つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

それは、普段なかなか聞けない、弁護士の本音の独り言

としまえん問題についての一応のまとめ~誰がとしまえんを殺したか〜後編

2021-07-30 20:04:00 | としまえん問題

ども。

東京五輪で日本人選手の活躍見てはもらい泣きしてる平岩です。

 

前回に引き続き「としまえん問題についての一応のまとめ」。

今回は、

2つ目の疑問:としまえん跡地は第2種住居地域に指定されていて10000㎡を超えるテーマパークとかアミューズメント施設といった「遊技場」は建設できないはず。スタジオツアー東京はどう見てもハリーポッターのテーマパークでありアミューズメント施設との印象を受ける。それなのに何故、としまえん跡地に建設できることになったんだろう?

です。

 

東京都建築審査会宛の審査請求書の5頁から36頁にかけて詳しく書いたとおり、「スタジオツアー東京って本当に『博物館その他これに類するもの』なのか?」という点については、

「いや、さすがにそれって無理じゃね?」

というのが私の意見だ。

実際、ワーナーも東京都知事も伊藤忠も、当初からスタジオツアー東京を「体験型エンターテインメント施設」であり「アトラクション」を備えた「テーマパーク」であると認めている(たぶん今も)。

ところが、「第2種住居地域にそれ建てるの、おかしくないか?」との声がいろんな方面から上がり始めた途端に、「いやいや、スタジオツアー東京は『博物館に類するもの』ですから」と言いだした。

いくらなんでも場当たり的だとの謗(そし)りを免れないと思う。

 

スタジオツアー東京と『博物館その他これに類するもの』についての、伊藤忠(と東京都と練馬区と西武とワーナー)の反論の中心は、おそらく、

「横浜アンパンマンこどもミュージアム(以下「アンパンマン・ミュージアム」)だって『博物館その他これに類するもの』として建てられている」

という点になると思うので、この点について一言だけ先に反論しておく。

「アンパンマン・ミュージアムだって『博物館その他これに類するもの』なんだ」から「スタジオツアー東京も『博物館その他これに類するもの』だ」

というのはまったく説明になっていない。

「アンパンマン・ミュージアムは『博物館その他これに類するもの』として建てられている」

  ↓

「アンパンマン・ミュージアムとスタジオツアー東京はその運営方法、アトラクション、料金、展示物、研究、学術的側面でこれこれこういう共通点がある」

  ↓

「だからスタジオツアー東京も『博物館その他これに類するもの』だ」

というのが最低限、議論の噛み合う伊藤忠(と東京都・・・略)側のロジックだ。

ただし、これでもまだ足りない。

このロジックには

「これこれこういう運営方法、アトラクション、料金、展示物、研究、学術的側面を持っているアンパンマン・ミュージアムを『博物館その他これに類するもの』と評価したのは法的に正しい解釈だ」

という前提が欠けている。

「神奈川県がアンパンマン・ミュージアムを『博物館その他これに類するもの』として認めてるんだからそれでOK」

というのは、

「西武とか伊藤忠という大企業が正しいと判断したんだから。間違いなんかありませんよ。」

と真顔で言っていた、某思考停止議員と変わらない。

(たぶん8月末か9月頃に処分庁から提出されるはずの)弁明書にはこんな稚拙な反論が書かれてこないことを祈るばかりだ。

 

ただ、この場は「スタジオツアー東京は『博物館その他これに類するもの』か否か」を議論する場ではない。

私は、「アンパンマン・ミュージアムはさておき、少なくともスタジオツアー東京は『博物館その他これに類するもの』とはいえない」との立場だから、ここで検証するのは、「そのようなスタジオツアー東京が何故、第2種住居地域であるとしまえん跡地に建てられることになってしまったのか?」という点である。

 

そもそも、としまえん跡地にスタジオツアー東京を建てるためには「建築確認申請書」というのを東京都、あるいは東京都知事または国土交通大臣が指定した民間の指定確認検査機関に提出して「確認済証」の交付を受けなければならない。

確認済証というのは、簡単に言えば、「建築確認申請が出されたこの建物は建築基準法やその他の関係法令には違反していないことを確認しましたよ」というお墨付きだ。

かつては行政機関がこの申請を受け付けて確認済証の交付までやっていたけれど、1999(平成11)年の法改正で民間の指定確認検査機関にこの業務を行わせることができるようになった。

