年金暮らしの60代夫婦は36歳の次男と同居している。次男はここ15年以上医学部を目指して勉強しているものの合格できず、アルバイトを含めて働いた経験が一度もない。問題は、夫婦の預貯金が少なく、家計も年数十万円の赤字であること。医学部の学費や老後資金をどうしたらいいのかをファイナンシャルプランナーに相談すると――。
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■医学部受験を15年以上続けている36歳「医師になれば一生食える」
筆者に相談にきた、父親(67)と母親(69)は沈痛な面持ちだった。
聞けば、次男(36)が初めて大学受験をしたのは18歳のとき。当時は、理工学科や情報工学科、数学科などの理系学科をいくつか受験したが、残念ながら全滅。受験の失敗後、2年くらいは家から出られず、ひきこもり状態になった。
20歳を過ぎてから、大学受験を再開。ここからの受験は、志望学部を医学部に切り替えた。
「卒業して、医師免許を取得したら、一生食べていけるから」というのが、その理由だそうである。
私立大学の医学部は学費や施設費などが高いので、現役時代はもちろん、現在は年金暮らしに入った親が負担するのは無理だと考え、国立大学の医学部に絞って、受験を続けてきた。それから15年以上の月日が過ぎたが、現在まで医学部合格には至っていない。
■60代両親「いい加減に受験はあきらめて、仕事を見つけて働いて」
親からは「いい加減に受験はあきらめて、仕事を見つけて働いてほしい」と懇願されているが、働く気持ちはない。人生で1日も働いた経験はなく、若い子たちにまざって、アルバイトをする気にはなれないという。他人と関わらない暮らしを長く続けてきているので、人と接触するのが怖いともいう。 ----------
【家族構成】 父親 67歳
年金年額 150万円
母親 69歳 年金年額 50万円
長男 40歳
会社員・結婚して独立
次男 36歳 ひきこもり(受験生)
【資産状況】 預貯金 500万円 家は持ち家(築25年) 生命保険
父親の死亡保険金300万円(母親は保険に未加入) ----------
■「アルバイトをして生活費を少し稼ぐのも、難しいですか? 」
家計に余裕があるのなら、受験を続ける選択もあるだろうが、筆者が父親に尋ねたところ、預貯金は500万円くらいとのこと。父親は1年前まで働いていたが、腰痛が悪化して通勤が厳しくなり、仕事は完全にリタイアした。
現在の収入は、夫婦合わせて200万円程度の年金収入のみ。支出のほうが年間で数十万円程度、上回っているという。家計簿をつけていないため、正確な赤字額はわからないのが現状だ。
「アルバイトをして、生活費を少し稼ぐのも、難しいですか? 」
親と同席していた次男に筆者が聞いたところ、「アルバイトをする時間があったら、受験勉強に充てたいです」との返事が返ってきた。
父親は「いい加減に受験はあきらめて働いてほしいと言っているんですが、この話をしようとすると、自分の部屋に閉じこもって、ご飯のときも出てこない状態になってしまいます。働いてほしいと頼んでも聞く耳をもってもらえずに、本当に困っているんです。自分も仕事を辞めて、この先、貯蓄を増やせるアテもないですから、どうしたらよいものか、本当に困っています」という。
筆者も20代の子供が複数いるので、つい父親のほうに感情移入してしまうが、人生の多くの時間を受験にかけてきた次男にとって、誰に、何を言われようと、「受験勉強に充てたい」という考えを変えるのは難しそうである。
■家計は赤字、年金暮らしの親の老後破産が視野に入ってきている
相談者の家計には、年間で数十万円単位の赤字が出ている。そのため、次男の学費を出すどころか、家計改善をしないと、貯蓄が底を突く可能性も十分にある。
「息子さんのことも心配ですが、その前に親御さんたちの老後資金が底を突く可能性も低くありません。家計費をきちんと書き出して、年間200万円以内で暮らせるように、家計の改善が必要です」
そう伝えて、家計から赤字をなくす方法として、5つの方法を試すことを提案した。 ----------
1)3カ月は細かく家計簿をつける(各費目の平均値をつかむため)
2)通帳を見たり、納付書を見たりして、特別支出の年額をおおよそ見積る 特別支出は固定資産税や自動車税、冠婚葬祭費、家電の買い替え費用など、毎月は発生しないが、1年のどこかで発生する支出
3)年収200万円から特別支出の年額を差し引いて、残った金額を12カ月で割る
4)ひと月に使える金額がわかったら、その金額内に支出を抑えられないか、検討してみる
5)食費と日用品費は、1週間分の予算を立てて、その予算内に収めるような管理をすると、予算を守りやすくなる。 ---------- 働いていない子供がいる家庭は、夫婦のみの家庭に比べて、年間の赤字額が多くなりやすい。預貯金に余裕がある場合は、家計を見直さなくても大丈夫だが、今回は家計改善が急がれるケースに当たる。
「息子さんの問題以前に、ご夫婦の老後の生活設計に問題があります。家計の状況をきちんと数字で把握しなければ、家計を立て直す具体的な作戦を考えられません。キリの良いところで来月の1日から、使ったお金を家計簿につけて、ひと月の支出額を合計してみてください。同時に特別支出額も調べて、年額を計算してみたうえで、節約できそうな支出はないかも検討してみてください」
と念押しをした。
■「親にさんざん迷惑をかけてきました」志望学部を医学部から薬学部へ
次男のことに話を戻そう。
志望校は国立大学の医学部なのだが、昨年までのセンター試験では、200点以上、合格ラインに点数が足りていない。今年の結果は不明だが、志望校の偏差値が高すぎるため、厳しそうである。そこで、次男に単刀直入に聞いてみた。 「受験を続けることを否定したくはありませんが、親御さんの貯蓄額を考えますと、このまま受験勉強を続けるのは難しい現実があることは、伝わりましたよね。ですが、今すぐ、受験をやめることを受け入れるのは難しいでしょう。そこで、志望学部を変更して、あと1回か2回だけ、受験を許してもらうというのは、どうでしょうか?
