伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

天皇の国民への励ましに応える政治を安倍政権はすすめるべきだと思う

2015年12月03日 | 市政
 いわき市議会12月定例会が本日開会しました。

 市議会は午前10時に始まりました。いわき市議会の場合、初日は市長をはじめ執行部からの提案理由の説明を受けて本会議を閉じ、その後、各会派から提出された意見書案を意見書検討委員会で確認をし、初日の日程は全部終了します。今日も同様の日程でした。

 本会議で市長は、議案の説明に、この間の動報告も折り込みます。この中に、今年10月23日に行われた新嘗祭献穀献納式に、地元市長という立場で献穀者の市農業委員会会長ご夫妻と、皇居に参内したという内容がありました。

 いわき産米の献納は、震災前の18年以来のものだということです。天皇皇后から震災被害を心配する「暖かいお言葉」をいただき、復興への思いをあらたにしたとしながら、次のように発言しました。

 「こうした明るい話題を通じて、本市の農業者の方々にとりましても大きな力をいただことができたものと考えており、風評の早期払拭・再生を図ってまいりたい」

 戦争と平和の問題に関わり今年天皇が発した言葉をいくつか新聞記事で読みましたが、安倍首相の言葉よりはるかに当たり前の、まともなことを言っていると感じることがありました。

 例えば戦没者慰霊祭では次のように発言しています。

 「さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。」

 戦争を体験した天皇だからこそ、日本国憲法の立場をしっかりと堅持している。そんな思いを持ったことを記憶しています。

 この天皇の存在をめぐってこんな体験があります。

 ずいぶん前ですが、右翼と名乗る青年と電話で話しました。

 彼は、日本共産党が、日本とアメリカの関係をどう考えているのか、革命ということをどう考えているのか、などとたずねてきました。

 アメリカの言いなりになる日本という現在の関係を変えなければならないことや、社会は選挙という民主的手段で変えていく考えであることなどを説明すると、彼の考えもほぼ一致するというのです。

 最後にこう聞いてきました。

 「あとひとつある。天皇についてはどう考えているのか」

 象徴として一般の国民と区別される存在である天皇は、「天は人の上に人を作らず」の人類が到達してきた民主主義のあり方から考えれば、少し外れた存在なのだと思います。

 一方で日本共産党は日本国憲法を擁護する立場に立っています。その立場に立つならば、自ずと答えは決まっています。憲法にもられた象徴天皇制についても擁護する立場です。

 そこで、だいたいこんなことを答えたと思います。

 「共産党は日本国憲法を守れと言っているので、その中に規定される象徴天皇制も守るという立場です。いま、私たちが天皇制について問題視しているのは、天皇を政治利用しようとする動きであって、憲法に描かれた天皇が行うことが出来る行為を厳格に守ることが必要だと思います。この天皇制を将来どうするかは、国民的に合意できる内容で決めれば良いと考えています」

 その青年は、これで日本共産党に対して対抗する内容は消滅してしまったようでした。「来週、代々木(共産党中央委員会)にデモ(街宣車による威嚇行動)をかけることになっているのだが、行っていいのだろうか」と問いかけてきました。私が答えを出すわけにはいきませんので、よく考えて結論を出してください、と話して電話を終わりました。

 従って天皇を政治利用することは、絶対にしてはなりませんが、ただ天皇の言葉が人々を励ましているとすれば、そのこと自身は大切な役割を果たしていることになると思います。

 実りを祝う新嘗祭に行ったいわき市の一行に、被災地を案じる言葉をかけて励ましてくれた。それはとりも直さず、農業にも精を出していきましょうという励ましだと思います。

 こうして天皇が人々を励ましている時に、その人々に冷水を浴びせているのが今の政府です。

 政府が10月5日に大筋合意した環太平洋連携協定いわゆるTPPがそれです。国民との約束を破って、農産物や加工品等の輸入枠拡大や関税の撤廃を約束しています。

 国会決議で「引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とする」としてきた麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源の重要5項目では、関税の撤廃こそなかったものの、たとえばコメは、アメリカとオーストラリアに最終的に7.84万トンの特別の輸入枠を提供し、麦や甘味資源もTPP輸入枠を設け、牛肉は現在38.5%の関税を16年目以降は9%になるまで大幅に下げ、輸入急増の際のセーフガードも4年間発動が無ければ廃止するなど、輸入枠を大幅に増やし、関税を引き下げる内容となっています。

 安倍政権は関税撤廃がなかったことから、「国民との約束は守られた」といっていますが、国民の受け止めはこれとは正反対です。

 さらに重要5項目以外の合意内容をみても、小豆、落花生、コンニャクなどの畑作物、リンゴ、サクランボ、ブドウなどの果実、鶏卵・鶏肉などの畜産品、各種合板や建築用木工品などの林産物、ノリ、コンブ、アジ、サバ、ブリなどの水産物など多岐にわたる農林水産品834品目の半分以上の関税を、即時にあるいは一定の期間で撤廃するという内容で、関係者に驚きの声も聞きます。

 こうしたTPPで、輸入枠の拡大や関税の撤廃引き下げを図りながら、政府は、総合的なTPP関連政策大綱を決定し、2015年度で農林水産関連の補正予算総額を3,000億円台なかばにする検討に入ったとされています。そんなことをしても関係者は不安をなくすことはできません。今後の農業経営などに不安を募らせている状況です。

 せっかく天皇が人々を励ましているのだから、今の政府も人々を励ましたら良い。そこでやるべきことは、公約を守れずに大筋合意したTPPについて、その全容を明らかにするとともに、TPPに参加しないために、協定書の作成作業から撤退し、調印を中止することだと思います。

 これこそ天皇の励ましに応える政府の姿勢だよ、そんなことを思いながら報告を聞いていました。

 さあ明日から3日間は、定例会は議案調査のため休会です。


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