ただ、指定確認検査機関はあくまでも行政機関に代わって確認検査業務を行うだけだから、

指定権者である行政府の方針に反した確認済証の交付あるいは交付拒絶がなされることは100%ない。

「スタジオツアー東京は建築基準法上、第2種住居地域に指定されているとしまえん跡地に建築可能な『博物館その他これに類するもの』だ」という前提で交付された確認済証は、たとえそれが民間の指定確認検査機関の交付したものであっても「東京都の判断」と考えていい。

 

スタジオツアー東京の建築確認申請が指定確認検査機関に提出される以前に、東京都と練馬区と西武とワーナーと伊藤忠は5者覚書で、

「東京都としては練馬城址公園にする予定だったとしまえん跡地の北側半分をスタジオツアー東京とすることを認める」

「スタジオツアー東京が30年間、営業することも東京都は認める」

「そのかわり西武やワーナーや伊藤忠は、練馬城址公園の機能(水と緑、広域防災拠点、にぎわい)の『実現の一翼を担うことに配慮』だけすればいい。それ以外は特に義務はない」

「30年後にはちゃんとスタジオツアー東京の敷地も公園にする」

と秘密裡に合意していた。

5者覚書の当事者の一人である東京都が秘密合意を反故(ほご)にすることになってしまうような建築確認審査を、指定確認検査機関がするわけがない。

 

さらに言えば。

指定確認検査機関はいきなり建築確認申請書の提出を受け付けるわけではない。

「事前審査」「事前相談」‥‥、呼び方はいろいろだけれど、建築確認申請書を提出しようとする者(=建築主。スタジオツアー東京なら伊藤忠)は建築確認申請書を提出する前に指定確認検査機関あるいは東京都の建築主事に、「この建築確認申請書を提出すれば確認済証を出してくれるか」を確認(打合せ)するのが通例だ。

ましてやスタジオツアー東京ほどの規模の建物である。

万一、確認済証が交付されないとなったらワーナーを巻き込んだ大問題にもなるだろう。

「事前審査」「事前相談」が行われなかったはずがない。

 

では、仮にその「事前審査」「事前相談」が5者覚書の締結前に行われていたとしたら、その段階で「スタジオツアー東京は博物館その他これに類するものではない」とのチェックが指定確認検査機関から入っただろうか?

入らなかっただろう。絶対に。

何故か?

建築確認というのは「申請があったこの建物(=スタジオツアー東京)が建築基準法その他の関係法令に違反していないか」を確認する手続だが、この法令違反の有無は「申請者が申請書に書いている内容や添付されている資料に嘘は書かれていない」という前提で判断されるだけの書面審査だからだ。

スタジオツアー東京の例でいえば、申請書にスタジオツアー東京の設計図面は添付されているが、完成後、どのような形態で営業を行っていくのか、何を展示し、来場者にどのようなアトラクションを、いくらで提供するのかまでは書かれていない。

申請書には、

「建物の目的:博物館その他これに類するもの」

と書いてあるだけだ。

天下の伊藤忠が、

「この建物の目的は『博物館その他これに類するもの』です。」

と言ってるのに、それ以外に建物の目的を判断する確たる資料も与えられない指定確認検査機関が、

「いやいやいやいや伊藤忠さん、それは無理ってもんです。」

などと言うわけがない。というか言えないだろう。

建築基準法はザル法だ、と言われるゆえんである。

 

ここで、今一度、としまえんとスタジオツアー東京に関する主な出来事を時系列でみてみよう。

1957(昭和32)年  としまえんを中心とした一帯が練馬城址公園として都市計画公園指定を受ける。

2011(平成23)年3月11日  東日本大震災が発生。

2011(平成23)年12月  東京都が「都市計画公園・緑地の整備方針」で2020(令和2)年までに事業認可を目指す優先整備区域として、としまえんを中心とする一帯を指定。

2016(平成28)年(度)  整備計画案検討のための基本計画案の取りまとめを目的とする委託調査。

この年の調査報告書においては、「子どもから大人まで、自然とともに遊び、自然のなかでくつろぐ公園」という基本理念、「直接土に触れ、農業体験ができる『畑のエリア』、都心になかなかないアップダウンやせせらぎのある小道での散策が楽しめる『雑木林のエリア』、地形や樹木を生かした冒険的な遊びも幼児が遊べる広場もある、子どもたちにとって健やかな成長の促進にもつながる『森の冒険エリア』など、子どもから大人まで、都心ではなかなか味わえない豊かな体験ができる多彩で総合的なプラン」「カルーセル・エルドラドと思われるとしまえんのシンボルの存続・設置案」が提示されていた。

