年賀状の時期になってきた。来年は巳年である。
ヘビ嫌だなぁ
と、いう人は多いはずだ。12年前、年賀状対策って大げさな物言いだが、ぼくや教室はどう凌いだか。
いろいろと思い出す。12年前は、2001年、21世紀が始まった年だ。だから、賀詞は定番の「きっといい年!」を止め、「きっといい世紀!」に変えてみた。といったように、新しい世紀の始まりらしいアイデアを盛り込んでみた。ふだんなら書店で「年賀状素材集」を求め、適当に見繕うのだが…。
今でもそうかも知れないが、定番が楽、レールが3本あったら3路線といった、固定観念に固まった、A型気質の、つまらない男だった、プレミアムを機に変わりつつあったものの。
芸風を変えたい。(自分ヲ変エタイトイウ潜在意識)
の決意めいた兆しが芽生えた。いかにも気分屋だが、世紀の変わり目がそうさせたと思う。
年賀状の話に戻そう。問題は、干支の「巳」だ。蛇、嫌い。ヘビ苦手である。
直截的な表現は避けたい、というより無理、できない。でも、富士山にご来光といったありきたりなのはなんだかなぁ、である。
修辞法でいう、直喩から暗喩へか。言い換え、置き換えができたら、さらに、象徴するもの何かだ。その、何かに苦しんだ。
そんな折のこと、触媒となる女神が登場する。教室に年賀状のネタ探しをしようと。姪っこがひょっこり顔を出した。今は高校の美術講師をしているが、その頃はまだ陶芸家かの卵で、電車男に出てくる「エルメス」のような女性だ(直喩)。
その頃、教室ではペイント・ソフトはMicrosoftのPhotoDrawを使っていたように思う。
PhotoDrawは、Microsoft社のドロー系ソフトで、フォトレタッチからWEB素材の作成までこなしていた。いわば、レイヤー機能がないPhotoshopといったところ(だから、消えた?)。PhotoDrawのいいところは、ペン先がいろいろ選べることだ。クレヨンから筆風と多彩なものだ。Adobe Photoshopが主流の今から考えるとなんとプリミティブな時代だったことか。
姪はサラサラとマウスを走らせると、無造作に何本かの線を引いた。ぼくには線に見えたが、その線を極端に太くすると、でたらめな線の塊りはハートに変わった。
アーティストはどっか違う。こともなげだ。
これハートね。いくつも描いて、輪郭をアートブラシにして…、塗りつぶしをグラデーションで仕上げてぇとぉ。
チョイナチョイナと描きなぐった、そのときの作品がこれだった。
頭をガツンと殴られた感じ。大小異なるハートをスネークに見せる。色彩までも温かい色でとても蛇に見れない。でも、そんな感じであるカモ。
瞬間、光がさした。そのとき、ぼくばかりか、教室だって成長したといえば大げさかだろうか。そう思いたがる自分がいる。姪のおかげである。
12年の歳月が流れてまた巳年が来る。あくまで主観だが、蛇はリアルに遠慮したい。でも、表現者であるぼくたちは避けて通れない。可愛く見せるのもありだし、アート的に凝るのもまた一興。来年の年賀状作りには、まだまだ時間あるだろうが、hyperclubは今年も年賀状教室を設けてあなたをお待ちしています。