伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

風力発電環境アセス準備報告書説明会 / 告別式

2016年08月25日 | 原発・エネルギー
 会場は上遠野公民館と入遠野公民館でした。



 環境影響評価法で定められた説明会で、準備書の縦覧と合わせて、住民説明会の開催をすることが求められています。

 今回は、遠野地区では2ヶ所での開催でした。このようになったのは、これまで方法書の段階で法定の説明会を行った際、遠野地区では入遠野公民館だけでの実施だったことに対して、直接関係するだけでも深山田地区があるにもかかわらず、こちらでは回覧等の連絡の措置も取られず問題があると批判がされ、行政区長等への説明会を行った経過がありました。これを受けた措置と思われ、この点では会社側の配慮を評価できるものと思います。

 準備書の段階になって、工事用車両の進入路を、当初計画の入遠野折松の林道ではなく、常磐湯ノ岳のパノラマライン方面からに変更することにしたといいます。折松地区が生活用水を沢水にたよっていることから、これへの影響を不安視する地元の要望を入れての変更だといい、ここも評価できると思います。

 しかし、準備書の中身を見るとどうかな。

 今回は、両会場の説明会に参加してみました。基本的には、住民のみなさんがどんな意見を持っているのかを聴くという目的だったのですが、両会場でいくつか質問もしてみました。

 この計画は入遠野地内に位置する三大明神から鶴石山にかけての尾根沿いに、定格出力2,100kw級の風力発電機17基で最大3万5,700kwの風力発電所を建設しようとするもの。ユーラスエナジーホールディングス(グループ会社含めて従業員312名)が計画し、建設後は地元に会社を設立し、地元企業として運営していくと説明されています。

 で、説明会を聞いて最後に残った印象が、バラ色の計画が、ボロボロ(表現としては過剰か・・)、いや、いやいや、「アレ、アレアレ」の計画に降格したという感じでした。

 いくつかありますが、私が入遠野公民館の説明会で質問したのが、説明資料の中の次の表記に関すること。

 鳥類に関する評価にあるバードストライク対策の「ブレードへの彩色塗装やタワーへの目玉模様の貼付等」との表記。
 景観に関する評価の発電機の見え方という説明中の「環境融和塗色されている場合には、ほとんど見えない」とされる表記。

 それぞれ個別に見ると「なるほどなぁ~」となるのですが、並べてみるとアレアレとなってくる説明です。見えやすくする対策と見えにくくする対策、この相反する2つの対応策は両立できるの・・。

 事業者側の答えは、「ここが難しいところなんです。専門家のご意見も伺いながら対応策を検討していきますが、いまのところ目玉模様が良いのではないかと考えています。近場では見えますが、遠くからの眺望では見えないと考えられるので」。おおよそこんな内容でした。

 これ本当に効果があるんでしょうかね。目玉模様が見えなければぶつかる可能性があるし、そもそも目玉模様が猛禽類などに効果があるのだろうか、という疑問も浮かんできます。

 もっとも、猛禽類によるバードストライクで、最も可能性が高いノスリで年間0.013個体、渡り鳥のアトリで同じく0.630個体と評価しています。計算に間違いなければ、ノスリはおおよそ77年に1回、アトリでも1年半年に1回程という。あぁここで確認を忘れたことが分かった。この確率は1基ではじきだしたのか、17基ではじいたのか。

 いずれにせよ、大して問題にしなくてもいいのではないかという考えが、透けて見える数字ということが言える。

 数字は、不確実性をともなうので、事後調査を実施するといいます。

 当然といえば当然だけれど、別のところにこんなことも書いてあります。

 「地域を特徴づける生態系」という項目に、「実行可能な範囲で追加的な保全措置を実施する」という表現があるのです。この可能な範囲は、どの分野から可能な範囲なのかが気にかかります。質問では技術的な範囲に加え、経済的な範囲ということが明らかになりました。

 技術的な範囲からは、現在の技術で対応できる範囲をこえるものにどう対応するかが気にかかります。できないと放置することになると思うのですが、答えは「検討を続ける」といいます。検討してもできないものはできないので、放置することになるのでしょうけど。

 ただ実行可能であっても、経済的な問題から実行しない範囲に入る。これが「実行可能な範囲」が意味することになると思うのです。実行可能な対応策として風車を止めるという選択肢も当然ありえます。しかし、この選択肢は、会社の経営を危うくするので、現実的には取りにくい選択肢になります。たしか、風車を止めることもありうると答えていたように思いますが、現実には“検討したけどできませんでした”となるでしょう。

