自転車散策

　子供がまだ小さい頃に買ったママチャリ。ずいぶん長い間、車の無い我が家の足として頑張ってきてくれたが、駐輪場が雨ざらしということもあり、フレームはサビだらけで、タイヤはツルツル、ギアもほとんど動かないという状態になってしまったため、さすがにそろそろ買い直そうということになった。

　古い自転車を近所の自転車屋に持ち込み、さっそく新しい自転車を物色。いろいろ見て回ったものの、雨ざらしでしか保管できず、どうせ週末しか乗らないということで、普及モデル（要は一番安いタイプ）を買うことにした。安いとはいっても、そこは新品。乗ってて快適さが全く違う。古い自転車は酷使し過ぎたせいでフレームにもゆがみが出ていたのか、軸がぶれている感じがしたが、新品は当然ながら軸も安定し、こぐ力が素直に伝わっていく。もう少し新しい自転車の乗り心地を楽しみたかったが、とりあえず自転車屋から自宅までの超短距離サイクリングでその週は終わってしまった。

　話は少し変わるが、持ち帰り寿司のチェーン「小僧寿し」で「幽霊寿司」を期間限定で復刻販売をするというニュースを見た。「幽霊寿し」は簡単に言うと海鮮バラチラシを単にひっくり返しただけのものであるが、見た目の奇抜さだけでなく、結構美味しく、夏の販売シーズンになるとよく買って食べていた。そのうち定期的には販売されなくなり、近所にあった小僧寿しも閉店になったためすっかりご無沙汰している状態だったが、復刻販売のニュースを見てこれは久しぶりに食べないとと思い立った。

　お店の場所を調べてみると、一番近い場所でも、車で15分程度。しかも日吉の丘を越えていかないといけない。サイクリングも兼ねて自転車で買いに行くことにしたが、ルートをどうするかかなり迷った。丘を越えないように廻り込んでいくルートもあったが、かなり遠回りになってしまう。多少迷っても知らない道を走る方が楽しいだろうと、とりあえず坂を上って、あとは適当に下っていくことにした。

　ギアも補助動力も無い自転車。どうせ坂は押すことになるからと、ゆるやかでも長い坂より、きつくても距離の短い坂を選んだ。途中でかなり後悔したが、なんとか挫折せず坂の上まで登りきった。後は適当に降りるだけと、一番近くにあった下り坂を自転車ですべりおりていく。やがてたどりつく行き止まり・・。想像していたよりも道路はかなり複雑に入り組んでいた。

　このまま適当に下りては上りを繰り返すと干上がってしまうと思い、GoogleMapのルート検索の力を借りることにした。提示されるルート通りに進んで行ったがなかなか下りルートにはならず、比較的上り坂を走るルートが続く。ようやく下り坂に入り、後は楽々と気を緩ませていたが、とんでもない落とし穴が待ち構えていた。小さい道を進ませるなと思っていたら最後に待ちかまえていたのは、急こう配の階段。普通に歩いても、足を踏み外したら骨折くらいでは済みそうもないような角度だった。

　しかし、今更また自転車を押して上る気力もなく、半分やけっぱちで自転車を抱え下りて行った。買ったばかりの自転車をボロボロにするわけにもいかず、ゆっくりかつ慎重に、でも体力の限界が来る前に。無事階段を降り切ったときは、安堵の気持ちと自分の馬鹿さ加減に一気に気が抜けてしまった。

　【教訓】
・知らない坂だらけの道を自転車でむやみに走らない
・自転車でいくときにGoogleMapのルート検索を「徒歩」で行わない
・自分の体力がそれほど無いことを自覚する。

　さすがに懲りたため、帰りはどれだけ遠回りになっても、ひたすら平坦な道を選択し帰宅。そもそもの目的だった「幽霊寿司」は無事購入することができ、懐かしい味を楽しむことが出来たことが唯一の救いだった。（池）

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