コロナで「在宅勤務」の思わぬ落とし穴、実際にやって分かったこと
新型コロナウイルスの影響により、「在宅勤務」が一般化してきた。ただ、実際に家で仕事をしてみると、思わぬ困難に気づく人も多いようだ。さまざまな人の体験談をもとに、在宅勤務のメリット・デメリットを挙げていく。(取材・文/フリーライター 有井太郎)
● 在宅勤務をし始めて 初めて気づいたデメリット
4/17/2020
近年、リモートワーク(あるいはテレワーク)という言葉が聞かれるようになった。オンラインで仕事をできるツールが登場し、さらに子どもを持つ家庭の兼業夫婦が増えたことからも、そういった働き方が推奨されつつあった。
そんな中、新型コロナウイルスの影響により、自宅での勤務をせざるを得ない状況になってしまった。多くの企業が社員の出社を取りやめ、在宅勤務を推奨。近年発達したオンラインの仕事ツールを活用している。まさに今、多くの人が「自宅で勤務する」というスタイルに挑戦している最中だろう。
では、実際に在宅勤務をしている人は、この働き方にどんな感想を抱いているのだろうか。在宅勤務を始めた人に聞いてみると、メリットはもちろん、思わぬ落とし穴や困難に気づいたという声も多いようだ。
おそらく、長期にわたるであろう新型コロナとの戦い。在宅勤務の能率を高めていくためにも、ここでそのメリット・デメリットを挙げてみたい。といっても、メリットについては各所で多数取り上げられている。ここでは、デメリットや困難に比重を置いて伝えていこう。
● 「家」という空間での仕事は 息抜きやリフレッシュができない?
在宅勤務の大きな特徴は、自分1人(あるいは家族や同居者だけ)の空間で仕事を1日中することだ。上司への気遣いやどうでもいい雑談の相手をしなくていいなど、メリットはすぐに思い浮かぶが、実はこの環境が「デメリット」だと感じ始めた人もいる。
それらの声を紹介しよう。
「在宅勤務をして1週間、特に大変な仕事をしているわけではないのに、気持ちが行き詰まっているのを感じた。考えてみると、朝から1人黙々と仕事をしているだけ。オフィスでは、同僚との何げない雑談やコミュニケーションが実は息抜きになっている。それがないために行き詰まっていると感じた」(40代前半/IT)
「朝の10時から仕事を始めるのだが、15時頃には疲れてくる。不思議に思っていたけど、振り返ると昼食の時間くらいしか休憩を取れていない。その休憩も静かに1人でご飯を食べるだけ。ある意味で生産性は上がっているのだけど、精神的な疲労は明らか。そこに悩んでいる」(30代後半/デザイン)
「オフィスにいるときは気づかなかったけど、誰かに話しかけられたり、挨拶をしたりすることが自然と自分の気持ちをリラックスさせていると気づいた。在宅勤務は、気持ちの切り替えやリフレッシュを自分でやらないといけない」(40代前半/PR)
在宅勤務になると、余計な同僚との会話、特に上司との面倒なやりとりがなくなる。これはよく聞かれるメリットだが、一方で息抜き的な会話がないことの意外なデメリットが生まれているのだ。
また、同僚がいない点では、こんなデメリットも挙がっている。
「仕事で少し悩んだとき、アイデアが欲しいときに不便を感じる。メールやチャットで聞くほどのことでもないし、ちょっと手が空いている人に相談する機会がないのは痛い」(30代前半/編集)
いくらツールが発達しても、何かを相談するとき、デジタルツールに一度乗せて聞くのはハードルが高い。わずかながら手間もかかる。近くの同僚に相談するというのが難しくなるのだ。
とはいえ、こんな考え方もできるだろう。そういったちょっとした相談も、本当に今まで必要なものだったのか、実は少し自分で考えれば思いつくことも、すぐ周りの同僚に頼ってしまっていたかもしれない。それは、他の同僚にとって手間になっていたかもしれない。そういう意味で、自分でなるべく解決する、あるいは本当に相談すべき課題かどうかを精査するクセをつける機会になるのかもしれない。
● 「家」という空間での仕事は 息抜きやリフレッシュができない?
