いわき市議会6月定例会は本日、提案された38議案すべてを可決し、出産時の欠席にかかわる会議規則を改定する議会案1件、農業委員の議会推薦にかかわる議案1件、議会提出の意見書3件を全会一致で可決し閉会しました。
日本共産党はこのうち、難病等の患者に対する見舞金を減額する議案第6号と、個人番号制にかかわる議案第3号のいわき市税条例改正案と議案第12号の一般会計補正予算案第2号の計3議案に反対しました。討論は高橋明子議員が行いました。
また、意見書の対応は次の通りです。
採択(可決)された意見書は、
●認知症への取り組みの充実強化に関する意見書
●核兵器のない世界に向けた法的枠組み構築への取り組みを求める意見書
●ヘイトスピーチ対策について法整備を含む強化策を求める意見書
です。
6月定例会にはこのほかに9件の意見書が提出されていましたが、国会で審議中の「安保法案」に関する意見書は創世会提出の「反対する意見書案」と日本共産党市議団提出の「慎重審議を求める意見書案」の2件がありました。「反対意見書案」は志帥会と清政会(いずれも自民党系)、公明党、つつじの会(労働組合の「連合」出身議員による会派)が反対し廃案、「慎重真偽意見書案」は志帥会、清政会、つつじの会の3会派が反対したために廃案となりました。公明党は態度保留でした。
あっ、意見書の取り扱いには説明が必要ですね。
いわき市議会では、意見書に関しては1会派でも反対があれば廃案、反対がなくて態度保留とする会派がある場合は継続審議、2回の定例会で継続審議となれば廃案とし、原則として全会派が一致した意見書だけを採択するというルールです。例外は議長会等から要請があった意見書案で、これは多数決で可否を決めることになっています。
こうしたルールのため2つの意見書は廃案になったわけですが、仮に多数決でも採択は難しかったようです。なんてことでしょう。
このほか日本共産党は「生活保護基準の引き上げを求める意見書案」を提出しましたが、創世会(民主党、社民党、無所属で構成)が賛成したものの、志帥会、清政会、つつじの会の3会派が反対したために廃案となり、公明党は態度保留でした。
日本共産党の議案に対する討論は次の通りです。議案の内容と反対理由にご理解ください。
議案に対する討論
22番、日本共産党いわき市議団の高橋明子です。
私は議案第3号、議案第6号及び議案第12号に反対する立場から討論をいたします。
まず、はじめに、議案第6号、いわき市特定疾患患者見舞金支給条例についてです。
難病患者への見舞金引き下げ・制度後退は問題
本案は、「難病の患者に対する医療等に関する法律」及び「児童福祉法の一部を改正する法律」の施行で、難病と小児慢性特定疾病患者に対する医療費助成が法定化され、合わせて対象となる疾病が拡大されたことにともない、本条例による見舞金の支給対象を同様に拡大すること、一方で、見舞金の額を2万4,000円から2万円に引き下げる内容となっております。
根治療法の確立していない病気にかかった市民からこんな訴えがあったと聞いたことがあります。
病気の症状がきつくなった時の倦怠感などで作業効率が落ちるために、さぼっていると会社側に思われて離職せざるを得なかったというのです。「この病気を抱えながら再就職もままならない、支援策を作ってほしい」と訴えられたという話でした。
慢性的な病気を抱え社会的にも苦しんでいる方が、難病指定をされたことで社会的にも認知され、また、医療費の助成対象となることはもちろん歓迎されます。合わせてこうして社会的に認知されることが、誤解による生きづらさをはじめ患者の苦しみを少しでも和らげることにつながるものであることを考えると、社会的支援としての効果は、より大きい物になると思います。
しかしこのことを受けた今回の条例改定では、市が独自施策としてすすめてきた見舞金の額を4,000円引き下げることにしており、ここには問題があると考えております。
一つには、難病等を抱える方の経済的な支援を後退させるという点です。
今回の条例改定について、いわき市腎臓病患者友の会から見舞金額の見直しをしないよう求める要望書が市長に提出されています。
この要望書の受け止めを問われた執行部は、腎臓病による人工透析患者の方々には、見舞金支給のほか、重度心身障害者医療費助成制度による所得制限の緩和、通院交通費助成事業等本市独自の事業を実施し福祉の増進を図ってきたとしながら、今回の疾病拡大に加えて今後も対象疾病の拡大が見込まれるなど、今まで以上に多くの患者に見舞金を支給することになったために条例改定が必要だと説明しております。
