TOKYO

　『TOKYO 2020』の文字を見て飛び上がったり抱き合ったり、中には涙で顔をくしゃくしゃにして喜ぶフェンシングの太田選手の姿などを見ると、こちらまで嬉しくなってくる。福島第一原発の汚染水問題で各国のメディアが日本は危険なんじゃないの？と疑問を投げかけているという報道に接していたから、こりゃTOKYOが来ることは無いな、と密かに思っていたのだが、招致委員会の皆さんの努力は並大抵のものではなかった、ということだろう。ご苦労様でした。

　やると決まったからにはしっかりやろう、という機運がこれまで無関心だったり若干反対気味だったりした高齢の層で急激に高まって来ることだろう。外国からお客様を招くということになると俄然頑張らないと気が済まない方々は多い。財政赤字大国ニッポンだが、借金返済や脱デフレの目標を掲げるより、国際的なお祭りであるオリンピックを成功させようという目標を掲げるほうがずっとわかりやすい。原発の放射能にしても、全く、もう本当に完全に絶対、心配ないですよと日本の代表者が口をそろえて約束してしまったのだから、これを後になって、あの時は勢いで言っちゃいましたけどデへ、とこれまで国内では通用してきたかもしれない誤魔化しも通用しないだろう。

　TOKYOという地域がオリンピック誘致によって活性化することは確実だろう。しかし、同じ日本の他の地域は一体どうなるのか。これまで同様、東京だけが盛り上がって、地方はより一層落ち込んでしまうということが起きると、寂しい。「今回の招致成功はオールジャパンで勝ち取った」と招致委員の誰もがコメントしている。招致だけでなく、その後の波及効果もオールジャパンに及ぶよう、地方もオリンピックというお祭に便乗するアイデアを出して行かなければならないだろう。

　気候変動に関する政府間パネル（IPCC)という国連が作った地球温暖化の国際研究機関が今年公表する報告書の草案が出来上がり、その中には、あと80年もすると世界の平均海面水位が81センチ上昇し、平均気温は最大4.8度上昇すると記載されているという。計画では東京オリンピックは2020年7月24日開幕の予定になっている。選手は猛暑との戦いを余儀なくされるだろう。40度を超える夏の暑さと、突然襲ってくるゲリラ豪雨。東京で心配される自然の脅威は数え上げればキリがない。もちろん、テロなど人の脅威も心配ではある。それでも「想定外だった」という言葉を使わずに世界のお客様に安全に楽しく過ごして頂けるよう、おもてなしできる体制を準備しなければならないだろう。大変なことだが、大変な楽しみだ。（三）


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