>どうなりますか?
◇激動2020 政治社会編
(1) 世界中が未知のウイルスに苦しんだ2020年、我々の生活環境は一変した。マスクは不可欠となり、にぎわいの象徴だった混雑は「密」としてネガティブに受け止められるようになった。政界では8年近くに及んだ安倍政権が幕を閉じ、新たに菅内閣が誕生した。
「激動2020 政治社会編」初回は、発足から3カ月にして支持率が急降下する菅義偉首相に忍び寄る“悪夢”を取り上げる。
政府は21日、2021年度予算案を閣議決定した。総額約106兆6097億円は過去最大。新型コロナウイルスを含む感染症への対応に加え、デジタル庁設置など首相肝いり政策の実現に向けた予算を確保。その後、首相は国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」実現を目指す推進本部に出席し「ポストコロナ時代を見据え、未来を先取る社会変革に取り組まなければならない」と強調した。
だが首相の「未来」には暗雲が漂う。政界関係者は「答弁力、発信力に加え、国民の神経を逆なでする振る舞いが目立ち、共感力にも欠ける。これじゃ3密ならぬ“3欠”だ」と指摘した。
安倍晋三前首相からバトンを引き継いだのは9月16日。発足当初の内閣支持率は、共同通信の世論調査で66・4%と歴代内閣と比べても高水準だった。それが今月7日の最新支持率は50・3%と急落。毎日新聞は40%、朝日新聞は39%と11月からいずれも17ポイントも下落した。
急落の背景は明らかだ。日本学術会議任命拒否問題で説明責任を果たす姿勢を見せず、首相として初めて臨んだ41日間の臨時国会では棒読み答弁を連発。記者会見をしても下を向いてメモを読む姿が酷評された。12月に入ってからは、インターネット番組で「ガースーです」とあいさつし「国民の空気感が読めてない」(立憲民主党幹部)と反感を買った。さらに大人数での会食を控えるよう求めておきながら8人でステーキ会食をしたことで「危機管理能力が低すぎる」と自民党内からも苦言が漏れた。
この状況について政界関係者は「2008年に発足した麻生政権に状況が似通う」と言う。ともに衆院議員の任期が残り約1年のタイミングで前任者からバトンを引き継いだ。リーマン・ショックとコロナ禍で対策に追われたり、発足直後に高水準だった内閣支持率が急落した点も重なる。
麻生太郎首相は衆院議員任期満了まで1カ月を切る中で総選挙に臨み、民主党に政権を明け渡した。今度は菅首相にその“悪夢”が忍び寄る。
来年の解散・総選挙のタイミングは大きく3つに絞られる。
(1)3月末ともみられる21年度予算案の成立後
(2)7月の東京五輪開幕前
(3)9月5日の東京パラリンピック閉幕後だ。
ただ(1)(2)は公明党が国政選挙以上に重要視する都議選に近く反対するのは必至。有力視される(3)は任期満了まで約1カ月の「追い込まれ解散」となり、永田町関係者は「まさに悪夢の再来だ」と指摘。
党内基盤がないだけに求心力が低下すれば「選挙の顔をすげ替える“菅おろし”が動きだすかもしれない」と激動含みの政局になると見通した