席場にいる』
 オキテスはドックスにそのように言って場から離れていく、ドックスは、諸手配に着手する、建造の場には新しい局面がおとずれようとしている、ドックスは、諸手配を手落ちなく進めていく。
 オキテスは自分の席場に戻る、彼は案件を検討する。
 11月に開催する展示試乗会までのスケジュールを練る、11月2日にはキドニアにての戦闘艇の引き渡し納入、11月8日から催行する展示試乗会の開催時に引き渡し納入するレテムノンの2艇、イラクリオンの1艇、マリアの1艇の運送方法を考える、また、その時に行う引き合い者の招待昼食会の事についても考えをまとめた。
 オキテスが『おう!これでよし!』と心を決めたときにドックスの声を耳にする。
 二人は、完成4艇の進水の浜に足を運ぶ、1艇1艇の出来あがりを念を入れて点検チエックする、海に浮かべた折のバランス具合に特に念を入れてチエックを行う。
 オキテスとドックスが4艇の出来あがりに満足する。 
 非の打ちどころがない、彼らが建造した戦闘艇3艇と新々艇1艇の完成度の高さを確認して二人は目を合わせる、うなずき合う、笑みを交わす。
 進水の作業に参加した者らがオキテスとドックスを囲む、一同が目を合わせる、オキテスが一同に声をかける。
 『おう1お前ら、出精して船を造りあげてくれた。いい出来あがりだ、申し分がないありがとう、礼を言うぞ!』
 二人を囲んでいる者らがオキテスの言葉を聞いて感動する、オキテスが手をさしのべる、場の一同と握手を交わす、歓声をあげる。
 オキテスが改めて言葉を告げる。
 『これでこそ自信を持って、注文主にこれらの艇を引き渡すことができる。ご苦労であった、ありがとう!お前らを誇りに思う』
 オキテスは彼らをほめあげた。
 ドックスが声をかけてくる。
 『隊長、船台も出来あがりました。報告がありました』
 『おうっ!』と言って、二人は、船台の場に歩を運ぶ、完成した船台を見る、5第の船台が居並ぶ船台の場は、なかなかの壮観である。
 オキテスが軽く目を閉じる、5台の船台が稼働して5艇の船が建造されていく、その風景がまぶた裏にくっきりと浮かぶ。
 ドックスに声をかける。
 『ドックス、明日のことだが、ささやかだが夕食会をやって建造の場の全員の日ごろの労をねぎらいたい。そのように手配をしておく』
 『解りました』
 今日の業務が終わる、夕食を済ませる、オキテスとドックスは、人事についての打ち合わせも終える、うなずき合う、二人は今日を終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1472

2019-02-12 04:50:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一同がオキテスの報告を聞きとめる。
 アエネアスの言葉である。
 『おう、オキテス!重畳!はなはだご苦労であったな。それらに対応するために手がいるようなら、何なりと言ってくれ、手を惜しむことはない!一同解ったな』
 『解りました。心得ました』
 三人が唱和する。
 アエネアスがオキテスに向けて手をさしのべる、さしのべられた手をしっかりと握るオキテス、イリオネスが手をさしのべる、続いてパリヌルスが手をさしのべる、握手を交わした。
 彼らの話題が建造の場の話題にうつる。
 イリオネスが建造の場の状況についてたずねる。
 『はい!今月、完成した戦闘艇3艇及び新々艇1艇の進水を本日行います。出来あがりの最終確認をいたします』
 『なお、11月からの建造計画達成のための諸手配、船台構築の件の状況の進捗はどうなっている?』
 『その件については、船台の構築は順調に進み、今日完了いたします。なお、それに関する人事計画もすでにできており、明日、新人事計画に基づく建造の場の各部署の人事の配置が決まります』
 『了解した。11月の新体制がすべて整うということだな』
 『はい、そうです』
 アエネアスとイリオネスは、船舶の建造の場の状況を把握する。
 続いて、アエネアスがパリヌルスに声をかける。
 『パリヌルス、アレテスが担当している漁業のほうの動きはどのような具合だ?』
 『はい、それについては、昨日、小島のほうに行ってきました。アレテスからいろいろ事情を聞いています。季節が変わりつつあるこの時候になって、漁の成果が好調だそうです。また、スダヌス方との連携もうまく事が運んでいるとのことです』
 イリオネスが口をはさむ。
 『一昨日ですが、オロンテスからスダヌス方からの収益金を受け取りました。このところ順調に収益があがってきております』
 『そうか、各事業の動きが順調であるということだな。現在のところ特に気にかける事案がないということだな』
 『そうです。統領!』
 『そのように事態が推移しているということは、皆が日々懸命に出精して業務に励んでくれているということだ。皆に心から感謝する』
 アエネアスがそのように言って、一瞬、考える、口を開く、声をあげる。
 『この感謝をどのようにして伝えたらいいかな、皆にだ!イリオネス考えてくれ』
 『解りました。考えます』
 オキテスからの報告を受けとる、その他の事案についても話し合いを終える、浜一円が昼食時を迎えていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1471

