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入社すると半強制的に車を購入させられる」ビッグモーターが”新卒大量採用”を続けていた裏事情

2023年08月08日 09時03分21秒 | 雇用と職のこと

入社すると半強制的に車を購入させられる」ビッグモーターが”新卒大量採用”を続けていた裏事情



8/8(火) 8:00配信


FRIDAY


’05年3月に発行された兼重宏行・前社長の直筆サインが入った経営計画書。<最高の商品は、社員です。>という文言があるが、社員を「宝」のように扱うという意味ではなく、本当に「商品」としてしか見ていないという実態があった
損害保険会社に対する保険金の不正請求を認め、経営トップの交代に発展したビッグモーター。和泉伸二・新社長(54)のもと不正体質からの脱却へ向け動き始めたが、顧客や社員から失った信用は簡単には戻りそうにない。この件について継続的に取材を続けてきた自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が’05年~’06年まで2期にわたる同社の経営計画書を独自入手。トップが交代しただけでは簡単には変わらないであろう「負の連鎖を生み出す雇用実態」が浮き彫りになった。


【画像はこちら】す、すごい……経営計画書の中にまで書かれてしまっていた「死刑」の文字


◆600人採用すると40億円入るカラクリ


入手した経営計画書の初版には、兼重宏行社長(当時)のサインの上に「ビッグモーターの最高の商品は、社員です。」とある。言葉だけを見れば、「何よりも社員を大事にし、その社員を最高のものにするための経営計画書」と受け取れるが、この経営計画書が作られるようになった’05年ごろから、会社の売り上げアップのために、採用した新入社員を利用しているようにも見える実態が判明した。


ビッグモーターを古くから知る関係者からもらったメールには、新卒の学生を大量に採用し、しかし短期間で退職してしまう、その一連のプロセスに、社員が利用されている実情が書かれていた。要約するとこうなる。


<社員数は約5000名ですが、その陰にはおよそ4万人近い退職者の存在があります。数字を残せる人だけが残っていきます。生命保険会社も似たような仕組みですよね。ある程度、誰でも入社でき、自分や家族、友人を生命保険に加入させて、それ以上契約を取れなくなったら自然に辞め、数字を残せる人だけが残っていく…。


ビッグモーターが若い未経験者を積極的に採用するのは『素直に会社の方針に従ってくれる人』という理由も大きいでしょう。かなり特殊な職場環境ですから。言い方は悪いけど、経験のない若者は無垢で洗脳しやすいんですよ。


入社すると半ば強制的にビッグモーターで車を購入しないといけません。しかも120回ローンなど非常に長期間のローンを組まされます。車購入に関して社員割引などは一切ありません。金利が一般客9.9%のところ半分の4.9%になりますが、新入社員の中には9.9%の高金利で組まされている人もいました。


保険に関しても、初めて車を買う無知な若者を相手に車両保険はもちろん、諸々の条件で保険料が高くなる保険を組ませていました。もちろん、ビッグモーターが代理店となっている保険会社の保険に加入させるんです>


大量に採用して大量に辞めさせるのは、高い車を買わせて120回ローン(10年間)を組ませ、ビッグモーターが扱う任意保険に入らせるため。とりわけ、新入社員は車を購入する際のローンの知識が薄く、一般客と同じ10年という長期ローンを組まされてもその異常さに気づかないケースが大半なので、ただ月々の返済額のみ伝えられるような状況だったという。通常、新卒で500万円の高額ローンの審査には通りにくいが、そこは、ビッグモーターと信販会社の間で長年培われた強い関係性によって、相当緩く設定されていたようだ。


かりに、入社したばかりの社員が車を購入した直後に退職してしまったとしても、保険は最低1年、ローンの手数料は10年間ビッグモーターに入ってくる。ビッグモーターをよく知る別の関連業者はこう明かす。


「仮に年間600人を採用して全員が500万円の車を買うと、もろもろの手数料込みで年間40億円以上、ビッグモーターに入る計算です。たくさん採用して入社する人数を増やせば、社内的にはローンの手数料、保険ノルマ獲得にも貢献できますし、対外的にも会社の勢いのよさを強烈にアピールできます。ただ一方で、業界内では離職率の高さも有名でした」



新入社員が車を半強制的に買うことを求められた後、加入しなければいけない「保険規定」を示した一説

「退職希望者」に対して、社の対応は非常にあっさりとしていた。それは経営計画書に書かれた次のような一説でも明らかだ。


<社員が一言でも『辞めたい』と口に出したら、上司は理由を聞いて希望を叶えてあげてください>


<退職希望者は速やかに辞表を提出して、できるだけ早く辞めてください>


◆クビにする社員を探すイベントとは…


近年はほぼ毎月、兼重宏行・前社長の息子、宏一・前副社長や幹部役員が店内やその周辺がきれいに保たれているかを点検するため全店舗を訪れる「環境整備点検」という名の業務があった。8月1日、ビッグモーターはその業務の廃止を全社員に通達したが、実はこの「環境整備点検」、表向きの理由に加えて、別の目的もあったという。現役社員はこう明かす。


「環境整備点検は清掃状況や挨拶の仕方、デスク周りの整理整頓などをチェックする業務ですが、それと同時にクビにする社員を探すイベントでもあります。店長からは、『副社長から声を掛けられたら終わり(クビ)だ。目立つ動きはせず、副社長には近づくな』と言われていました」


採用後、社員教育や仕事ぶりを見て、「使えそうにない」と判断されてしまったら、パワハラで退職に追い込まれたケースもあるという。辞めた社員のかわりに、別の新しい社員を採用して高金利で高額車を買わせるつもりなのか、と勘繰りたくなるようなことが経営計画書に明記され、実際に現象としておきてしまっている。


ビッグモーターは3月末、公式サイトの中で伊津美哲士常務のコメントを掲載し、採用計画を打ち出していた。


<自動車販売の仕組みに革新をもたらしたこのビジネスモデルを、今後はさらにスピードアップしながら横展開していきます。そのために重要なポイントとなるのは、人材です。今年度は600名の新卒採用を確保し、次年度も今年以上の人材を確保する予定です>


兼重宏行・前社長が記した<社員は最高の商品>の意味するところが、「入社した社員は、高額な車を購入することによって生じるローン手数料を会社にもたらしてくれる存在」という“本音”が明るみにでた以上、来年以降、何人の学生がこの会社への入社を希望するだろうか。


取材・文:加藤久美子





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