有限会社人事・労務の金野です。
わたしが通っていた小学校は、体操に力を入れていました。
カエル倒立からはじまり、ワンちゃん倒立、三点倒立、開脚三点倒立。ななめバランスやY字バランス、そして側転も。
学年が上がるごとに取り組む種目が変わり、年一回の運動会での”全校体操”のために、日々練習を重ねていく、というのが習わしでした。
ご存知の方がどれほどいるか分かりませんが、カエル倒立は、自身の体を二点(手)で支えてバランスをとるものです。低学年の小さな体と言えども、たった二本の腕で支えるのはなかなか難儀で、筋力だけでなく、体の柔らかさや体幹の強さなども試されます。
そこから学年が一つ上がると、次にチャレンジするのは「ワンちゃん倒立」。その名の通り、犬が逆立ちしているような格好でバランスをとる、というものです。
ここで、自分の体を支えるものは「三点」になります。三点=両手と頭、です。
「簡単じゃん」と思って取り組んだカエル倒立で、思いがけず壁にぶち当たり、体操が嫌いになりそうだった子どもたちも、ここで「三点」のバランスの良さに気づくと、「毎日練習してみよう」「もっとうまくなりたい」などと、俄然やる気が高まってくるのです。
わたしもその一人でした。
週末は部屋に敷かれたふとんの上で、ワンちゃん倒立の練習をし、支えられながら三点倒立にもチャレンジし、早いうちから開脚三点倒立までできるようになると、あんなに憂鬱だった体操が何だか好きになってきました。
そんな子どもたちが多かったのか、全校体操はみんなが本気で取り組む名物行事になっていったのでした。
この、何となく体でつかんできた「三点」というバランスについて考える機会が、最近増えて来ました。
例えば、自身が上司として部下をもつ立場になると、当然ですが「いかに部下と信頼関係を強固にするか」「いかに自律的に動く部下を育てるか」といった意識が高まります。すなわち、上司と部下という二者関係に注力する、という状態です。
この「二者関係」は、そこに厚い信頼感があって強固なものであれば、カエル倒立で体を支える腕のように、良いバランス感を作り出してくれますが、ひとたび崩れたり”共依存”と言われるような強過ぎる関係性になったりすると、ひずみが生じることもあります。
「せっかくここまで育ててあげたのに…(=上司側)」「こんなにがんばっているのに何もわかってくれていない…(=部下側)」等々の言葉が生まれる背景には、実は、エゴ、執着や依存心、あるいは所有の概念といった人間独特の感情が存在していることをまずは客観視(自己認識)することが重要です。
そして、そこから”程よくバランスがとれた”良い関係性に変容するには、「自律(自立)」という状態がカギになってきます。これがまさに「三点」のバランスから生まれると言えるのではないかと思うのです。
例えば、新卒社員が入社し、その社員の直属の上司に加えて、”斜め上”の先輩としてマインドや職場の文化を伝える役割を担う「メンター」の存在。
”管理職の相談役”として、現場で起きる人事労務面の案件への対応について、部下をもつ管理職を後押しする「人事部」の存在。
療養と就労の両立やメンタルヘルスの対策として、社員と人事部の関係性に加えて、外部の産業医やEAP(弊社ではCAPと呼んでいます)の存在。
持続的なキャリアの歩みかた、居場所としての職場づくりのために、「三点目」の存在は、職場のエネルギーを良い状態で循環させることができ、大切な役割を果たしてくれるのです。
よく「うちの社員でこれこれこういう人がいて、皆困っている」という相談をいただくことがあります。
大事なのはそこにどのような関係性が存在しているか、にフォーカスしていくことだと思います。
その社員の問題、というのが、どのような関係性のもとで生じていて、そこにどのような「三点目」を添えることで、良いバランスをつくることができるのか。
とかく問題が生じると、わたしたちは「当人そのもの」にフォーカスして、そこを起点とした関係性を改善しようとやっきになり(上司部下の関係性の改善、職場内の人間関係の改善、顧客との関係性の改善等)、それがうまくいかないために疲弊する、といったことも起きがちです。
しかし、「どのような三点目を据えるか」という視点で考えてみると、新たな解決策の道筋が見えてくるかもしれません。
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