2019-02-11 05:39:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアス暦、10月28日の朝が明ける。
 オキテスが姿を見せるのをアエネアスが浜で待っている、イリオネスが、パリヌルスが、ドックスが、姿を見せる、四人が朝の挨拶を交わしてオキテスを待つ。
 東の空が明るみ、陽が昇り始める。
 オキテスが姿を見せる、声を上げる。
 『統領、おはようございます。いい朝です。軍団長、おはようございます、いい朝です』
 言い終えて、パリヌルス、ドックスと朝の挨拶を言い交わす、パリヌルスがオキテスに声をかける。
 『おう、オキテス、5日間長途の海旅ご苦労だったな』
 『オキテス隊長、ご苦労でした。一行無事の帰着、何よりと喜んでいます』とドックス。
 オキテスがアエネアスに声をかける。
 『統領、関係筋との交渉、打ち合わせですが、おおむね良好と言える結果を得ました。喜んでください。詳しい報告は後ほど、会所のほうでいたします』
 『おう、了解。ご苦労であったな。皆で朝行事といこう!』
 一同がそろって海に身を浸す、彼らは、身を海に浸しながら、出航していくオロンテスを乗せたヘルメス艇を見送る。
 朝行事を終える、オキテスとドックスが連れ立って建造の場の一同との朝食の場に足を運ぶ、道すがらドックスがオキテスに船台構築の作業が今日完了することを告げる。
 『隊長、そのようなわけで、11月初めからの人事構想の作成を終えています』
 『おう、そうか。了解した』
 オキテスは、それを聞き終える、今日午後のスケジュールをドックスに言いわたす。
 『解りました。それでもって私の時間都合を作っておきます』
 オキテスは、建造の場の一同と朝食を共にして終える、会所に足を運ぶ。
 会所にはアエネアスら三人が顔をそろえている。
 イリオネスが声をかける。
 『オキテス、お前、全く疲れを見せていないな。タフだな』
 『段取りよく航海をしたこともそうですが、何よりも事がうまく運べたこと、また、天候に不安がなかったこと、そのようなわけで疲れ知らずです』
 『おう、そうか。順調に事が運ぶ、それが何よりだ!疲れを忘れさせる』
 『では、関係筋との話し合いの結果を報告いたします』
 オキテスが姿勢を改める、報告に及ぶ。
 受注艇の引き渡し納入の日程を話し合い、展示試乗会を二日間催行で実施する打ち合わせたをしたことを一同に伝える。
 また、関係筋が船の購入に関して、引き合いをしている客にフオローワークを怠りなくしている状況を伝え、展示試乗会の折に昼食会を行い招待することにしたことを詳しく報告した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1470

2019-02-08 14:17:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、ドックスとの打ち合わせを終える、関係筋との打ち合わせ航海についての段取りをする。
 『おう、これで心おきなく営業活動にとりかかれる』
 自問自答で気持ちを引き締めた。
 彼は会所に歩を向ける、会所にはアエネアスをはじめイリオネス、パリヌルス、オロンテスの四人が顔をそろえている、彼らがオキテスを迎える。
 イリオネスが声をかける。
 『おう、オキテス、諸事の段取りができたのか?』
 『はい、その件の打ち合わせをしておきたいと考えています』
 『おう、そうか、聞こうか。船舶建造事業の全てをオキテスの両肩にのせている』
 『重いですね!』と応えておどけてる、オキテスは余裕のあるところを見せる。
 『関係筋との打ち合わせ航海ですが、23日に出航します、帰着は27日です。このあと船台の設置とその要領をドックスと打ち合わせ、11月1日には稼働できるようにします』
 『おう、そうか。11月1日にはその船台が使えるということだな。作業メンバーのほうも整える必要があるな』
 『それは航海から帰って、今月の建造状態を見たうえで29日に各船台の責任者を決めて、作業陣容を整える予定です』
 『了解した』
 オキテスが話し終えて、パリヌルスに声をかける。
 『パリヌルス、留守の間のことだが、建造の場をよろしく頼む』
 『おう、心得た。安心して行ってきてくれ』
 ドックスがオキテスを呼びに姿を見せる。
 『オキテス隊長、船台の件、打ち合わせます。先に現場に行きます』
 『おう、ドックス一緒に行く』
 オキテスが腰をあげる、パリヌルスも同道した。

