あきオジの風景

写真、そして、俳句(もどき)
毎日更新しています。

人には他人には言えない秘密があるものです

2008-03-01 18:09:10 | 日記
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30年会っていない息子

知り合いのじいさんがこんなことを話してくれた。
実は30年あっていない息子がいるのです。
その息子の消息が分らないのです。
今日、警察に捜索願を出してきた。
もう、死ぬまで会えないかもしれない・・・・
そんな話です。
一昨年の暮れ、長年連れ添った奥様を亡くし
現在は一人で暮らしています。
80歳です。
年金暮らしですが、人恋しくフアミレスに来るのです。
たまたま出勤前のコーヒーを飲んでいてとき
知り合ったのですが、
何となく、じいさんが、身の上話もするようになったのです。
でも奥様がなくなり、二人の娘がおり、孫もそれぞれにいる。
そんなことを話していました。
ですから、娘の話、孫の話は聴いておりましたが
息子の話はまったく聞いておりませんでした。
私は、自ら話せば別ですが、相手が話さない限り
決して身の上話は、聞かないことにしていましたから
そんな事情は知りませんでした。
「そうですか、息子さんがいらっしゃたのですか?」
そんな曖昧な返事をしてしまいました。
じいさんの話によると
30年前埼玉県の朝霞に突然移った後、連絡もなく
いつしか、消息が分らなくなったのだそうです。
息子さんは20年代のころ
トラックの運転助手をしており
仕事の関係で朝霞に移ったところまでは分ったけれど
その後、連絡もないので何度か、朝霞の役場にいって調べたところ
住民票の転入があったことまでは分かったそうです。
しかし、現地に行ったけれど、その住所に息子はおらず
転出先も分らなくなっている
それでけしか分らなかったそうです。
当然、地元の知人等のところも探しまわりましたが消息が掴めません。
拉致されたのか、暴力団とのトラブルに巻きこまれた
そんなことばかり考えていたようですが
いつしか、そのような話題も家族の中から消えてしまったようです。
でも、じいさんは、もう高齢だし、一目でも会いたいと思って
娘と相談して、警察に捜索願を出したそうです。
30年以上前の残された写真などを渡してきたそうです。
それにしても、30年前に消息が分らなくなってしまった
息子への思慕はいかばかりだったでしょうか。
それを懸命に堪えて生きてきても
一人暮らしの寂しさの中では
そんなことが未練なのでしょうね。
「自分は嘘が大嫌い」と言ってきたじいさんにとって
これは嘘ではなく、口に出さなかっただけの話ということになるのでしょうが
思い切って言ってしまったというような間の悪い表情を見て
そんな話を誰かにしたかったのだろうな
そんなことをぼんやり考えていました。
誰にも口が裂けても言えない秘密の一つや二つはある
そんなことをつい最近話題にしていたので
心がちくちく痛いですね。
生きていれば50歳だといいます。
「そうですね。会えればいいですね」では
収まらない深い思いがあるのですね。
同じ話を繰りかえし話すじいさんの
うっすらと浮かべる目は遠くを見ているだけで
動きませんでした。