しかし、この説明は、難病等の患者のみなさん及び今回要望書を提出した方々の切なる願いに応えるものではないと思います。
腎臓病患者友の会が提出した要望書は、透析患者の経済状況が厳しいことを説明しながら、「私たちは過度の保護や助成を望むところではありませんが、前述の通りの経済事情にあって、当該見舞金は大きな拠りどころとなっております。」と訴えています。
経済的に厳しい状況にあるので現状を維持してほしいという、この訴えに真正面から答えていくことが必要だと思います。病気とたたかっているために発生する経済的な厳しさも含め、患者のみなさんの苦しみに寄り添っていくことが求められている時に、見舞金の支給額を削るべきではありません。デフレ脱却をめざし、物価高騰をめざすアベノミクスという経済政策で諸物価が高騰している中ではなおさらです。
二つ目の問題点は、本条例を充実させることによって本市が築き上げてきた難病等のみなさんへの支援策が後退させられ、本市の良い面を掘り崩す点です。
本条例はその目的で、見舞金の支給により特定疾患患者の福祉の増進をはかることとしております。そして見舞金条例は、その目的に沿って充実されてきたことが、市民福祉常任委員会で答弁されたと聞いております。
昭和40年代にスモン病が社会問題化する中で、難病患者の介護等の負担が大きいことから、自己負担の軽減を図り、患者に対する激励と福祉増進を図るために作られた本条例の、見舞金の額はたびたび見直され、制度発足当時の1万円から、21年前1994年・平成6年には現行の2万4,000円まで拡大されてきたと聞きました。
難病患者の根治療法が確立せず、いまなお病に苦しんでいる現状があります。さらに先にも述べた物価高があります。こうした中での見舞金の減額は、この制度がめざした目的からの後退と考えざるをえません。
難病等が国等の医療支援の対象となったり、また見舞金とは別の支援策も取られてきた。こうした難病等の患者をめぐる環境の変化は、本条例による見舞金と現行の支援額と合わせて、総合的・相乗的に効果を発揮しながら、難病等の患者を激励し、福祉増進をすすめる役割を果たしてきたと思います。今回の減額は、この役割を後退させることになるのです。
また、市民福祉常任委員会では中核市等の状況も示されたと聞きました。
その内容は、回答のあった中核市36市中14市が同様の制度をもっており、これまでに廃止あるいは廃止を検討している中核市が4市、支給対象疾病を拡大しない中核市が4市であり、6市は支給対象を拡大しますが、そのうち1市は所得制限を設け、1市は申請時の1回限りの支給となっているというものだったといいます。
この答弁から見ると本市の対応は、標準的な対応ということになるかもしれません。しかし、現行制度のままで支給対象を拡大するという6市にこそ学ぶべきと考えます。
所得制限を設けたり、1度限りの支給という内容にしていない本市の見舞金には、それらの自治体には見られない良い点があります。その良い点を今後とも生かしていくことが求められていると思います。
本市が支給対象の難病を拡大し支給額を維持した場合に、これまでの支給実績から推察すると約1560万円の新たな負担が生じると答弁されていますが、これに対する予算的な対応はいかようにもできるものと思います。
従って議案第6号は、条例改正のうち支給額を減じる部分について削除することが求められており、反対すべきものと考えます。
個人情報漏えいの危惧・マイナンバー
次に議案第12号、平成27年度一般会計補正予算第2号及び、これに関連する議案第3号、いわき市税条例の改正について討論いたします。
議案第12号には、歳出2款総務費、3項戸籍住民基本台帳費、1目戸籍住民基本台帳費に個人番号カードを交付する等の事業費が計上されています。また、議案第3号には、市民税の減免を受けようとする際の申請書に個人番号の記載を義務付けるなど、市税等に関する手続きに個人番号の記載を義務付ける内容が盛り込まれています。いずれの議案も、個人番号いわゆるマイナンバーに関する部分で問題があると考えます。
個人番号については、2月定例会でも関連する議案について反対する立場から討論がされており、その中で理由は明確にされていますが、一つには、行政がもつ個人情報の漏えいの危険性の問題です。
2月定例会以降に明らかになった事例でも、個人情報保護の危うさが、不幸にも示されていると言わざるをえません。
執行部は、個人情報の漏えい防止に関して、ソフト面では個人情報保護に関する法や条例での保護規定の強化、ハード面では、「住基システムなどの個人情報を取り扱う基幹系業務システムは、インターネットなどの外部ネットワークに接続していない閉ざされたネットワーク上で運用している」ので、個人情報は漏えいから守られるとする旨の答弁をされています。