この年、小池百合子氏(以下「小池氏」)が291万2628票を獲得して東京都知事に就任。

9月20日  小池氏を支援する政治団体として都民ファーストの会が発足。

2017(平成29)年(度) 同年5月の東京都公園審議会答申を踏まえた民間活力の導入や防災機能の強化等の検証と前年の委託調査の修正を目的とする委託調査を実施。

この年の調査報告書においては、前年までの計画を事実上白紙撤回。前年までの計画にあった「畑のエリア」「雑木林のエリア」は完全消失。他方、「にぎわいゾーン」とされるエリアは「広場エリア4ha」「森と遊園地エリア7ha」に拡大(前年までの計画で同様の性格を持つ「コミュニティゾーン」の広さは0.7ha)。民間事業者が参入しやすいように対象エリアが16倍に拡大された。

この年の選挙で都民ファーストの会は都議会第一党に躍進。

2020(令和2)年2月  「としまえんは閉園し、跡地にハリーポッターの施設が作られる!」とマスコミがスクープ。

2020(令和2)年6月12日  5者覚書締結。同時に「今年8月31日をもって、としまえんは閉園する」と発表。

2020(令和2)年8月13日  西武と伊藤忠の間で事業用定期借地権設定契約締結。

2021(令和3)年4月12日  練馬区長による都市計画法第53条の許可。

2021(令和3)年4月14日(?)  伊藤忠が確認申請書を指定確認検査機関である一般社団法人日本建築センターに提出。

2021(令和3)年5月12日  一般財団法人日本建築センターによる建築確認証交付。

 

あくまでも上記一連の流れからの推測でしかないが、少なくとも2016(平成28)年に東京都知事に就任した小池氏と、翌年、都議会第一党に躍進した都民ファーストの会の意向を受けて、それまでの練馬城址公園の整備計画が根本的に書き換えられたのは間違いないだろう。

このことは、小池氏が東京都知事就任以来一貫して「ワイズ・スペンディング」だの「稼ぐ東京」だのと、これまでの税金の使い道の抜本的見直しとインバウンド収入を中心とする経済対策を主張していたことともピタリと整合する。

このころからワーナー、西武、伊藤忠から「としまえん跡地にスタジオツアー東京を」という打診が小池氏や都民ファーストの会にされていた可能性もある(ロンドンの本家スタジオツアーは2012年オープンである。)。

だとするなら。

民間の一事業者からの打診を受けて(あるいは土地所有者である西武の要求に屈して)、これまで積み上げられてきた公園整備計画を根本的に変更したこと、なかでもとしまえんを愛していた利用者の思いを嘲笑(あざわら)うかのようにとしまえんのシンボルの存続・設置案を白紙にし、広域防災拠点の機能を減殺し、ましてや現状の避難場所指定すら有名無実化してしまった小池氏と都民ファーストの会の政治判断・政治姿勢の是非は厳しく問われなければならないはずだ。

しかし、この点をきちんと追及している都議会議員は、私の知る限りほとんどいない。

 

2019年1月5日にインターネットで公開された産経新聞とのインタビューで小池氏はこう言っている。

「都立公園により着目して、公園改革をしっかりやりたい。公園法の改革があったので都立公園をより親しめる、楽しめる公園に変えていきたい。『都立公園大改革』と呼んでいるのですけれども、改革をスピード・バージョンアップし、民間独自のノウハウや資金を活用した公園管理などを進めていきたいと考えております。」(2018年12月末の産経新聞との単独インタビューより)

このインタビュー記事を見ても、また、としまえん跡地に代わる避難場所の指定がいまだにされていないことからしても(※避難場所の指定は東京都知事に課せられた条例上の義務である)、小池氏と都民ファーストの会の頭には「防災」の「ぼ」の字もないことは明らかだろう。

はっきり言ってしまえば、小池氏や都民ファーストの会の価値基準は、「命」より「金」なのだ。

 

「稼げればいい」

「マスコミが飛びつくようなエンターテインメント施設を誘致できればいい」

「インバウンド収入が増えればいい」

というそれだけの発想でスタジオツアー東京計画はここまで来た。

このような発想、このような政策は、小池氏のこれまでの政治家としての姿勢でもある(この点についてもっと詳しく掘り下げてみたい方には石井妙子著「女帝 小池百合子」をお薦めする。)。

小池氏は言う。

「都立公園をより親しめる、楽しめる公園に変えていきたい。『都立公園大改革』と呼んでいるのですけれども、改革をスピード・バージョンアップし」たい、と。

防災の観点はひとまず横に置くとしても、練馬城址公園は当初の計画用地の半分をスタジオツアー東京に譲り渡してしまった(誤解されている向きもあるようだが、スタジオツアー東京は練馬城址公園の敷地内に建てられるのではないし、公園来場者が無料で利用できる施設でもない。)。

小池氏が5者覚書に調印したことで、練馬城址公園の整備は完成までにさらに30余年を有することになった。

「スピード・バージョンアップ」とお得意の英語で説明するが、こと練馬城址公園に限って言えば、「スローダウン・バージョンダウン」としか言えない状況が現出している。

これらは紛れもなく、小池氏と都民ファーストの会の都議会議員たちが推し進めてきたものだ。

これのどこが「都立公園大改革」なのだろう?

