上方落語の世界、弟子入りすると真っ先に覚える噺が、「東の旅」だという。
江戸前の落語と違って、高座には見台と呼ばれる小机が設けられ、演者が持つ張扇で拍子を取りながら喋るのだが、
トッテチテタ トッテチッテッタ…このテンポというか、間が絶妙で聞き惚れてしまう。
さて、例によりまして喜六、清八といぅ両名の大阪の若いもん、だいぶ時候もよぉなったんで「ひとつお伊勢参りでもしょやないか」といぅえぇ加減な連中がありましたもんで「でも」付きのお伊勢参りでございます。友達に送られまして安堂寺橋をば東へ東へとってまいるのでございます。
これが、「東の旅」の発端。
で、伊勢と関わり深い志摩育ちのぼくが、逆に、「西への旅」として企んでいるのだが、気候もよろしくなった今の時期、絶好のチャンスではあるまいか。
ただし、噺と違い、ずっと歩きではチト辛い。無論ウォーキングを勧められている体型だから、それでもいいのだが…、業務に差支えては困ってしまう。県境を三つほど越る訳だから。3、4日の行程なら許してもらえるのではないかしら。
そこで、自転車を思いついた。志摩から伊勢、伊勢から大和とずっと登坂ばかりだが、挑戦する値打ちはありそうだ。
この夏、夜行性だったが、ずっと歩くようにしてきた。足が痛むときもあったが、ペダルを踏むのはずっと楽と前向きに考え、画策中。実はこのあたりの過程が楽しい。ずっと計画中なら安上りの暇つぶしに違いない。
そうだ、やはり旅に出よう。