『#父親のモヤモヤ』 住宅ローンの「本審査」に通り、いよいよマイホーム購入の契約……から一転、金融機関から「お金は貸せません」と告げられ――。
兵庫県に住む30代の公務員男性は、昨年、こんな経験をしました。足かせになったのは、「育休」でした。(朝日新聞記者・高橋健次郎)
「本審査」も通過
男性は、共働きの妻、長男(2)、長女(0)との4人暮らしです。 長男が生まれた際、2カ月の育児休業を取得しました。
「日々の成長を実感できますし、夫婦2人でやれば、互いの負担も軽くなります。ただ、妻には『もう少し長く取ってくれると、なおうれしい』と言われていました。私自身、次はもっと長く取ろうと思いました」 昨夏、長女の出産にあわせ、再び育休を取得しました。今度は5カ月です。
育休にあわせ、夫婦の懸案だった住宅探しを始めました。手狭だった賃貸住宅での生活。家族が増えたことで、より広い住宅への引っ越しを迫られました。 そうして始まった家探し。しばらくすると、夫婦の条件に合った中古マンションが見つかりました。家族が一緒に過ごせる広めのリビング・ダイニングがありました。賃貸住宅からも近く、長男の保育園も変えずに済みそうでした。 不動産会社に契約の意思を伝えるとともに、住宅ローンの審査へ。
インターネット銀行の「仮審査」を通過し、より厳密に評価する「本審査」も通りました。「これで、住宅購入できると思いました」
育休告げたら事態が一変
ところが、事態は一変します。 ネット銀行の担当者が、契約準備をめぐり、職場に在籍しているのか念のために確認したいと言った時のことでした。職場の電話番号を尋ねられた男性が「育休中なので、職場にはおりません」と伝えたところ、電話口の声色が変わりました。担当者の男性は矢継ぎ早に続けました。 「育休中なんですか?」 「前例がありません」 「再協議させてほしいです」
10分ほどして折り返しの電話がありました。
「育休中の融資はできかねます」 男性は振り返ります。
「ショックでした。まさか、育休がハードルになるとは思いませんでした」。購入する中古マンションを販売する不動産会社への支払期限も迫っていました。
ローンは別で組めたが
男性は焦りを覚えました。 ただ幸いにも、同時並行で別の金融機関に融資を申し込み、本審査を通過していました。あらためて融資を申し込んだところ、ローンを組めることになりました。
「育休中かどうかは聞かれませんでした」 「金融機関が融資に際してシビアに判断をしなければならないというのは理解できます。ただ、育休中であっても、相応の収入は担保されます。復帰の意思も明確です。やはり『なぜ?』という思いがぬぐえませんでした」 「子育て世代は住宅購入する世代だと思います。育休が住宅ローンのハードルにならないよう、柔軟に対応してもらいたいと思います」
父親のリアルな声、お寄せください
育休や産休などでローンを組めなかった。そんな経験はありませんか。記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
◇ 【#父親のモヤモヤ】仕事と家庭とのバランスに葛藤を抱え、子育ての主体と見られず疎外感を覚える――。
共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、このようにモヤモヤすることがあります。
一方、「ワンオペ育児」に「上から目線」と、家事や育児の大部分を担い、パートナーとのやりとりに不快感を覚えるのは、多くの場合「母親」です。父親のモヤモヤにぴんとこず、いら立つ人もいるでしょう。「父親がモヤモヤ?」と。 父親のモヤモヤは、多くの母親がこれまで直面した困難の追体験かもしれません。あるいは、父親に特有の事情があるかもしれません。
いずれにしても、モヤモヤの裏には、往々にして、性別役割や働き方などの問題がひそんでいます。 それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながるはずです。語ることに躊躇しながら、でも、#父親のモヤモヤについて考えていきたいと思います。