在宅勤務の大きな特徴は、自分1人(あるいは家族や同居者だけ)の空間で仕事を1日中することだ。上司への気遣いやどうでもいい雑談の相手をしなくていいなど、メリットはすぐに思い浮かぶが、実はこの環境が「デメリット」だと感じ始めた人もいる。
それらの声を紹介しよう。
「在宅勤務をして1週間、特に大変な仕事をしているわけではないのに、気持ちが行き詰まっているのを感じた。考えてみると、朝から1人黙々と仕事をしているだけ。オフィスでは、同僚との何げない雑談やコミュニケーションが実は息抜きになっている。それがないために行き詰まっていると感じた」(40代前半/IT)
「朝の10時から仕事を始めるのだが、15時頃には疲れてくる。不思議に思っていたけど、振り返ると昼食の時間くらいしか休憩を取れていない。その休憩も静かに1人でご飯を食べるだけ。ある意味で生産性は上がっているのだけど、精神的な疲労は明らか。そこに悩んでいる」(30代後半/デザイン)
「オフィスにいるときは気づかなかったけど、誰かに話しかけられたり、挨拶をしたりすることが自然と自分の気持ちをリラックスさせていると気づいた。在宅勤務は、気持ちの切り替えやリフレッシュを自分でやらないといけない」(40代前半/PR)
在宅勤務になると、余計な同僚との会話、特に上司との面倒なやりとりがなくなる。これはよく聞かれるメリットだが、一方で息抜き的な会話がないことの意外なデメリットが生まれているのだ。
また、同僚がいない点では、こんなデメリットも挙がっている。
「仕事で少し悩んだとき、アイデアが欲しいときに不便を感じる。メールやチャットで聞くほどのことでもないし、ちょっと手が空いている人に相談する機会がないのは痛い」(30代前半/編集)
いくらツールが発達しても、何かを相談するとき、デジタルツールに一度乗せて聞くのはハードルが高い。わずかながら手間もかかる。近くの同僚に相談するというのが難しくなるのだ。
とはいえ、こんな考え方もできるだろう。そういったちょっとした相談も、本当に今まで必要なものだったのか、実は少し自分で考えれば思いつくことも、すぐ周りの同僚に頼ってしまっていたかもしれない。それは、他の同僚にとって手間になっていたかもしれない。そういう意味で、自分でなるべく解決する、あるいは本当に相談すべき課題かどうかを精査するクセをつける機会になるのかもしれない。
● 手こずるZoomの「背景」 なるべく部屋を映したくない
続いては、在宅勤務の「環境」に対する気づきだ。冒頭で述べた通り、今は仕事のデータやファイルはクラウドシステムに預ければ、ネットを介してどこからでもアクセスできるし、同僚とのやりとりはスラックなどのチャットツールでまかなえる。会議や商談は、Zoomなどのテレビ会議ツールを使う人が増えている。在宅だから「この作業ができない」というケースは減っているはずだ。
とはいえ、やはり在宅ならではの環境面での悩みが出ている。以下に紹介しよう。
「妻と2人暮らしで、そろそろ子どもをつくることを考えて引っ越そうと思っていたので、まだ今の家は狭い。生活は問題ないが、妻とともに在宅勤務になるとつらい。仕事に適したテーブルがひとつしかなくて、それは先に在宅勤務になった妻に占拠されてしまった。自分はソファに座ってノートパソコンで仕事をしているが、どうしても気が乗らない」(30代前半/IT)
「家で犬を飼っているのだが、1日中夫婦2人がいるので大喜び。家で仕事をしていると構ってほしそうにしてくる。最初は『ダメだよ』なんて言うのだが、やはり断りきれず、遊ぶことに。1度遊ぶとまた求めて来たり、膝の上で寝ようとしたりする。最初だけとは思うけど、少し悩ましい」(40代前半/マーケティング)
「テレビ会議はすごくいいのだが、背景に映り込む自分の部屋の様子が気になる。うまいポイントを探すのにだいぶ苦労した。Zoomなどは背景をバーチャルのものに変えられるのだけど、上司や他社との打ち合わせでそれはできない」(30代後半/広告)
意外と、テレビ会議の背景問題を挙げる人は多かった。
「なるべく無機質な背景にしたい」という人がほとんどで、壁際にパソコンを置いてカメラで写すケースがよく聞かれる。ただし家の間取りや、パソコンを置くテーブルの場所の問題で、どうしても生活感あふれる背景になることもある。部屋が俯瞰で見えてしまったり、ベッドなどが映り込んだり。こういったカメラ位置を回避しようと四苦八苦している人は少なくないかもしれない。
