阿児町神明在住のアマチュア・カメラマン、中村愛之さんが、写真集「志摩の猫」を自費出版された。この5年ほど志摩半島各地を巡って撮り貯めたモノクロ写真の集大成だ。
伊勢志摩の風土に根ざして強(したた)かに活きる猫たちは、もちろん氏のライフワークたるテーマだが、志摩半島の風景の中に見事に活写されている。
それにしても、猫たちの小憎らしいまでの傍若無人さよ。氏が撮影する猫たちは、変幻自在、融通無碍、縦横無尽…という表現がぴったりで、可愛らしさはいささか影を潜めている。愛猫家たちが求める写真集とはあきらかに毛色が違う点だ。しかし、漁師さん、お百姓さんたちと絶妙に共生している彼らの姿は、どことなく愛嬌があり、なぜか憎めない。猫を当然のように受け入れた生活が生み出すゆとりなのか。人々は志摩の自然がもたらす恵みを猫と分かち、猫たちはさりげなく美しい光景のなかに解け込んでいる。微笑ましく、麗しい姿である。
私たち、志摩の人間からしたら見慣れた光景かも知れない。そこに猫を配置するだけで、たちまち異なる景色に変わる。たとえば港で大量の魚が水揚げされるや大漁の喜びは猫たちにも伝わる。ほら、新たなドラマの始まりだ。この瞬間こそ中村さんシャッターチャンスであり、猫たちに寄せる思い入れが我々に伝わる時なのだ。
「猫ってね、縛れないんですよ。人間の思惑を超越した世界に住んでいるんですね。そこが面白いし、惹かれるんです。」
と、なぜ、犬ではなくて猫なのかを尋ねたぼくに、中村さんは語ってくれたことがある。
実は、氏より、ぼくは奥さんとのお付き合いの方が長い。犯罪的とさえ言える年齢差のご夫婦で、奥さんはいつもご主人を立て、寄り添うようにして付き従っている。その姿は羨ましさを通り越して見とれるばかりなのだが、ハタと気づいたことがある。
「そうかぁ、S美さんは犬型だとばかり思っていたが、実は猫のようにヤンチャやったんや!」
この写真集は定価は3,300円(郵送料込み)だが、残念ながら書店では求められない。下記まで、電話かファクシミリで問い合わせて欲しい。もちろん、教室でも受付は可能である。
Tel & Fax (0599)43-5469
中村愛之(なかむらあいし)
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