前回お話した京都国立博物館で開催中の国宝展に続き、昨日は奈良国立博物館で開催されている正倉院展に今年も行って来ました・・・。毎年の恒例行事として、古の文化と職人技(そのセンス)に敬意を表しに奈良に行って来ました。例年なら入場するために並ばないといけないのですが、昨日はタイミングが良かったのかどうか分かりませんが、並ばなくてもあっさり入場することができました。この調子だと、館内も人が少なくて宝物がじっくり見れるかも・・と思いつつ展示室に入ると、そこはやはり「正倉院展」だけあって、宝物の周りには多くの人で混み合っていました・・。(それでも例年に比べれば混雑が少ない方だったので、宝物が鑑賞しやすかったです。)
毎年、正倉院展にはすばらしい宝物が多く出品されているのですが、今年の出品されている宝物は、全体的には・・ちょっとハズレだったかな?という感じがしました。とは言っても、昨年も同じことを言っていましたので、私が宝物を見慣れてきただけかも知れませんから、あまり参考にはされないように・・。そもそも「ハズレ」とか言ってますけど、私は正倉院展に何を期待しているのでしょうね・・?
前置きが長くなりましたが、今年も出品の中から宝物を1つ紹介したいと思います。画像は、「緑瑠璃十二曲長坏」というガラス製の長楕円形の坏(さかづき)です。長側面にひだが三段ずつ付き、口縁に十二の屈曲ができることから十二曲長坏という名前が付いています。緩やかな曲面には植物文様が線刻されており、ガラスの光沢や鮮やかな緑色に波打つ形状があいまって、水や酒をすくう大きな葉の器を想像させます。
材質は、酸化鉛を55パーセント含む鉛ガラスで、緑の発色は銅の混入によるものであることが判っています。鉛を多く含むガラス製品は中国に多いことから、本品は中国産であるという見方が有力だそうですが、いまだに中国で同等品は発見されていません。八曲長坏や十二曲長坏の原形は、ササン朝ペルシヤの金銀器に求められると言われています。八曲長坏は、西アジアや中央アジア、東欧、中国から銀製の八曲長坏が発見されています。それに対して、本品の原形となる十二曲長坏の例は、ウクライナで発見された金製十二曲長坏が有名だそうですが、確実な遺品はごくわずかしかなく、本品のようなガラス製となるとさらに希有(非常に珍しい)であるとのことです。
まさに、奇跡の遺宝と称するにふさわしい宝物の1つです・・。(正倉院の宝物は、世界の宝物ですからね。)
せっかく奈良に行くのだから、今年も正倉院展に行く前に他の社寺を訪れて来ました。今年は、法華寺と海龍王寺と新薬師寺に行って来ました。
画像は、新薬師寺の本堂です。(元々は本堂ではなく、修法を行うためのお堂だったそうです)、7年ぶりに薬師如来坐像と十二神将立像にお会いして来ました・・。円形の土壇の上で薬師如来坐像を円陣に取り巻いて護っている十二神将立像は、まさに圧巻です。また、この十二神将立像は、塑像(木の骨組みに縄を巻き付け、そこにワラを混ぜた粘土をつけて大まかな形を造り、紙の繊維と雲母を混ぜた土で上塗りしたもの)だというのですから驚きです。1200年前に造られた塑像がひび割れなどせずに、原形のまま残っているというのが信じられないです。
という事で、昨年訪れることが出来なかった安倍文殊院には、今年も行くことが出来ませんでした。来年こそは行けるといいんですが・・、行く直前もしくは当日の気分で訪れる社寺を決めているようなところもあるので、来年もまた別の社寺を訪れているかも知れませんね・・・。