しかし、6月1日に発覚した日本年金機構からの125万件、101万人分にも及ぶ年金情報の漏えい事件は、閉ざされたネットワーク上に保管された情報でも、漏えいがおこりうることを示しました。
報道等によると、年金機構が保有する大本のデータは、住基システムと同じくネットワークから物理的に遮断された基幹システムに保存されており、ここからのデータ流出は見つかっていないといいます。
しかし、事務処理の関係で基幹システムからファイル共有サーバーにCDロム等でデータを写しとり作業がされていたようです。このデータのうち、パスワードが設定されていなかったデータが、何者かのメールによりウイルスに感染したパソコンを通じて流出したものとされています。
ここにはシステムは閉じていても、情報流出がおこりうる現実が示されています。公平・公正で透明性の高い社会をめざす個人番号制度のもとでは、この番号を使って個人の情報をあまさずに確認できることが目指されています。政府は今後、個人番号を民間企業が持つデータも含めて活用する方向を目指しているようです。数多くつながれた端末のうち、どこか一つの端末のセキュリティーが破られれば個人情報は漏えいしかねないというリスクは残るものと思われます。
システムは悪意のある攻撃にさらされる可能性が常にあります。
ウイルスの感染の発覚等は、年金機構にとどまるものではなく、最近の報道でも、環境省の外郭団体である、中間貯蔵・環境安全事業株式会社・JESCO(ジェスコ)の内部ネットワークがウイルスに感染した疑いがあると発表されています。
さらにインターネットを開けば、公的な機関や会社等がサイバー攻撃を受けている事例は枚挙にいとまがなく、2011年には三菱重工業や石川島播磨重工業がサイバー攻撃で被害を受け、2012年にはアメリカのクレジット決済処理業者が不正アクセスにより150万件以上のカード情報が流出する事件が発生しています。
また、2013年にはヤフー日本法人のサーバーがハッキングされ、最大で2,200万件のIDが流出する事件がおきています。
民間ばかりではありません。2012年には財務省や自民党、日本音楽著作権協会がサイバー攻撃を受けています。
こうした状況を考える時に、閉ざされたネットワーク上で運営しているから大丈夫、個人情報保護の制度的仕組みを強化したから大丈夫とは言い切れないものがあります。
考えてみればこの個人番号の問題は、万が一の情報流出というリスクと個人番号を活用した場合のメリットとを天秤にかけ、どちらを選択するかと迫られている点にこそあるのではないでしょうか。
先にも述べたとおり、個人番号によって住民基本台帳上の情報に限らず、税、福祉、健康保険、年金、銀行等の預金、株式取引をはじめ、様々な情報を統括的に把握することが可能にされようとしています。活用範囲が広がれば広がる程、個人番号のもとに個人のプライバシーは丸裸になり、加えてその全ての情報が第三者に漏洩する危険性が拡大することになります。
住民にとってのメリットは、コンビニ等で住民票などの交付が受けられるということですが、この多くの住民にとってめったに享受できないメリットと個人情報が丸ごと誰かの手に渡りかねないリスクとを天秤にかけることはできないと考えます。
二つ目に、漏洩した情報の悪用の問題です。
年金機構の情報漏洩問題が公表されて以降、全国的には300件を超える不審電話の届けがあり、本市でも高齢者宅に同様の電話があったと報道されています。
なりすまし詐欺をはじめとした犯罪行為は、常に高齢者世帯などに狙いを定め、あわよくばお金をせしめようと虎視眈々と狙っています。
こうしたところに個人情報が流出すればどのような事態がおこるでしょうか。詐欺を行おうとするものに、そのターゲットを教唆することになり、またその詐欺の手口をより巧妙とすることによって、犯罪行為を誘発し拡大する役割を果たすようになることは明白です。
イギリスでは、全国民に番号をつけ、顔写真とともにデータベースに登録する制度が2006年に成立しましたが、プライバシー侵害への危険があることや巨費が浪費されるおそれがあるとした理由で2010年に廃止されました。こうした諸外国の経験にこそ学ぶことが必要だと思います。
こうした問題ある制度に自治体は手を貸すべきではなく、市独自にでもこの制度を利用しないという判断にたつべきものと考えます。従って議案第12号のマイナンバーに関わる予算は削除すべきものと考え、同案には反対すべきです。
