じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

村上陽一郎「ペスト大流行」

2020-02-14 21:41:25 | Weblog
★ 中国・武漢で猛威を振るう新型コロナウィルス。懸命の封じ込めにもかかわらず、感染は中国全土へ、そして世界へと拡大している。交通機関の発達により多数の人々が世界を駆け巡る時代だ。封じ込めには限界がある。

★ 日本でも全国で発病者が確認されるようになってきた。最初は中国への渡航者や中国からの旅行者と接した人が中心であったが、徐々にそうした経緯を経ずに感染、発病する人が増えているようだ。日本人に免疫のないウィルス。散発する拡大はもはやキャリアーが日本全体に広がっていることを物語る。いつアウトブレイクしてもおかしくない。

★ 小集落や地方都市なら隔離・封鎖もできるが、東京をはじめとする大都市やあるいは分散して拡散したなら、封じ込めは難しい。対外的には鎖国しか方法はなかろう。横浜港に停泊するクルーズ船は未来の縮図なのかも知れない。

★ そんな危機感を感じながら、村上陽一郎さんの「ペスト大流行」(岩波新書)を読んだ。以前読んだことがあるので再読だ。

★ 致死率が50%に迫るペストのヨーロッパでの大流行は14世紀。そしておよそ300年後の17世紀も繰り返された。なぜか250年から300年周期で繰り返すという。

★ 流行の前に異変があるという。気候の変化、干ばつ、寒冷な夏、洪水による農村の疲弊、トビバッタの大発生。大飢饉や火山の噴火も。まだ細菌による感染といった発想のなかった時代である(北里柴三郎たちがペスト菌を発見するのは1894年である)。病因については空気の腐敗や占星術的なめぐり合わせに求められた。神の裁きに恐怖し、あやしい宗教や呪術が流行ったに違いない。病気への不安からかユダヤ人の迫害が起こったという。

★ 今回の新型ウィルスでも感染者数、死亡者数の統計が混乱している。古い時代ならなおさらだ。当時の死者については厳密な数字がない。おおよそ1000万人とも2000万人以上とも言われている。ペストによる社会変動で中世が崩壊したと言われる。

★ 新型コロナウィルスの拡大。ウィルスは人の身体を冒すだけではなく、中国人(あるいはアジア系の人々)への偏見といった心への「感染」、経済的、社会的な打撃を与えている。爆発的な感染力の一方、致死率は2%程度に抑えられている。死者数だけで言うなら季節性インフルエンザの方が深刻だ。

★ アウトブレイク自体は季節の変化や人々の免疫の獲得によって次第に収束していくであろう。と同時にワクチンが開発されるまでは蔓延し、周期的な流行を繰り返すかもしれない。恐れるべきはウィルスの突然変異であり、これは新型インフルエンザも同様だ。人類あるいは生物とウィルスとの長年にわたる戦いはこれからも続くであろうし、その戦いあるいは共存が進化をもたらすのかも知れない。

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