 オキテスが関係筋との打ち合わせ航海に出航する日の朝が明ける。
 陽の出の刻に一同に見送られて出航する。
 キドニアの集散所、キドニス、スダヌス両浜頭と受注艇の引き渡し納入の件を打ち合わせる。また、スダヌスとは、ラッパイオイのマイテス浜頭からの受注の件をテムノス浜頭と打ち合わせる諸事を話し合い、キドニアからレテムノンに向かう。
 イラクリオンのエドモン浜頭、マリア集散所の担当とも引き渡し納入の件、11月に催行する船舶展示試乗会の日取り等の諸事の打ち合わせを終えて、帰途に就く。
 航海は曇りの日があったが海のあれには遭遇することなく、27日の夕刻に無事帰着した。
 浜の者ら一同が彼らの無事帰着を迎える、無事の帰着をアエネアスらが喜こぶ、浜に集った者らも歓声をあげて喜こんでくれる、彼らは歓びに迎えられた。
 オキテスとイリオネスの顔が合う、。
 『オキテス、手際よく事を終えるようになったな。要領が板について慣れたといった感じだな』
 『そのように見えますか。自分でも不思議に思うことがあります。この業務を遂行していくのに困難をさほど感じなくなっています。今回の航海の用務の打ち合わせ交渉事、全てうまくいきました。詳しい報告は明日でよろしいですか?』
 『おう、重畳!それでいい。疲れたろう。一同と夕食を共にして休んでくれ。この仕事、お前に託して間違いがなかった。安心している』
 『ありがとうございます。そうさせていただきます』
 二人はヒシット肩を抱き合う、イリオネスは感謝をまなざしに込める、オキテスは真摯な気持ちで受け取った。

『トロイからの落人』  第7章  築砦  用語ミスの訂正とお詫びを申し上げます。

2019-02-07 16:17:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
  2月5日に投稿しました、通し番号 #1467 12行目
 
  架設船台 を 設置船台  と訂正いたします。
  
  してはならないミスでした。深くお詫び申し上げます。

                 山田秀雄 山田萌愛

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1469

2019-02-07 10:59:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスとオキテスが話し続ける。
 『オキテス、今のお前は客との接触の第一線で仕事をしている。現在のクレタだが、どのように目にうつる?』
 『そうだな、船舶の展示会場に訪れる客だが、前回の展示会に比べて船に対する客の関心度が高まってきているように感じられる』
 『そうか、世の中の要請が、俺らが造っている船に関心を示していると解していいのかな。その答えが受注と引き合いの結果に答えがあるように感じられる』
 『パリヌルス、お前の言うことに同感だ!エドモン、テムノスの二人の浜頭の俺らへの対応にもそれを感じる』
 『おう、オキテス、本題に戻るぞ。現在の月産4艇でも受注に対応できるが、5船台5艇のほうが建造の管理、余裕を持っての建造をしていくうえで無駄を排除してムリなく作業を遂行できる』
 『解った。俺の気持ちも決まっている。船台5台、月産5艇でやる。会議で説明して決定する。これなら関係筋とも交渉がしやすい、当方の意を通せる』
 『そのあとは、受注状況に合わせて船台を使って建造していけばいいわけだ。何としても、当面の課題解決が急務だ』
 『解った。先が見えてきた。このあと、打ち合わせ航海の日程を考える』
 『おう、それがいい。これで受注艇の引き渡しが45~50日でできる。何といっても船台5台で月産5艇をやることが先決だ。以上だ』
 『ありがとう、パリヌルス』
 『解った解った!』
 二人の話し合いが終わった。

 翌日、朝早くから会議が開かれる。建造の場の船台1台の増設が決定する。オキテスの打ち合わせ航海の日程も決まる。
 オキテスは決定事項を持ってドックスと打ち合わせの時を持つ。
 『ドックス、船台を1台増設する。このたび催行した船舶売り出し展示試乗会で受注した艇の建造を遂行するためだ。11月から当面5か月間くらいだが、月産5艇の建造だ。よろしく頼む』
 『解りました』
 『月産5艇の建造については、パリヌルス隊長からも説明がある。聞いてくれ』
 『隊長、船舶の建造用材の手配の件ですが、どのようにするか打ち合わせしたいと考えています』
 『それについては、派遣のガリダの手の者にガリダ頭領のもとに行かせて打ち合わせするか、タブタを呼び寄せて打ち合わせするかを考える』
 『了解しました。受注艇数も解っています。今、聞いた向こう5か月の建造計画も把握しました。私に任せていただけますね』
 『おう、いいだろう。ドックス、お前に任せる。不都合があれば、その都度、その旨を言ってくれればいい』
 『船台の増設計画、段取りができましたら、今日の夕刻に現場に出向いて説明いたします』
 『了解!頃合いになったら、俺を呼びに来てくれ。それからだが11月以降の建造計画については、打ち合わせ航海から帰ったら決定事項を打ち合わせる。いいな』
 『解りました』
 オキテスは、ドックスに11月から来春までの建造計画に関しての大要を伝えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1468