続いては、在宅勤務の「環境」に対する気づきだ。冒頭で述べた通り、今は仕事のデータやファイルはクラウドシステムに預ければ、ネットを介してどこからでもアクセスできるし、同僚とのやりとりはスラックなどのチャットツールでまかなえる。会議や商談は、Zoomなどのテレビ会議ツールを使う人が増えている。在宅だから「この作業ができない」というケースは減っているはずだ。
とはいえ、やはり在宅ならではの環境面での悩みが出ている。以下に紹介しよう。
「妻と2人暮らしで、そろそろ子どもをつくることを考えて引っ越そうと思っていたので、まだ今の家は狭い。生活は問題ないが、妻とともに在宅勤務になるとつらい。仕事に適したテーブルがひとつしかなくて、それは先に在宅勤務になった妻に占拠されてしまった。自分はソファに座ってノートパソコンで仕事をしているが、どうしても気が乗らない」(30代前半/IT)
「家で犬を飼っているのだが、1日中夫婦2人がいるので大喜び。家で仕事をしていると構ってほしそうにしてくる。最初は『ダメだよ』なんて言うのだが、やはり断りきれず、遊ぶことに。1度遊ぶとまた求めて来たり、膝の上で寝ようとしたりする。最初だけとは思うけど、少し悩ましい」(40代前半/マーケティング)
「テレビ会議はすごくいいのだが、背景に映り込む自分の部屋の様子が気になる。うまいポイントを探すのにだいぶ苦労した。Zoomなどは背景をバーチャルのものに変えられるのだけど、上司や他社との打ち合わせでそれはできない」(30代後半/広告)
意外と、テレビ会議の背景問題を挙げる人は多かった。
「なるべく無機質な背景にしたい」という人がほとんどで、壁際にパソコンを置いてカメラで写すケースがよく聞かれる。ただし家の間取りや、パソコンを置くテーブルの場所の問題で、どうしても生活感あふれる背景になることもある。部屋が俯瞰で見えてしまったり、ベッドなどが映り込んだり。こういったカメラ位置を回避しようと四苦八苦している人は少なくないかもしれない。
● あの「通勤」にもメリットが? 新たなルーティーンを作る大切さ
さて、在宅勤務のメリットとして大きいのは、やはり「通勤がなくなる」ことだろう。朝晩のいまいましい通勤ラッシュに巻き込まれることなく、また起床時間もいつもよりゆとりを持てるはずだ。
ビジネスパーソンの中には、オフィスまで片道1時間ほどかかる人も少なくない。となると、往復で2時間を通勤に費やしていることになる。仮に、この時間を仕事に回せれば、もっと早く仕事を切り上げられる。あるいは、もっとゆとりを持って仕事ができる。そう考えると、大きなメリットだ。
一方で、通勤時間がなくなったことを意外にも悲しむ人が一定数いる。そのコメントを紹介したい。
「毎朝、駅まで15分ほどの道のりを歩いて通勤していた。この歩いている時間に、体が起きるし、自分が今日やりたいことをまとめられるし、歩数も増えて健康にもいいし、実は好きな時間だった。それまで考えたこともなかったが、今回の在宅勤務で自分に必要なルーティーンだったと気づいた」(30代後半/営業)
「ぎゅうぎゅう詰めの通勤電車はイヤだけど、毎日同じルートをたどる通勤は、実はいろいろな発見があって楽しい。新しい店ができたり、周りの人たちの服装やツールが変わったり。流行や世相を知る意味でもよかった。家にいると、受動的に入ってくる情報量が減るので、そこが課題」(30代前半/編集)
「通勤がなくなったのはいいけど、結局それに変わるような運動や体操の時間を仕事前に設けている。朝起きて、身支度していきなり仕事をしようとしても難しい。家の中でも少し動くとか、軽い運動をしてから仕事をするようになった」(40代前半/システム)
通勤ラッシュという部分に絞れば、それが無くなることのデメリットを感じている人はほとんどいなかった。一方、電車以外の部分を含めた通勤については、それが持っている価値を感じている人もいたのだ。
最近はスマホ内に歩数計がついていることが多い。当然ながら、在宅勤務になってからは1日の歩数がガクンと落ちる。それは健康の意味はもちろん、仕事をする上でのルーティーンとしても実は悪影響になっている人もいるだろう。