以上討論してまいりましたが、満場のみな様のご賛同を心からお願いをして、私の討論を終わります。
日本共産党はこのうち、難病等の患者に対する見舞金を減額する議案第6号と、個人番号制にかかわる議案第3号のいわき市税条例改正案と議案第12号の一般会計補正予算案第2号の計3議案に反対しました。討論は高橋明子議員が行いました。
また、意見書の対応は次の通りです。
採択(可決)された意見書は、
●認知症への取り組みの充実強化に関する意見書
●核兵器のない世界に向けた法的枠組み構築への取り組みを求める意見書
●ヘイトスピーチ対策について法整備を含む強化策を求める意見書
です。
6月定例会にはこのほかに9件の意見書が提出されていましたが、国会で審議中の「安保法案」に関する意見書は創世会提出の「反対する意見書案」と日本共産党市議団提出の「慎重審議を求める意見書案」の2件がありました。「反対意見書案」は志帥会と清政会(いずれも自民党系)、公明党、つつじの会(労働組合の「連合」出身議員による会派)が反対し廃案、「慎重真偽意見書案」は志帥会、清政会、つつじの会の3会派が反対したために廃案となりました。公明党は態度保留でした。
あっ、意見書の取り扱いには説明が必要ですね。
いわき市議会では、意見書に関しては1会派でも反対があれば廃案、反対がなくて態度保留とする会派がある場合は継続審議、2回の定例会で継続審議となれば廃案とし、原則として全会派が一致した意見書だけを採択するというルールです。例外は議長会等から要請があった意見書案で、これは多数決で可否を決めることになっています。
こうしたルールのため2つの意見書は廃案になったわけですが、仮に多数決でも採択は難しかったようです。なんてことでしょう。
このほか日本共産党は「生活保護基準の引き上げを求める意見書案」を提出しましたが、創世会(民主党、社民党、無所属で構成)が賛成したものの、志帥会、清政会、つつじの会の3会派が反対したために廃案となり、公明党は態度保留でした。
日本共産党の議案に対する討論は次の通りです。議案の内容と反対理由にご理解ください。
議案に対する討論
22番、日本共産党いわき市議団の高橋明子です。
私は議案第3号、議案第6号及び議案第12号に反対する立場から討論をいたします。
まず、はじめに、議案第6号、いわき市特定疾患患者見舞金支給条例についてです。
難病患者への見舞金引き下げ・制度後退は問題
本案は、「難病の患者に対する医療等に関する法律」及び「児童福祉法の一部を改正する法律」の施行で、難病と小児慢性特定疾病患者に対する医療費助成が法定化され、合わせて対象となる疾病が拡大されたことにともない、本条例による見舞金の支給対象を同様に拡大すること、一方で、見舞金の額を2万4,000円から2万円に引き下げる内容となっております。
根治療法の確立していない病気にかかった市民からこんな訴えがあったと聞いたことがあります。
病気の症状がきつくなった時の倦怠感などで作業効率が落ちるために、さぼっていると会社側に思われて離職せざるを得なかったというのです。「この病気を抱えながら再就職もままならない、支援策を作ってほしい」と訴えられたという話でした。
慢性的な病気を抱え社会的にも苦しんでいる方が、難病指定をされたことで社会的にも認知され、また、医療費の助成対象となることはもちろん歓迎されます。合わせてこうして社会的に認知されることが、誤解による生きづらさをはじめ患者の苦しみを少しでも和らげることにつながるものであることを考えると、社会的支援としての効果は、より大きい物になると思います。
しかしこのことを受けた今回の条例改定では、市が独自施策としてすすめてきた見舞金の額を4,000円引き下げることにしており、ここには問題があると考えております。
一つには、難病等を抱える方の経済的な支援を後退させるという点です。
今回の条例改定について、いわき市腎臓病患者友の会から見舞金額の見直しをしないよう求める要望書が市長に提出されています。
この要望書の受け止めを問われた執行部は、腎臓病による人工透析患者の方々には、見舞金支給のほか、重度心身障害者医療費助成制度による所得制限の緩和、通院交通費助成事業等本市独自の事業を実施し福祉の増進を図ってきたとしながら、今回の疾病拡大に加えて今後も対象疾病の拡大が見込まれるなど、今まで以上に多くの患者に見舞金を支給することになったために条例改定が必要だと説明しております。
しかし、この説明は、難病等の患者のみなさん及び今回要望書を提出した方々の切なる願いに応えるものではないと思います。
