梅雨入り

　梅雨入りした。別に待っていたわけでもないが、ほっとした。というのは、雨が降れば塾の横の川の水量が増え、水藻が流され、気持ちのいい川に戻るだろうと思ったからだ。木曜の夜に強い雨が降ったので思惑通りになったかと、川を眺めたら驚いた。川の水が黄土色に変色している。濁って底などまるで見えない。

　

写真は昼頃撮ったものだが、父の話によると、早朝はもっとひどかったそうだ。じっと見ていると、川岸に黄土色の粘土状のものがこびりついている。上流にある粘土工場がいらなくなった粘土を流したか、陶器工場が廃液を流したか、いずれにしても水量が増えたのに便乗して、不要になったものを川に捨てたに違いない。こうしたことは年に何度か行われる。大雨が降った翌日の川は、土砂だけでなく、こうした工場の廃棄物で汚れて、本当にきたない。橋の上を通ると、異臭さえする。一昨日も書いたように、小学生が一生懸命川の浄化に取り組んでも、一晩で無に帰してしまう。何て卑劣な行為なんだろう。車に乗って、町の中央を流れる川をたどってみたが、汚れた黄土色の水がどこまでも流れていた。
　いくら昔はこうした光景が日常茶飯事だったと言っても、久しぶりに見るとやはりぎょっとする。昔の白濁した川が懐かしいと思いはするが、川はきれいに越したことはない。思い出は思い出として懐かしむだけでいい。現実に生きる私たちには現実が快適であることが一番望ましい、当然ではあるが。この事態は、この川で餌を探す鴨や水鳥たちにはもっと切実なことであり、川が汚れている間は、どこを探しても鳥たちの姿は見つけられなかった。どこに行ったのだろう、もっと上流の水の汚れていないところで餌を探していたのだろうか。

　しかし、久しぶりの雨は野原の草花には恵みの雨だ。緑が映えてきれいだし、花の色もみずみずしい。車庫の裏に小さな畑を父が作っている。今、そこはサヤエンドウが実りの時期だ。

　
たくさん採れる。毎日毎日、いやと言うほど採れる。父の世話がいいのか、土がいいのか、とにかくうんざりするほど実る。ここずっと、必ず一品はこのサヤエンドウが食卓に上る。妻も、家族に食べてもらわねば困るため、あれこれ工夫を凝らしているようだが、その努力をあざ笑うかのように毎日山のような収穫がある。近くの親戚にも、定期便のようにして配っているが、それでもなかなか減らない。毎年繰り返される光景だが、父はそれが嬉しいらしく、ちっとも加減しない。私はサヤエンドウは嫌いではないので、一生懸命協力している。しかし、サヤエンドウの写真を撮っていたら傍らに嬉しくないものを見つけた。

　ナスの苗だ。私はナスは大嫌いだ。勘弁してよ。