伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

年頭所感 「心の復興」に思う

2015年01月06日 | 市政
 6日夕は恒例の新春市民交歓会がいわやで行われました。今年は昨年の知事選で初当選した内堀知事やはじめて双葉郡の町村長が招かれ参加しました。そのためじか、主催者や来賓のあいさつなど開会セレモニーに約75分かかり、例年より長い会になった感がありました。


初めて新春交歓会に招かれあいさつした双葉郡の町村長

 これに先立ち清水敏雄いわき市長は年頭所感を公表しました。一読して心に引っかかったのが「心の復興」という言葉でした。所感の結びにあります。

 「これからは、復興事業を着実に仕上げていくことに加え、文化・芸術・スポーツなどによる交流やふれあいの機会の創出を通し、市民一人ひとりにさらなる勇気や元気を宿すような「心の復興」にも意を用い」

 「心の復興」といったことがどのように図られるのか、所感から読み解いてみたいと思います。

 清水敏男市長が発表した年頭所感の表題は「『明るく元気ないわき市』の創造を目指して~ふるさといわきの力強い復興と再生」と題されています。

 2014年はイオンモールと小名浜港背後地の開発にかかる「基本協定」を締結したり、企業誘致がすすんだり、いわき市を舞台にした映画「超高速!参勤交代」がヒットするなど、「明るい話題や市民のみな様に勇気と希望を与える様々な出来事がありました」と振り返りながら、新年の市政運営の展望を示しました。

 新年の取り組みの特徴は二つです。
 一つは、2015(平成27)年度が市復興ビジョンの復興期の最終年度にあたるため、復興事業計画に位置付けた事業の着実な推進と、市長就任時に掲げた医療、職・雇用、住居のいわゆる「医」「職」「住」の課題解消に取り組むこと。
 もう一つが、2020(平成32)年度までの「新・いわき市総合計画後期基本計画」の見直しに着手するなど「将来に向けたまちづくりの推進」を通して、明るく元気ないわき市の礎を築く
――この2つをともに進めていくとしているのです。

 具体的な取り組みは次の3つの柱でまとめています。
①ふるさといわきの力強い復興と再生の実現
②衣・食・住の課題解消に向けた対応
③将来に向けたまちづくりの推進
そのもとでの事業の割り振りの詳細はこちら(いわき市HPの市長記者会見のページ⇒http://www.city.iwaki.fukushima.jp/shicho/017337.html)にアップされていますので参照していただきたいと思います。

 ざっと読んで残る印象は、多くの事業は前市長時代に着手した事業でその継続性が図られたものという点です。国が位置づけた復興集中期間の最終年度ということになりますから、この仕上げに向けて本格的に取り組みがすすめられることになります。

 また、所感に「浜通りの復興に向けた『ゲートウェイ』」という表現がありました。「ゲートウェイ」は、違う方式で動いているコンピュータネットワーク間の接続点のことですが、ここでは帰還困難区域などをかかえる双葉郡の復興と原発事故収束の接続点という意味合いで使われているのでしょう。年頭所管にもとづきあいさつした市民交換会で清水市長は、「日本原子力研究開発機構福島研究開発部門」の事務機能がいわき市に移転してくることが、きょう決まったと公表しました。「ゲートウェイ」にふさわしい動きがあったということなんですね。

 同時に清水カラーも打ち出そうとしているように見えるのが、子育て・教育の取り組みです。
「国の制度改革を踏まえ、教育委員会とこれまで以上に連携をはかり」(総合教育会議のことですね。首長が主催する首長と教育委員による会議の場ですが、国会審議が反映した国の通知で現在は限定的な役割となっているものの、将来的に行政の教育への介入の仕組みにならないか懸念される面を持っているのですよね・・)ながら教育大綱の策定や全小学校への学校図書館司書の配置など、教育・子育てに一定のボリュームを持ってふれている感があります。

 この所感にもられた事業にはイオンモールの再開発など市民から歓迎・異論の両面が聞かれるものもありますが、基本的に着実な推進をはかることが市民の「心の復興」のベースを作り出すことになることは間違いありません。

 一方、「心の復興」を考えるときには、"心の喪失"をもたらした「地震・津波被害」ととともに「原発事故被害」にどう対応しているかを見ることが必要だと思います。

 まず「地震・津波被害」への対応は、津波被災などによる住宅なくした被災者に対する災害公営住宅の建設や地域の復興に関する事業に着手、またいざの際の医療を支える体制を作り、雇用創出に力を尽くすなど、所管に盛られた事業全体の推進を図ることですすみます。