たとえば医学部受験はあきらめて、薬学部などに進路変更することは、受け入れられませんか」
すると、数分間の沈黙の後、こう言いました。
「今まで頑張ってきましたから医学部生にはなりたいんですが、あと1~2回の受験で希望がかなう保証はないので、受け入れるしかないかもしれません。親にはさんざん迷惑をかけてきましたから」
医学部生になるために、人生の多くの時間を過ごしてきた次男にとって、気は進まないのかもしれないが、あと1~2回の受験がリミットである、厳しい現実は伝わったようである。
■あと1回か2回不合格なら受験はあきらめて、社会に出て働く
結局のところ、合格は本人が勝ち取るしかないし、それは1年でも早いほうがいい。そのためには受験する学部を変更して、何とか合格を狙えそうな学部に目標を定めなおすことが必須だと思われる。
あと1回か2回の受験で合格できなかったら、受験はきっぱりとあきらめて、どんなに嫌であっても、社会に出て働く。親は家計を立て直す努力をする。受験できる回数が制限されることで、親と子、それぞれに覚悟が持てることを願っている。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、国会の代表質問などで、野党から今夏の東京五輪・パラリンピックの中止や延期を促す声が相次いで上がっている。
菅義偉首相は、開催する方針を変えていないが、感染拡大が収束しなければ、難しい判断を迫られかねない。
21日の衆院本会議で、共産党の志位和夫委員長は、世界各国でのワクチン接種が五輪までに間に合わないことや、多数の医療従事者を五輪に振り向けることは難しいとして、「今夏の開催は中止し、日本と世界のあらゆる力をコロナ収束に集中すべきだ」と求めた。
これに対し、首相は、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と「必ず実現する」と合意したことを強調。「感染症対策をしっかり行うことにより、ワクチンを前提としなくても安全・安心な大会を開催できるよう準備を進めていく」と答弁した。
しかし、新型コロナの感染拡大が続くなか、各メディアの世論調査でも「中止」や「再延期」を求める声が多数になっている。こうした世論を意識してか、野党からは見直しを促す意見が相次いだ。
20日の代表質問で、立憲民主党の枝野幸男代表は「世界的に感染拡大が収まらない以上、希望的観測だけで走るのはかえって無責任」と指摘。「万一の事態に備えたプランBはどのように準備しているのか」と語った。
CNN) 世界保健機関(WHO)の専門家は18日にスイス・ジュネーブで行った記者会見で、今年はインフルエンザの予防接種を受けることが特に重要だと強調した。
インフルエンザのシーズンを迎えたオーストラリアなどの南半球では、インフルエンザはそれほど流行していない様子だが、北半球がどうなるかは慎重に見極める必要がある。
WHOの新型コロナ対応を率いるマリア・バンケルコフ氏によると、世界各国で過去2週間の間に実施されたインフルエンザ検査の結果、約30万の試料のうち、インフルエンザウイルスの陽性反応が出たのは37件のみだった。
南半球では新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための公衆衛生対策が多数講じられており、これがインフルエンザの流行を防ぐ役割を果たした可能性があるとバンケルコフ氏は推定する。
一方で、「北半球がどうなるかについては慎重に見極める必要がある」とした。 まず何よりも、世界中で新型コロナウイルスとインフルエンザの両方の検査ができる態勢を確立しなければならないと同氏は指摘。ワクチンの提供が開始されればインフルエンザの予防接種を受けることが大切だとも強調した。
現時点で、感染したのが新型コロナなのかインフルエンザなのかを判断することは難しいことから、検査が必要とされる。
WHOの統計によると、世界のインフルエンザの症例数は推計で年間10億例。このうち300~500万人を重症者が占め、65万人がインフルエンザ関連の呼吸器疾患によって死亡している。