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牛蒡

 妻が庭の隅に植えてある牛蒡を掘ってくれと言った。そんなものがあるなんてまるで知らなかった私は、「どこに?」と訊いてみたら、「そんなことも知らないの?」と呆れられてしまった。「知るかそんなもん」と言いたかったが、事を荒げても面倒くさくなるだけだから、「じゃあ、掘ろう」と表に出た。


 この葉っぱなら見覚えがある。観葉植物と見紛うばかりに勢いのある葉っぱだ。「なんだ、これが牛蒡か」と妻の方を向いたところ、「2年前に植えた牛蒡だけど、葉っぱごと抜こうとしたら、とても抜けそうもなかったから・・」と小さなスコップを渡した。「そんなものいらん」と、先ずは力ずくで抜こうとしてみた。
 だが、ダメだ・・。とても歯が立たない。「大きなかぶ」の話のように、手伝ってくれる人や動物がいたら引っこ抜くことはできるかもしれないが、私一人ではとても無理だ。あきらめて、大きなスコップを取ってきて、掘ってみることにした。

 牛蒡の周りを深さ20cmほど掘ってみた。これなら抜けるかもしれない、と思って、葉っぱを持って思い切り引っ張ったら、少しばかり手応えがあったものの、すぐにポキッと折れてしまった。力の遣り場がなくなった私は、仰向けに倒れ込んだ。が、幸いなことに、柔らかい地面だったので、どこも痛めずにすんだが、なんとも惨めな姿だった。
 これくらいのことで、へこたれるわけには行かない。すぐに起き上がって、さらにスコップで深く掘ってみたが、今度はスコップで地中の牛蒡をザックリ切ってしまって、細切れ状態にしてしまった。しかも何度も・・。しかし、まだまだ埋まっていそうなので、小さなスコップに変えて、一生懸命掘ってみた。
 結局、掘り出したのはこれだけ・・。


 どうせなら、一本なりを掘り出したかったが、残念な結果に終わってしまった。
 「葉っぱは食べられないかな・・」
と言った妻が調べたところ、牛蒡の葉を使った料理は見つからなかったそうだ。美味しくないのかな・・。

 でも、根の方は妻が料理して、晩ご飯のおかずとして食べた。


 さほど硬くもなく、かと言って柔らかすぎない、微妙な食感の牛蒡だったが、結構美味しかった。
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