だからといって、この状況で強引に通勤をするのはもちろんNG。となると、今の状況でできることを考えなければならない。通勤はしないが、仕事の前に30分ほどストレッチや運動の時間を作るなど。在宅勤務に合わせた、新しいルーティーンを作っていくことが大切かもしれない。
新型コロナウイルスにより生活は一変し、つい数カ月前には当たり前だった日常が、今はなんだか輝いて見える。ニュースもネガティブな報道一色で、見ているだけでも気がめいるだろう。
とはいえ、どう考えてもこの状況は短い期間で終わらない。間違いなく長期戦になってくるはずだ。ということは、在宅勤務を含めた働き方も、決して一時的ではない“改革”が必要になる。
在宅勤務をした中で気づいたメリットやデメリット。メリットは生かしつつ、デメリットをきちんとつぶしていく、対処していくことが必要になるだろう。こんな状況は、すべての人にとって初めてであり、未曽有の事態。だからこそ、一つひとつの課題と向き合って、じっくり対処していくしかない。そうすれば、きっと課題を解決する方法は見えてくる。
さて、在宅勤務のメリットとして大きいのは、やはり「通勤がなくなる」ことだろう。朝晩のいまいましい通勤ラッシュに巻き込まれることなく、また起床時間もいつもよりゆとりを持てるはずだ。
ビジネスパーソンの中には、オフィスまで片道1時間ほどかかる人も少なくない。となると、往復で2時間を通勤に費やしていることになる。仮に、この時間を仕事に回せれば、もっと早く仕事を切り上げられる。あるいは、もっとゆとりを持って仕事ができる。そう考えると、大きなメリットだ。
一方で、通勤時間がなくなったことを意外にも悲しむ人が一定数いる。そのコメントを紹介したい。
「毎朝、駅まで15分ほどの道のりを歩いて通勤していた。この歩いている時間に、体が起きるし、自分が今日やりたいことをまとめられるし、歩数も増えて健康にもいいし、実は好きな時間だった。それまで考えたこともなかったが、今回の在宅勤務で自分に必要なルーティーンだったと気づいた」(30代後半/営業)
「ぎゅうぎゅう詰めの通勤電車はイヤだけど、毎日同じルートをたどる通勤は、実はいろいろな発見があって楽しい。新しい店ができたり、周りの人たちの服装やツールが変わったり。流行や世相を知る意味でもよかった。家にいると、受動的に入ってくる情報量が減るので、そこが課題」(30代前半/編集)
「通勤がなくなったのはいいけど、結局それに変わるような運動や体操の時間を仕事前に設けている。朝起きて、身支度していきなり仕事をしようとしても難しい。家の中でも少し動くとか、軽い運動をしてから仕事をするようになった」(40代前半/システム)
通勤ラッシュという部分に絞れば、それが無くなることのデメリットを感じている人はほとんどいなかった。一方、電車以外の部分を含めた通勤については、それが持っている価値を感じている人もいたのだ。
最近はスマホ内に歩数計がついていることが多い。当然ながら、在宅勤務になってからは1日の歩数がガクンと落ちる。それは健康の意味はもちろん、仕事をする上でのルーティーンとしても実は悪影響になっている人もいるだろう。
だからといって、この状況で強引に通勤をするのはもちろんNG。となると、今の状況でできることを考えなければならない。通勤はしないが、仕事の前に30分ほどストレッチや運動の時間を作るなど。在宅勤務に合わせた、新しいルーティーンを作っていくことが大切かもしれない。
新型コロナウイルスにより生活は一変し、つい数カ月前には当たり前だった日常が、今はなんだか輝いて見える。ニュースもネガティブな報道一色で、見ているだけでも気がめいるだろう。
とはいえ、どう考えてもこの状況は短い期間で終わらない。間違いなく長期戦になってくるはずだ。ということは、在宅勤務を含めた働き方も、決して一時的ではない“改革”が必要になる。
在宅勤務をした中で気づいたメリットやデメリット。メリットは生かしつつ、デメリットをきちんとつぶしていく、対処していくことが必要になるだろう。こんな状況は、すべての人にとって初めてであり、未曽有の事態。だからこそ、一つひとつの課題と向き合って、じっくり対処していくしかない。そうすれば、きっと課題を解決する方法は見えてくる。