2019-02-06 05:10:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスの話を聞いて、オキテスは頭をかしげる、パリヌルスは話し続ける。
 『お前の留守の間、半月、建造の場にいて、全体の作業ぶりを観察した。建造力に余裕のあることに気付いたというわけだ。これなら月産5艇はいけるということが解った次第だ。その建造5艇体制にすればどうなるかと考えたのだ』
 パリヌルスはオキテスと目を合わせる。
 『船台を5台にすれば、船台1台当たりの人員が72人になる。そこで月あたり1艇の建造の可否を考えた。1船台当たり60人体制ではおぼつかない1船台月産1艇が1船台当たり72人体制ならば少しばかりの余裕を持ってできることが解った』
 『パリヌルス、どうしてそれが解るのだ?』
 『船舶1艇の建造にかかる作業人員の仕事量を知ることによってわかるのだ。その木板に書いた数字を見てくれ』
 オキテスは、木板にかかれた数字に目を落とす。
 『現状の船台4台で月産4艇とした場合、稼働22日で4艇が建造できる。船台を6台として稼働した場合、6艇を建造するには33日がかかる。そこでだ、船台5台月産5艇とすると、5艇を完成させるのに28日で完成させることができることが解ったのだ』
 『どうしてそれが解るのだ?俺にはとんと見当がつかんのだが』
 『それを判別するには、少々細かい手数がかかる。その木板に記した1船台で1艇を仕上げるのにかかる作業員の述べ人員数1980人を1船台にかかる1日の作業人員数で割り算すれば建造の完成までの所要日数が算出されるということだ』
 『何となくわかる。お前、よくそこまで考えてくれたな』
 『オキテス、納得できたのか?』
 『ここまでの説明で納得した』
 『納得したら、船台を5台にして、建造をするかしないかを決断しろ!それが当面の急務だ』
 『俺には、これを考えねばならない必要があったのだ。どう考えればいいか見当をつけることができなかった。それについて、パリヌルス、具体的に、誰が聞いてもわかるようにお前がやってくれた。感謝この上なしだ』
 『現状で考えた場合には、受注及び引き合いの総艇数を建造するには5か月かかるのだぞ。そのうえ、受注分だけを考えても客を最長75日も待たせることになる。客が待ってくれるか否かだ』
 『船台5台月産5艇になれば、客を待たせるのも45日となるわけか』
 『引き渡し納入も都合よくできる。この仕事を遂行した集散所、浜頭連も、俺らがこれだけの船舶の注文にこたえることができるのかを疑問視していると考えられる。俺らの力の見せどころでもあるわけだ』
 『解った。パリヌルス』
 『テカリオンから聞いているのは、現在のクレタ島の造船力は低迷しているとのことだ。船の建造用材もクレタ島西部地区にあると言っている。東部地区の船の建造用材は枯渇状態であるといっている』
 二人は顔を見合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1467

2019-02-05 04:47:22 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがパリヌルスに答える。
 『パリヌルス、ありがとう。営業活動に関する建造の難問題の解決の糸口を見つけてくれた。感謝感謝というところだ』
 『まあ~、オキテス、考えてみろや。これだけの艇を注文客に引き渡すだけでも大変な仕事だ。それに加えて営業活動だ、お前の大変が理解できる。しかしだ、完成した船舶の引き渡し納入は、営業活動の結果に貢献してくれる、これは確かだ。これをおろそかにすることは許されないのだな。俺はそのように考えている』
 『解った!パリヌルス、お前の構想した建造計画を聞かせてくれ!本題にはいろう』
 『おう、了解した。木板と木炭をくれ』
 オキテスは、場に準備している木板と木炭をパリヌルスに手渡す、パリヌルスが受け取った木板に月次の建造艇数を書く。
 『おう、オキテス、向こう6か月に建造する艇数だ。この計画に基づいて建造の場を整備する。建造の場の船台を1台増設して5台にする』
 『この構想に到るパリヌルスの考えを聞きたい。それを聞いたうえで方針決定をしよう』
 『この半月、船の建造に携わって建造の状況をよく見てきた。その状況をみて俺は考えた。それでもって考えた対応策だ。これでお前のやる営業活動に対応できる』
 オキテスは、木板に記された月次の建造艇数をみる、大きくうなずく。
 『これが向こう6か月間の建造艇数か、受注艇数に引き合い艇数を加えた20艇に10艇を加えた30艇になっている。架設船台が5台の稼働になるわけだな』
 『現在の建造の場で建造の作業の携わっている総人員が大まかに見て360人だ。オキテス、木板をもう一枚くれ』
 パリヌルスが木板に数字を書いてオキテスに見せる。
 『オキテス、この数字を見てくれ!このようになる。これが船台5台での建造計画だ』
 オキテスは、木板にかかれた数字に見入る。
 