 一方、問題になるのが「原発事故被害」への対応です。一筋縄ではいかない内容をもっていると思います。大地を汚染した放射性物質の影響は解明されつくしたものとは言えず、専門家でも統一した見解を持ち得ないことから、放射線の影響には漠然としたものも含めて不安を持つ方もいらっしゃるのが実情です。

 こうしたことから私も勉強しながら、またアドバイスをいただきながらではありますが、測定や検査体制の充実と汚染マップづくりと公表、小中学校をはじめとした除染の実施、損害賠償、また放射性物質の影響などに関する知識の普及、さらに県内原発廃炉の市としての意思表明や日本のエネルギーから原発をなくすことなど、原発事故にかかわる問題を質問で取り上げてきました。

 実施の方法やスピードに問題はありますが、現実にそれらの取り組みはすすめられてきました。そして今回の所感では原発事故に直接かかわる課題として次のことを盛り込みました。
 一つは、福島第二原子力発電所廃炉と第一原発の安全対策汚染水対策の実施と市民に対する説明責任を強くもとめていくこと。
 二つに、広域避難計画の策定や原子力防護措置や避難手法などの手引きの作成・配布。
 三つに、住宅除染の着実な推進と放射線医学に関する調査研究機関の本市への誘致に向けた取り組み。

 もちろんこれまでに整えてきた放射性物質の検査体制の維持などが前提になっての、新規も含めた事業の例示だとは思います。しかし、原発事故後の「心の復興」には少しもの足りない印象を覚えます。

 原発事故直後、このいわき市からも約7,500人もの市民が自主避難をする事態に至りました。現在では自主避難者も半減しておりますが、いまだ帰りたくても帰れない方もいらっしゃるでしょう。また、いわき市の市民にもまだまだ様々な不安を持ちながら、その気持を押し殺して生活している方々のお話をいまだに聞く状況があります。

 そうしたことを考えれば、これまでの原発事故後の「心の復興」のための取り組みをさらに強化していくことが必要となります。

 何が必要なのか考えてみると、東電や国が原発事故を人災と認めて謝罪をすることが一つだと思います。

 これまで東電の副社長から「個人的には人災だと思う」という発言を聞いたことがありますが、東電として、あるいは国として公式に人災を認めた謝罪を聞いたことはありません。この謝罪の立ち位置の違いが、その後の原発事故とその対応の違い生み出すことになると思いますので、住民に顔を向けた事故対応で安心感を作り出すためにも欠かせない課題ということになると思います。所感にある事故対応などの説明責任を求めるだけでは足りないのではないでしょうか。

 二つ目に、現在実施をしている検査などの精度を全体として高めると同時に情報開示を広く行うことでしょう。いま実施されている検査には国のスクリーニング法にきちんと基づいていないなどの批判が加えられる場合もあり、こうした批判を招かない測定方法を取り入れてデータの精度を高めることが安心感を高めることにもつながります。

 いまからなの・・の感もありますが、昨年11月定例会には、地域の方々が自主的に取り組んでいる携帯型の積算線量計を利用して被ばくの状況を掌握し専門的見地からその影響を理解するという取り組みに対し、集落全体で大規模に取り組むことができるようにする支援策を、モデル事業としてすすめることになりました。まず一つの地区で行われますが、今後実施を考えているのは市内でも比較的線量が高い地域としています。対象を広げていくことも必要だと思います。

 そして三つ目に、放射線について「知る」ということでしょう。所管は「原子力災害の防護措置や避難手法などの必要な事項に関する手引の作成と配布」を新規事業としてあげています。その内容がどのようなものになるかは分かりませんが、漠然としたものも含めて不安を押し殺して生活して実態があると考えると、放射性物質そのものや放射線の影響などについて考える基礎となる知識を身に付けることも必要になのだろうな、と思います。

 そんな心配はもうなくなったという考え方もあるかもしれませんが、原発事故への不安は口に出しにくい現状もあるようですので、無駄と思えても、これに徹底して取り組むことが市民の安心感を増すことになりますし、ひいては風評被害というものの対抗措置になるのかもしれないと思います。

 「心の復興」。とても大切な課題だと思いますので、その一助になるように活動しなければと思います。


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