 

話を戻そう。

2020(令和2)年2月に「としまえんは閉園し、跡地にハリーポッターの施設が作られる!」とマスコミがスクープした時点で、スタジオツアー東京の建設計画や営業期間(30年)の骨子は既に決まっていたはずだ(そうでなければさすがに大手マスコミがスクープとしてスタジオツアー東京計画を報道はしない。)。

そのスクープの4か月後に5者覚書が締結された。

お役所仕事の速度感を考えれば、5者覚書はマスコミのスクープを受けて慌てた5者が、「覚書だけでも作成して既成事実を使っておこう」と突っ走って作られた感がある。覚書の文言があまりに杜撰・稚拙だからだ。

覚書の文言調整と並行して西武と伊藤忠の間の事業用定期借地権設定契約書のドラフトも進められていたはずだ。

事業用定期借地権設定契約は5者覚書締結のわずか2か月後に締結されている。

借地借家法上、事業用定期借地権設定契約は、公証人が作成した公正証書に署名・捺印しなければならないから、5者覚書締結のわずか2か月後に事業用定期借地権設定契約が締結されているという事実は、覚書の文言調整と並行して事業用定期借地権設定契約書のドラフトが進められていたことを裏付けている。

そして、としまえんは、事業用定期借地権設定契約が締結されたわずか半月後に閉園した。これも既定路線だった。

そして今年4月12日。まず、スタジオツアー東京の建設に必要な練馬区長による都市計画法第53条の許可を取得。

そのわずか2日後。間髪入れずに確認申請書を指定確認検査機関に提出。

ここまで周到に5者間で下準備が進められ、根回しが進められ、覚書が締結され、事業用定期借地権設定契約が締結され、都市計画法の許可も取得済みで提出された建築確認申請を却下する指定確認検査機関などあろうはずもない。

 

では、この点を追及している審査請求はまったくの無駄骨なのか?

そうは思わない。

確かに東京都の建築審査会は東京都知事の付属機関という位置づけである。

審査請求をしたところで、スタジオツアー東京の建築を容認した東京都知事の意向に沿った判断が出される可能性は極めて高い。

しかし、かつてトランプ大統領に指名され任命されたアメリカの最高裁判事が必ずしもトランプ大統領の意に沿う判決を出さなかったように、

「東京都知事に任命されはしたが、わたしは彼女の意向ではなく法と良心にのみ従う。」

という建築審査会の委員もいるかもしれない。

先ほど述べたように、指定確認審査機関の建築確認手続は申請者から提出された書面を前提として行われる。

これから建物を建てようと思っている申請者が、自ら建築確認を取れないような資料を提出するはずがない。

しかし建築審査会での審査請求では申請者の意に沿わない、申請者が指定確認検査機関に提出しなかった資料も提出できる。

これを踏まえて申請者と書面による議論もできる(審査請求書→弁明書→反論書、と書面による議論は続く。)。

 

最初からしたり顔して斜(はす)に構えて何かを諦めるより、闘う手続が残されている以上はその手続にかかわっている人の良心と正義を信じるべきだと私は思う。

私が今回の審査請求手続の代理人を引き受けたのは、そう考えた6人の審査請求人の方々に共感したからだ。

審査請求手続における審査請求書、弁明書、反論書、提出された証拠はすべて公開していく。

仮に、東京都建築審査会が東京都知事の意向に反する判断をしない(できない)人たちの集合体だったとしても、最後は公開した記録を見て、皆さん一人一人が、あるいは歴史が、判断すればいい。

「東京都知事、練馬区、西武、伊藤忠、ワーナー、そして東京都建築審査会。彼らの下した判断は正しかったのか?