腎臓病患者友の会が提出した要望書は、透析患者の経済状況が厳しいことを説明しながら、「私たちは過度の保護や助成を望むところではありませんが、前述の通りの経済事情にあって、当該見舞金は大きな拠りどころとなっております。」と訴えています。
経済的に厳しい状況にあるので現状を維持してほしいという、この訴えに真正面から答えていくことが必要だと思います。病気とたたかっているために発生する経済的な厳しさも含め、患者のみなさんの苦しみに寄り添っていくことが求められている時に、見舞金の支給額を削るべきではありません。デフレ脱却をめざし、物価高騰をめざすアベノミクスという経済政策で諸物価が高騰している中ではなおさらです。
二つ目の問題点は、本条例を充実させることによって本市が築き上げてきた難病等のみなさんへの支援策が後退させられ、本市の良い面を掘り崩す点です。
本条例はその目的で、見舞金の支給により特定疾患患者の福祉の増進をはかることとしております。そして見舞金条例は、その目的に沿って充実されてきたことが、市民福祉常任委員会で答弁されたと聞いております。
昭和40年代にスモン病が社会問題化する中で、難病患者の介護等の負担が大きいことから、自己負担の軽減を図り、患者に対する激励と福祉増進を図るために作られた本条例の、見舞金の額はたびたび見直され、制度発足当時の1万円から、21年前1994年・平成6年には現行の2万4,000円まで拡大されてきたと聞きました。
難病患者の根治療法が確立せず、いまなお病に苦しんでいる現状があります。さらに先にも述べた物価高があります。こうした中での見舞金の減額は、この制度がめざした目的からの後退と考えざるをえません。
難病等が国等の医療支援の対象となったり、また見舞金とは別の支援策も取られてきた。こうした難病等の患者をめぐる環境の変化は、本条例による見舞金と現行の支援額と合わせて、総合的・相乗的に効果を発揮しながら、難病等の患者を激励し、福祉増進をすすめる役割を果たしてきたと思います。今回の減額は、この役割を後退させることになるのです。
また、市民福祉常任委員会では中核市等の状況も示されたと聞きました。
その内容は、回答のあった中核市36市中14市が同様の制度をもっており、これまでに廃止あるいは廃止を検討している中核市が4市、支給対象疾病を拡大しない中核市が4市であり、6市は支給対象を拡大しますが、そのうち1市は所得制限を設け、1市は申請時の1回限りの支給となっているというものだったといいます。
この答弁から見ると本市の対応は、標準的な対応ということになるかもしれません。しかし、現行制度のままで支給対象を拡大するという6市にこそ学ぶべきと考えます。
所得制限を設けたり、1度限りの支給という内容にしていない本市の見舞金には、それらの自治体には見られない良い点があります。その良い点を今後とも生かしていくことが求められていると思います。
本市が支給対象の難病を拡大し支給額を維持した場合に、これまでの支給実績から推察すると約1560万円の新たな負担が生じると答弁されていますが、これに対する予算的な対応はいかようにもできるものと思います。
従って議案第6号は、条例改正のうち支給額を減じる部分について削除することが求められており、反対すべきものと考えます。
個人情報漏えいの危惧・マイナンバー
次に議案第12号、平成27年度一般会計補正予算第2号及び、これに関連する議案第3号、いわき市税条例の改正について討論いたします。
議案第12号には、歳出2款総務費、3項戸籍住民基本台帳費、1目戸籍住民基本台帳費に個人番号カードを交付する等の事業費が計上されています。また、議案第3号には、市民税の減免を受けようとする際の申請書に個人番号の記載を義務付けるなど、市税等に関する手続きに個人番号の記載を義務付ける内容が盛り込まれています。いずれの議案も、個人番号いわゆるマイナンバーに関する部分で問題があると考えます。
個人番号については、2月定例会でも関連する議案について反対する立場から討論がされており、その中で理由は明確にされていますが、一つには、行政がもつ個人情報の漏えいの危険性の問題です。
2月定例会以降に明らかになった事例でも、個人情報保護の危うさが、不幸にも示されていると言わざるをえません。
執行部は、個人情報の漏えい防止に関して、ソフト面では個人情報保護に関する法や条例での保護規定の強化、ハード面では、「住基システムなどの個人情報を取り扱う基幹系業務システムは、インターネットなどの外部ネットワークに接続していない閉ざされたネットワーク上で運用している」ので、個人情報は漏えいから守られるとする旨の答弁をされています。