 同じような場面は、低周波の影響について聞いた質問でもありました。低周波の影響は、入遠野地区の三大明神山によった集落で、1から最大5デシベルの影響があるとしています。しかし、ISO―7196で超低周波音を感じる最小音圧レベルの参考値を100デシベルとしており、予測値は下回っていると評価しています。

 そして、超低周波は1㎞離れればほとんど問題がなく、今回の計画で風力発電所にもっとも近い住宅が1.3㎞であることから、この麺では問題がないものと考えているとしました。

 これに対して参加者から、集落に近い風車を計画からはずすことを求める要望が出たことに、「検討する」旨の回答がありました。

 この回答もちょっと気にかかります。計画で17基を設置することにしているのは、事業の採算性を踏まえてのものであると思います。と考えれば、本当に減らせるのかという疑問が湧いてくるのです。

 そこで「17基としたのは事業の採算性を考慮したものではないのか」を聞いてみました。答えは「採算性だけでなく様々な要素を検討して決めた基数」ということでした。利益をどの程度見込んだ数字かは分かりませんが、採算性を無視した計画になっているわけはないので、わかりやすく言えば“様々な要素を含めて採算性をとった基数”なのでしょう。

 これまでの事業展開の中で、10基の計画を8基に減らした事例があるといいますが、今回の計画の場合、どこまでの対応ができるのかは気にかかるところです。

 次に、参加者の一人は事業概要のメリットの部分で、「建設期間に地元事業者を積極起用することによる地域活性化」をあげていることに、「大手企業に受注することになると思うが、その際、地元事業者を使うように、どのようにしばりをかけるのか」としたことに対しても、底が浅い表記だということが分かりました。

 「風車の規模が大きいので、施工管理がきちんとできる大手に発注することになると思うが、地元事業者を使うようにお願いしたい」とするが、「しばりはかけられない」というのです。大手は下請けとセットで入ってくる場合が多く、しばりがなくて地元を使うことになるのかな・・。

 同じくメリットとして、「地元自治体の税収増加(創業機関に亘る固定資産税)」という表記があります。これにも「税収が増えた分、地方交付税が減って、地元の財源は増えないと聴く」と質問がされ、「確かにまるまる増えるということではないが、これまでに差し引きで25%増えているという事例を聞いたことがある」と回答されました。メリットは小さいということなのですね。それでも自主財源が増えるということは良いことですけれど。

 事業の運営は、地元に独立した管理会社を設立して行うといいます。雇用の拡大が期待されますが、その数は数名程度にとどまるということです。

 また、計画地の下の下流域は土砂災害の危険区域が多数存在します。その時に、山の上を開発して木などを伐採するという。気にかかるの災害につながるような雨量があった時、表流水が増加して土砂災害につながらないのか、人命にもかかわるので気にかかることです。

 環境アセスでは、水質に関する評価項目はあるのですが、表流水増加に関する評価項目はないということで、この点についての回答はありませんでした。アセスが終わって建設段階になって、個別法との関連で対応策を検討することになるというのです。ただ、住民にとってはこの問題は、非常に気にかかるところです。事業者側は、「今後も要望があれば、説明や要望などを聞く機会をもうける」と言っていました。でも、法定の説明として、事業者側に義務付けられている説明会はアセスの段階しかないんですよね。希望としては、事業者側が説明する機会を積極的に持ってほしいですよね。

 この部分のやり取りは上遠野公民館であったことです。入遠野公民館で驚くべきことが明らかになりました。水質等を評価するときの降水量は、平や小名浜を参考にしているというのです。明らかに過小な評価です。全く降水量が違いますから。ここは評価のやり直しが必要でしょうね。

 他にも、様々なことがあるでしょうけど、とりあえず、会場でやり取りがあった部分だけでも記録にとどめておこうと思いました。

 さて、今日は本家のおばあちゃんの告別式でした。たくさんの方が葬儀に参列してくださっていました。

 告別式が終わり、納骨にでかける際に孫達が放鳩しました。93歳で他界した。その長い人生を生き抜いたことに対する祝福ということなのでしょうね。墓地の空には暑い夏の雲がかかっていました。



 本当に夏の空でした。



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