会社

　確かにわが社はソフトウェア開発の会社ではあるが、今やほとんど人材派遣業と変わらない。階層化されたソフトウェア産業の下請け構造の中でずっと下請けに甘んじてきた体質がなかなか変えられない。

　東に案件があると聞けばそれらしい技術者を連れて行き、西に案件があると聞けば要件を満たしそうな技術者を連れて行く。「こんなソフトウェアはいかがですか？」と提案したいところだが、わが社の営業は「こんな技術者はいかがですか？」という提案になる。
　問題なのは、多くの社員がこの実態を変えようと思わないことだ。下請けに甘んじることで発生している弊害は多い。作ったシステムを本当にご利用頂くお客様から遠いことで、「お客様のために」、という気持ちが薄れる。自分中心になる。言われたこともやれないようなら大きな問題になるが、言われたことを言われたとおりにやっている分には大きな問題にならない。考えなくていいし、必要以上に頑張らなくていい。言われたことだけやっている、という生活は楽だ。会社も失敗した時のリスクを考えなくていい。社員も会社も楽ができる。
　しかし、楽をして収入が多いはずがない。下請けの下請けは当然支払われる対価も少なく、見合った賃金しか払えない。今や給与が多いか少ないかで会社の良し悪しは判断できないが、しかし、当然少ないより多いほうがよい。給与の面は別にしても、常にぬるま湯につかっているような会社のあり方が、社会に認められるはずがないし、仕事に張り合いがあるとも思えない。今を知り、変わって行く努力をしなければ先はない。

　どんな場合でも同じだと思うが、変わるための第一歩は、変わろうと思うことだ。変わろうと思わない人は変わらない。会社も同じだ。社員みんなが変わろうと思わなければ変わらない。
　
　ずっと殻の中に閉じこもって、暗いところでぶつぶつ文句を言っているだけではつまらない。世界は広い。自分の力で、自分の頭脳と心で、立ち向かってみよう。わが社は、それができる会社だ。少なくとも、そうありたいと努力している。

　忘れてはいけないこととして「自分の自尊心より大切なものを持って生きにゃいけん」と『流転の海シリーズ』（宮本輝著）の中で松坂熊吾が息子の伸仁に何回も復唱させたように、だた自分中心の、自分のプライド守るためだけの変わり方はしたくない。「おかげさま」で生きていることを忘れた変わり方をするぐらいなら変わらなくていい。

　お客様に喜んでもらうことを喜びとする会社でありたい。


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