それは正義という価値観に、都民や区民の幸せに、本当に恥じないものだったか?」

と。

 

だから私が公開する審査請求の記録はできるだけ多くの人に、できるだけ丁寧に読んでほしい。

東京都を、練馬区を、西武を、伊藤忠を、ワーナーを認めるにしろ否定するにしろ、TwitterとかFacebookといったちっぽけな世界の断片的な情報や、「大企業が言っているから」「小池さんの判断だから」などという短絡的で浅薄な理由で判断すべきではない。

それは「としまえん問題は一部の左がかったやつらの煽動(せんどう)だ」と喚(わめ)いている人たちと何も変わらない。

理性で物事を判断していない、という点で。

 

最後に一つ、新たな問題点を提起しておきたい。

西武と伊藤忠の間の事業用定期借地権設定契約はこれまで便宜上「30年、30年」と言われてきたが、契約期間は正確には「33年2ヶ月」である。

たかが3年2か月の差ではないか、というなかれ。

期間30年以上の事業用定期借地権は契約を更新することができる。

契約を更新しない場合でも土地上に作った建物の買い取りを要求することができる。

契約の更新や建物の買い取りを要求されないためには、先ほど述べた公正証書にその旨を明記しておかなければならない。

しかし西武も伊藤忠も、肝心の事業用定期借地権設定契約の公正証書を開示していない。

スタジオツアー東京の建物の買い取り請求先は土地所有者である西武だが、東京都はその西武からスタジオツアー東京の敷地を練馬城址公園用地として買い取ることになっている。

買い取りに際しては、としまえん跡地南側のプールエリア同様、「東京都が費用を負担して更地化して買い取る」ことが原則だそうだ(これは東京都の担当者から私が直接聞いた。)。

スタジオツアー東京の敷地部分を33年2ヶ月も練馬城址公園として整備することを先送りしただけでは飽き足らず、東京都はその土地を西武から買い取る際、更地化の費用を西武に払う上に、西武が伊藤忠(あるいはワーナー)に対して払う建物購入費まで負担するのではないか?

それは結果的に「東京都が税金を投じてスタジオツアー東京の建物を建築した」のと同じではないか?

これが小池氏の言う「ワイズ・スペンディング」か?

そもそも、伊藤忠やワーナーが契約期間の延長を求めてきたらどうなるのだろう?

 

5者覚書には次のような条項がある(読者の理解のために分かりやすく書き直した。)。

「第6条3項 スタジオツアー東京の設置可能期間は30年間とするが、西武、ワーナー、伊藤忠からこの期間を変更したい旨の申し出があったときは東京都も練馬区も協議に応じなければならない。」

簡単に言えば、2054年5月15日直前に、「さらに30年、スタジオツアー東京を運営したい」と西武と伊藤忠とワーナーに言われたら東京都も練馬区も「期間延長の協議」に応じなければならないのだ。逆に東京都や練馬区には「期間をもう少し短くしてくれないか」と西武や伊藤忠、ワーナーに求める権利は認められていない。

仮に西武や伊藤忠、ワーナーから「スタジオツアー東京の営業期間をもっと長くしたい」と申し入れがあったとき、東京都にはその要求を跳(は)ね除(の)けるほどの覚悟と交渉能力があるのか?

スタジオツアー東京の敷地部分が練馬城址公園になることはもはや半永久的になくなった、少なくとも西武と伊藤忠とワーナーの胸内三寸次第と言わんばかりのこの第6条3項、事業用定期借地権設定契約の「更新」を見据えているとしか思えないこの第6条3項を、どうしてどの議員も問題視しないのだろう?

私の知る限り、スタジオツアー東京や5者覚書の問題点について、兎にも角にもこれを取り上げて議論しようとしていたのは練馬区議会議員なら池尻成二元区議、高口ようこ区議、野村説区議、東京都議会議員ならとや英津子都議と原田あきら都議くらいではないか。

こういうことを書くとまた、「としまえん問題は左派の煽り」「平岩は隠れ共産党」とかなんとか、30年遅れのピンボケコメントが来るんだが、そうじゃないだろ。

左派が煽ってるんじゃなくて、それ以外の議員の中にまともな議論をする能力を持っている人が誰もいないだけの話だ。

自分の事案分析能力、法令解釈能力、ディベート能力を棚に上げて、自ら考えることも、調べることも、有権者の疑問に応えることもしない。

(どの党とは言わないが)選挙を見越して票につながるかもと、党としてスタジオツアー東京反対派に取り入ってきたくせに、同じ党の候補者が「スタジオツアー東京の是非」について勇気を出して質問した有権者に「あなたたちは煽(あお)られているだけだ」と言い放つ。

 

これが僕らの国の、政党と政治家のカタチである。

 

イライラしたらオリンピックでも見てスッキリしましょう。

立憲民主党も「もう中止は求めない」と言い始めたことですし(笑)

頂いているコメントへの回答は次回。