 これが、パリヌルスが木板に書き記した建造の場の仕事量の計算式の数字である。

       船台数  1台当たり  1か月当たり  1艇当たり建造                 1艇当たり
             人員数    建造艇数    延べ人数                    建造日数
        4    90      4              1980 90 22       22日
        5    72      5      1980人   1980 72 27.2分の1 約28日
        6    60      6              1980 60 33       33日
 
 『オキテス、見ての通りだ。建造の場の総人員が360人で船台4台で船を完成させるとすれば、船台1台当たりの人員が90人となって、稼働日数が22日で4艇が出来あがる。これを船台6台でやるとすれば、船台1台当たりの人員が60人に激減する。この体制にすれば6艇の完成に33日がかかる。1か月1艇完成の仕組みができなくなる』と言って、パリヌルスはオキテスと目を合わせた。

      

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1466

2019-02-04 05:09:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 うなずき合った、パリヌルスとオキテス、緊張度を高める、二人の間にただならぬ気配が漂う。
 『おう、オキテス、これは、これから先を見極めての問題だ。この案でもって講じる措置は、5か月後の新暦の時期を見つめて早急に対処する措置としてやろうと考えている』
 『先を見つめての対策ということか』
 『そうだ。催行した船舶売り出し展示試乗会の受注艇数と引き合い艇数を知りたい』
 『おう、解った!これがそうだが』と言って、二枚の木板を手に取る。
 一枚の木板には受注艇数が、もう一枚の木板には、引き合い艇数が書かれている。
 二人の目線が一枚目の木板に注がれる、その木板には受注艇数が記されている。
 船舶売り出し展示試乗会の会場ごとに受注した戦闘艇と新々艇の受注艇数である。
 『引き合い艇数は、どうだ?』
 『引き合い艇数は、この通りだ』と言って、もう一枚の木板に見入る。
 『受注艇数が8艇、引き合い艇数が12艇か、総艇数が20艇となるな。いい数ではないか、オキテス、お前の営業力は大したもんだな、立派な成果ではないか』
 『さっきも言ったように、不思議だといっているのだ』
 『ミックスパワー効果だな。それをやったのがオキテスの力ということだ。俺がやってできることではない。俺の腹案を述べる。この20艇を向こう4か月で建造する。1か月の建造体制を5艇体制の建造の場とすることを考えての構想だ。それでどうだ?』
 『パリヌルス、そのように考えてくれているのか』
 『この受注に関しては、受け取り方の引き取り予定を聞いて、発注客と打ち合わせてほしい。月間建造を5艇にすれば当面の8艇は12月の月初には完納することができる。この時点には3艇を保有して引き合いの受注に対応できる』
 『すると、この受注した船を今日から数えて、45日以内に注文客に引き渡すことができるということか。客を待たせる期間が長引くことをどうしようかと考えていたのだ』
 『オキテス、戦闘艇1艇と新々艇1艇は即納できる、11月の月の初めには戦闘艇3艇が注文客に引き渡せる。あと3艇の戦闘艇は12月初めに引き渡せる。その時点での在庫保有艇数が戦闘艇が2艇、新々艇1艇となる』
 『それで、受注した船の納入引き渡しを打ち合わせる。あとの受注に関しても45日以内の納入引き渡しで対応できるということになるな』
 『全てがそうできるということはチョット保証しかねる点もあるが、引き合いの12艇が今月中に受注となった場合は納入引き渡しが、年が明けて2月初めまでかかる』
 『引き合いの12艇が今月受注となることはないと考えられる。11月に催行する試乗展示会で半数を受注しても45日対応ができる』
 『それは、充分に対応できる』
 不安を隠して話していたオキテスの顔に安堵の表情が浮かんでくる、打ち合わせ交渉に自信の持てる建造体制となるのである。
 オキテスは、パリヌルスの腹案に賛同の意を示した。