アニタ・エクバーグ

甘い生活 価格：￥ 3,990（税込） 発売日：2001-06-28

　先月のこと。ローマの観光名所「トレビの泉」に何者かが染料を投げ込んで「泉」を真っ赤に染めてしまったという事件があった。

　折りしもぼくの存知よりが2組イタリアを旅行中で、不謹慎ながら、

「滅多にない事態に遭遇されるなんて何て幸運な方々だろう」

と、羨んだのは確かだ。これを「千載一遇」と言わずして何としよう？　真っ赤かな水面を背景に写真に納まっていれば一生の思い出にきっとなっただろう。もちろんローマ、ベネチア、フィレンツェと巡ることができたらもうそれだけで最高なのだからさらに花を添えることになる。

「きれいに清掃された直後のトレビの泉を見ることができました」

　残念（？）なことにどなたもそうだったようで名跡としてオーソドックスな姿をご覧になったようだ。

　その後、不埒なぼくに罰が当たったのだろうか、フェリーニの映画「甘い生活」で泉に飛び込むという奔放なハリウッドの女優を演じておられた女優さんの名前をすっかり忘れてしまったのだ。

「誰やったっけ？」

ずっとずっと謎が残った。

　ボケを認めたくない自分がいて何ものにも頼らず独力で思い出そうと意地になった。もちろん顔は浮かんでいるのに名前府だけが出て来ないもどかしさは何とも言えない。

　秋の日の陽だまりを自転車漕いでいてふと思い出したから不思議だ。

「アニタ・エクバーグ！」

　難解なフェリーニの映画なんぞチンプンカンだったから、銀幕の彼女を食い入るように見つめ続けた少年の日。昔の女優って夢のように綺麗だった。