昨年、設計させて頂いた(財)膳所焼美術館の庭園に水琴窟[すいきんくつ]ができました・・。それで、先日美術館の近くを通りがかったので、さっそくその音色を聴かせてもらいに行って来ました・・・。
水の音を楽しむ日本独特の庭園施設である水琴窟は、底に小さな穴の開いた瓶が逆さに伏せた状態で土中に埋められていて、底は水が溜まるように粘土などで固められています。上には一般的に手水鉢[ちょうずばち]が置いてあり、そこから流れ落ちる水が瓶の穴を通じて滴り落ちるようになっています。その時の音が瓶の中で反響し増幅して琴の音のような音となる一種の発音装置です。(言葉だけで説明しても、なかなかわかり難いのですが・・)
伝統的な水琴窟は、茶室前の蹲踞[つくばい]に併設されることが多いようです・・。
膳所焼は、遠州七窯の一つに数えられる焼き物です。遠州七窯とは、江戸初期の大名茶人で作庭家でもあった小堀遠州が、全国の窯場から自分好みの茶器を焼いていたことで賞賛した七つの産地の総称です。千利休や古田織部の茶道を引継ぐ遠州の目にかなうということは、当時としては非常に誉れ高いことであり、これらの産地は一躍天下に名を轟かせることになりました・・。
水琴窟は、この小堀遠州が考案した洞水門と呼ばれる排水装置が起源とも言われているそうです。そこで遠州とゆかり深い膳所焼美術館の庭園に水琴窟を造ろうという事になったようです・・。
この水琴窟(画像のもの)は、昨年完成したお茶会などの催しを行う建物の広縁前にもともとあったひょうたんの形をした手水鉢の下に造られていて、『陽炎の泉』と名付けられました。先日(3月20日)には初音之式も行われたそうです・・。
それで・・その音色はというと、これも言葉で表すのは難しいのですが、私の表現感覚で言うと・・琴の音というより、かなりエコーが効いた水滴が落ちる音で、どちらかと言うとカン高い金属音に近い「ピョン、ピョ~ン・・・、」っていう感じの音でした。いずれにせよ、風流があって癒やされる音色でしたよ・・。
水琴窟の音色は、瓶の形状や大きさ、さらには底の水の溜まり具合など様々な条件で変化するので、各所にある水琴窟で同じ音色のするものはないと言われています・・・。