しかし、6月1日に発覚した日本年金機構からの125万件、101万人分にも及ぶ年金情報の漏えい事件は、閉ざされたネットワーク上に保管された情報でも、漏えいがおこりうることを示しました。
報道等によると、年金機構が保有する大本のデータは、住基システムと同じくネットワークから物理的に遮断された基幹システムに保存されており、ここからのデータ流出は見つかっていないといいます。
しかし、事務処理の関係で基幹システムからファイル共有サーバーにCDロム等でデータを写しとり作業がされていたようです。このデータのうち、パスワードが設定されていなかったデータが、何者かのメールによりウイルスに感染したパソコンを通じて流出したものとされています。
ここにはシステムは閉じていても、情報流出がおこりうる現実が示されています。公平・公正で透明性の高い社会をめざす個人番号制度のもとでは、この番号を使って個人の情報をあまさずに確認できることが目指されています。政府は今後、個人番号を民間企業が持つデータも含めて活用する方向を目指しているようです。数多くつながれた端末のうち、どこか一つの端末のセキュリティーが破られれば個人情報は漏えいしかねないというリスクは残るものと思われます。
システムは悪意のある攻撃にさらされる可能性が常にあります。
ウイルスの感染の発覚等は、年金機構にとどまるものではなく、最近の報道でも、環境省の外郭団体である、中間貯蔵・環境安全事業株式会社・JESCO(ジェスコ)の内部ネットワークがウイルスに感染した疑いがあると発表されています。
さらにインターネットを開けば、公的な機関や会社等がサイバー攻撃を受けている事例は枚挙にいとまがなく、2011年には三菱重工業や石川島播磨重工業がサイバー攻撃で被害を受け、2012年にはアメリカのクレジット決済処理業者が不正アクセスにより150万件以上のカード情報が流出する事件が発生しています。
また、2013年にはヤフー日本法人のサーバーがハッキングされ、最大で2,200万件のIDが流出する事件がおきています。
民間ばかりではありません。2012年には財務省や自民党、日本音楽著作権協会がサイバー攻撃を受けています。
こうした状況を考える時に、閉ざされたネットワーク上で運営しているから大丈夫、個人情報保護の制度的仕組みを強化したから大丈夫とは言い切れないものがあります。
考えてみればこの個人番号の問題は、万が一の情報流出というリスクと個人番号を活用した場合のメリットとを天秤にかけ、どちらを選択するかと迫られている点にこそあるのではないでしょうか。
先にも述べたとおり、個人番号によって住民基本台帳上の情報に限らず、税、福祉、健康保険、年金、銀行等の預金、株式取引をはじめ、様々な情報を統括的に把握することが可能にされようとしています。活用範囲が広がれば広がる程、個人番号のもとに個人のプライバシーは丸裸になり、加えてその全ての情報が第三者に漏洩する危険性が拡大することになります。
住民にとってのメリットは、コンビニ等で住民票などの交付が受けられるということですが、この多くの住民にとってめったに享受できないメリットと個人情報が丸ごと誰かの手に渡りかねないリスクとを天秤にかけることはできないと考えます。
二つ目に、漏洩した情報の悪用の問題です。
年金機構の情報漏洩問題が公表されて以降、全国的には300件を超える不審電話の届けがあり、本市でも高齢者宅に同様の電話があったと報道されています。
なりすまし詐欺をはじめとした犯罪行為は、常に高齢者世帯などに狙いを定め、あわよくばお金をせしめようと虎視眈々と狙っています。
こうしたところに個人情報が流出すればどのような事態がおこるでしょうか。詐欺を行おうとするものに、そのターゲットを教唆することになり、またその詐欺の手口をより巧妙とすることによって、犯罪行為を誘発し拡大する役割を果たすようになることは明白です。
イギリスでは、全国民に番号をつけ、顔写真とともにデータベースに登録する制度が2006年に成立しましたが、プライバシー侵害への危険があることや巨費が浪費されるおそれがあるとした理由で2010年に廃止されました。こうした諸外国の経験にこそ学ぶことが必要だと思います。
こうした問題ある制度に自治体は手を貸すべきではなく、市独自にでもこの制度を利用しないという判断にたつべきものと考えます。従って議案第12号のマイナンバーに関わる予算は削除すべきものと考え、同案には反対すべきです。
以上討論してまいりましたが、満場のみな様のご賛同を心からお願いをして、私の討論を終わります。
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