ぼんやり春を楽しもう

　近所の、割と大きめの公園に散歩に行った。先週末の話し。梅の花はもう散っているものが多かったが、何本か植えられている桃の花が明るく咲いていた。家族連れが入れ替わり近くにやって来ては写真を撮って行く。河津桜もピンクが眩しいぐらいに咲いていた。
　
　桜（ソメイヨシノ）の開花予想は私の見ているサイトでは東京で3/17、横浜で3/18。もう本格的に冬の終わりが近い。私は寒さに弱い。なので、暖かくなってくれるのは本当にうれしい。が、暑さにも弱い。これから暑くなるまでの期間が良い期間だ。とはいえ寒い時期には寒い時期なりの楽しみもあり、今年はそれが満喫できなかったような気もしている。特にアイスクリームの私的消費量はこの冬、例年に比べかなり少なかった。寒い冬の夜に温かい部屋で食べるアイスクリームがいい。のだが、このシーズンはアイスクリーム的な夜が少なかったような気がしている。この冬の穴を埋めるように、これから出現するだろう「晴れれば暑い日」に食べたさが倍増するのではないかと思っている。
　
　サンマは秋の魚として知らない人はいない。飲み屋のランチなどでも焼いたサンマが食べられる。これに対し春の魚と書く鰆（サワラ）は、なかなかランチメニューでお目にかからない。クックパッドで調べてみると春らしく「サワラの菜の花あんかけ」などというメニューに出会う。工夫が進んでいるようだがサンマの認知度と比べるとかなり低い。ところが近年サンマの漁獲高が激減しているのに対しサワラは漁獲高を伸ばしているという。日本近海の水温が高くなっていることと関係しているようだ。注意深く見ていると春はいろいろな所でこのサワラの料理に出会っているかもしれない。
　
　湘南地域に住んでいる人にはサワラより生シラスが待ち遠しいという人もいるだろう。1月～3月は禁漁なので4月に入ってまだ風が冷たい時期にキラキラ反射する海を眺めながら熱々ご飯のどんぶりに盛った澄んだシラスを食べるのはたまらない。
　そういえば会社の40周年記念パーティでも湘南のシラスが使われていた。メニューを引用すると「湘南シラスのフォンダンを添えた熊本県産平スズキとマダガスルージュを爽やかなバジル風味のソースで」というのが3品目だったのだが、覚えている人はいるだろうか。スズキは覚えている人がいたとしても、あのクリームペーストの中に湘南シラスが和えてあったことまではなかなか気が付かなかったろう。
　
　春の柔らかな空気の中、夏になっては見られないほんのり優しい色合いの花々や、その日その時限定で、なぜかおいしいものたちがあちこちで待っている。閉め切った窓の外に吹き荒れる花粉と自粛の嵐を吹き飛ばして、外に出ないともったいない春の到来である。(三）


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