通学の時間が惜しいと娘が親戚の家に居候になって久しい。その娘からケンタッキー・フライドチキンを託ったと末っ子がやって来た。全部食ってもよいと言う。今日はじゃんけんをしなくてもよいらしい。我が家は全員ケンタッキーに眼がないので、いつもなら喧々諤々年齡も忘れ奪い合いが始まるところなのだが、ハテ? 4個目を食い終わったところで張り合いがないことに気づく。いつもと勝手が違うのだ。と言っても、5個目に手を伸ばすのだが。
夕刻、長男が車を貸せという。返した後妙にニヤニヤしている。末っ子とバッティングセンターで汗を流そうと出かけた。コインに替えようとするとさえぎられる。どうやら息子が用意してくれているらしい。これも顔が笑っている。
思い切りバットを振るのだが今日は口の方が達者なようだ。せがれとのかけ合い漫才。二人ともほめ殺しに長けている。爽快な、でも息切れを抑えながら家路にたどると、息子が言った。
「ガソリンある?」
確かガス欠に近い状態のはず。すかざずインジケーターを確認すると満タンになっているではないか。
「父の日、ありがとう」
そうか、父の日かぁ。それにしても粋な計らいである。ぼくの望むものを適確につかみ、さり気にもてなしてくれている。べとつかない思いやりに子らの成長を見つけ、ひたすら嬉しくなる。成長どころか、父を凌駕してしていると言えば親馬鹿だろうか。いたらぬ父だからこそ子どもは子どもなりに育つてくれる。家で食事をこしらえてくれている家人に感謝した。
ブルーグラスに限らずカントリーミュージック系のアーティストたちは家族を大切にする。その様を臆面もなく表現する。その点、実にプリミティブでもあり、ナイーブだ。国民性の違いだろうか。日本人なら照れるか、素知らぬフリをしたがるだろう。しかし、一連の若貴騒動を見ていると、ことのほか大切なことだと気づく。リッキー・スキャッグスのFamily & Friendsを聴きながら
「おおきに、おおきんな」
とつぶやいている。言葉に出せない分まだまだか。
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