伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

2020(令和2)年度の国保税は据え置き答申

2020年05月20日 | 市政
 国民健康保険制度は、市町村単位の運営から都道府県単位の運営に向けた準備が進められており、2018(平成30)年度には会計が統合され、当面、市町村が徴収した国保税額から都道府県に納付金を支払い、医療費を賄う方式に切り替えられてきた。最終的には、国税率も都道府県で一元化することがめざされているが、少なくととも2024(令和6)年度までは一元化されることはない。

 納付金の算定にあたって、都道府県は市町村ごとの標準保険料率をあわせて算定する。
国保税は、
➀医療費を賄う「医療分」、
②後期高齢者医療に充当される「後期分」、
③介護保険に充当される「介護分」
の3つの費用をそれぞれ算定し、その合計額となる。福島県も3月に算定をしている。

 市町村は、この標準保険料率を参照しながらそれぞれの自治体の状況を踏まえて国保税を算定し、加入者に課税することになる。

 県の算定によると、いわき市が福島県の国保事業に支払う「国保事業費納付金」は77億3,938万7,721円。この費用を賄うためには、3つの費用の合計で、
所得に応じて負担する所得割額0.24%、
世帯の人数に応じて負担する均等割額で2,474円、
世帯ごとに等しく負担する平等割額で1,508円、
それぞれ引き上げる必要があると算定されていた。

 しかし、いわき市は2020(令和2)年度の国保税は「据え置く」ことを協議会に諮問をした。

 その理由を市は次のように説明する。
 国保財政のは、2019(令和1)年度の単年度収支は3億5,407万円の赤字が見込まれ、20(令和2)年度2億5,707万円の赤字、以降24(令和6)年度まで毎年の赤字が見込まれる。一方、市の国保会計が保有する財政安定化に活用する「国民健康保険基金」は、19年度末で22億6,283万円の残高を保有している。この、基金を取り崩して使用することによって、24(令和6)年度までの安定的な財政運営が可能とみられることから、今年度、20年度の国保税率を据え置くというのだ。

 もともと、国保基金は、震災後にはほぼ使い切っていたが、その後の国保税の改定等によって、国保財政は毎年20億円以上の黒字決算が生じるようになっていたものを、基金として保有することになった。これだけの黒字が続くという事は、その分、国保税の引き下げが可能という議会質問等を受けて、黒字分を市が基金として保有することになった。この基金を設置して以降、基本的に赤字の財政状況が続いており、国保税の引き下げこそできないでいるものの、引き上げをとどめる役割をしっかり発揮している。その意味では有用な基金となっていると言えるだろう。

 ただし、現状でも、国保の先行きが懸念される。国保財政の県での一本化が完成し、県で統一した国保税が課税されるようになった場合、市民にかかる国保税が引き上げとなる可能性があると、かつての市議会で答弁されている。

 本市は所得の水準に応じて負担を拡大する所得割(応能負担)に重きを置いた税率設定をしているものの、県の算定では所得に関係なく等しく負担する均等割、平等割(応益負担)に重きを置いた税率設定になっているためだ。県の負担割合で国保税が設定されることになると、所得が低い加入者が多い本市においては、これらの世帯の国保税が引き上がることになりかねない。

 負担能力に着目して応能負担に重点を置いた本市の国保税と同様となるよう、県の国保税統一準備に強く働きかけるよう求めてきたが、現状でどのような検討状況にあるのかが気にかかるところだ。


 また、国保税は据え置きになるとしても、新型コロナウイルスの対応等もあって、市民生活に厳しさが増している。昨年の台風19号等に被害に関する減免は今年9月分まで延長することや、新型コロナウイルスに対応した減免制度が諮問され協議会の同意も得ている。このほか、市議会5月臨時会では国保の被保険者のうち、新型コロナウイルスの感染等で仕事ができず収入が減少した者に対する傷病手当金の支給も制度化されている。

 加入者の状況を踏まえながら、国保税の据え置きが生活に大きな負担とならないような措置を講ずることは引き続き大切そうだ。


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