今はママ業に専念してるM嬢のOL時代のこと。夜明けとともに家を出て、ひとしきりサーフィンを楽しんで、それから伊勢まで出勤していると聞いて驚いたことがある。
びっくりしたのは、およそスポーツとは縁がない深窓の令嬢と思い込んでいたから…、ばかりではない。町には隠れたアスリートたちがゴロゴロしていて、嬉々として楽しみ、黙々と打ち込んでいるという知られざる事実にである。
確かに、海辺に育ち、子どもの頃から泳ぎは達者な人が多い。それに、サーフィンで有名なスポットにも恵まれている。よほどいい指導者がいるのだと思う。
これだけ海を身近に感じる環境の中で、競泳で、しかも五輪に出場できるほどの有力な、地元出身の選手というのは聞いたことがない。競泳選手はプールが作るのかも知れない。それに引き換えサーフィンだが、都会から来る人のスポーツとして位置づけられていた初期からみると、いつの間にか地元の青年たちを巻き込み、虜にし、若者のスポーツとして高い人気を得ている。競技の魅力もさることながら、その面白さを伝える人材が豊かだったのではなかろうか。
我が家でも、夜勤明けをものともせず、いそいそとボードを車に運ぶ長男の姿を見受けるし、次男だってショッチュウ携帯で波の高さを聞いている。付いてこうとするぼくに返す、言い草が気に入らない。
「父さんは年齢的に無理やから、無茶せんと家に居りない!」
で、もっぱらネットサーフィンでモモ・ムネの女性にうつつを抜かすことになる。
さて、都会育ちの青年は考えた。
「往復の時間と労力がもったいない。毎日どころか、毎朝毎晩、波乗りができる方法はないものか」
彼が考え抜いた究極の選択は、
「地元に住み、地元に就職する」
であった。そして、お嫁にしたいと願う彼女を説得した。かくして、頭にコンテンツのいっぱい詰まった彼は、週に一度、ぼくの隣でEXCELに励んでいる訳だ。寡黙、真面目で、ひたむきな好青年は何かとぼくに影響を与えてくれる。その彼がブログを発信した。
サーフィンというキーワードだけではくくれない、豊かな男の日常だ。