じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

よしもとばなな「あったかくなんかない」

2021-08-30 20:08:02 | Weblog
★ 「明かりは見え始めています」と、政治家が宗教家のような発言をする昨今。私事ながら、コロナワクチンの予約がやっととれて少し明かりが見えてきた。

★ さて、明かりということで、今日は「きみが見つける物語 友情編」(角川文庫)から、よしもとばななさんの「あったかくなんかない」(「デッドエンドの思い出」にも所収)を読んだ。

★ エッセイ風の書き出し。主人公が幼かった頃、近所に住んでいた老舗和菓子屋の男の子との初恋物語のようだ。父母(それも離婚まじかと思えるほど険悪なムード)との3人家族の主人公にとって、大家族の和菓子屋はあこがれだった。しかし、表向きのにぎやかさの裏ではドロドロとした人間模様があったようで。

★ 「初恋」の男の子。彼には天使のような透明感が漂い、その瞳は聡明な輝きを発していた。中盤まで穏やかに話が進む。しかし、だんだん暗雲が暗示され、そして遂に・・・。

★ 主人公と男の子が「明かり」について論争するシーンが印象的だ。明かり自体があったかいんじゃなくて、そこに住む人から、その人たちの中にある明るさが明かりのあたたかさの本質だという。うーん、幼い子とは思えない。哲学的だ。川の流れの隠喩にも引き込まれる。

★ この世のあらゆるものは、川の流れのように移ろいゆく。「方丈記」のような心境になった。

 
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宇能鴻一郎「鯨神」

2021-08-29 11:49:55 | Weblog
★ 宇能鴻一郎さんの「姫君を喰う話」(新潮文庫)から「鯨神」を読んだ。第46回(1961年)芥川賞受賞作。長年読みたいと思っていたが機会に恵まれず、この度新たな作品集としてまとめられたので、ついに読むことができた。

★ まだ電信が年に1度程度しか届かなかった時代。明治の始まりの頃か。隠れキリシタンの伝統を持つ九州の漁村が舞台。そこでは、何代にも渡り、鯨との戦いが行われてきた。中でも「鯨神」と呼ばれる大物は、多くの人々を死に追いやり、集落では商業捕鯨とは別に、「鯨神」との戦いが生きる矜持となっていた。

★ 「鯨神」に父と兄を殺された主人公は幼いころから「鯨神」との戦いを運命づけられ、彼もこの生き方を受け入れた。

★ そして遂にその日。「鯨神」との壮絶な戦いが始まる。終盤、討ち取った鯨を前に、深手を負い死を目前とする主人公の内面告白が良い。当時作者はまだ20代中盤。死など日常からは遠いところにあるように思えるのだが、よくここまで書けたと思う。静かにゆっくり読みたいシーンだ。

★ ところで「鯨神」とは何か。即物的には巨大な哺乳動物なのだが、それなら何代にも渡り命を賭ける価値は薄かろう。「鯨神」とは、敵であり、時代であり、神であり、人の宿命なのかも知れない。生きることは戦いであり、戦うことに矜持があるような気がした。

★ 宇能さんと聞くと官能小説のイメージが強かったが、その手のシーンはなかった。鯨そのものが、あるいは鯨との戦いこそがある意味、官能なのかも知れない。生きることそのものが官能なのかも。そしてそれは死を目前にしたときくっきりと輪郭をあらわす。


★ 余談ながら、電信とういう言葉を聞いて、日本エレクトロンの「LOVE クロニクル篇」を思い浮かべた。ある男性が電話で告白。まだ家庭に電話機が1台しかなかった時代。家族の聞き耳を気にしながら告白を受ける女性。時代はやがてファックスに、そしてポケットホン、Eメール、携帯メール、テレビ電話へとメディアが進化。遂には3Dバーチャルで月に赴任先の彼と地球の彼女が寄り添うシーンで終わる。

★ 私の人生60余年。3Dバーチャルは未来の話として、それまでの進化は全部体験してきた。思い返せば、コミュニケーションツールの進化には度肝を抜かれる。人間がこの進化に果たしてついていけているであろうか。ふと心配になった。
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夏期講座終わる

2021-08-26 21:28:22 | Weblog
★ 28日間の夏期講座が終わった。ぶっ倒れることもなく、朝、寝過ごすこともなく完遂できたことがうれしい。

★ 小中学生たちは明日から学校だ。低年齢層へのコロナウイルスの拡大が心配。夕方になって、学校からメールが来たという。それには本人もしくは家族に異変がある時(普段の体調と少しでも異なる場合)、登校を控えるようにとのこと。欠席しても「出席停止」扱いになるということ。緊急事態宣言が解除される(であろう)9月12日まで、部活動は中止すること、が書かれていた。

★ そう言えば、近隣の小中学校では教職員や児童生徒の感染が報告されている。今までは家庭内感染が中心であったが、これからは学校内感染のリスクが大きくなる。一斉休校をするならこのタイミングなのだが、どうやらインフルエンザと同じような対応(学級閉鎖→学年閉鎖→学校閉鎖)に落ち着きそうだ。

★ 学校や家庭で感染した児童生徒が塾内で感染を広げないとも限らない。消毒やソーシャルディスタンスなど、なお一層気を配らねば。それでも広がる時には広がってしまう。最悪の事態を想定して覚悟を決めておくことも大事か。

★ 何かと閉塞感が漂う毎日だが、先日、文化人類学者である石毛直道さんのドキュメンタリーを見て、ちょっと心が豊かになった。鉄の胃袋と言われる石毛さん。現地の人々と同じものを食べ、彼らの生活に入り込んで研究を続けてこられたという。石毛さんの昼食風景。近所の弁当屋でミックスフライ弁当を買って帰り、事務所(研究室)のバルコニーで召し上がっていた。その時のワインが実に旨そうだった。

★ さぞかし高級なワインかと見れば、銘柄はトップバリューの廉価ワインだった。手軽な値段だったので早速、イオンネットスーパーで注文して飲んでみた。ワイン通の方はいろいろ批評されるであろうが、私などにとっては実に飲みやすい。「濃い赤色」が美しくて、そこそこアルコール度数があるから、つい酔っぱらってしまう。

★ コロナに感染し、いつ死地を彷徨うかもしれない。今日できることはしっかりこなして、楽しく1日1日を生きていきたいものだ。
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医療崩壊

2021-08-24 17:55:02 | Weblog
★ 昨日の「報道ステーション」、糖尿病の持病をもつ男性が新型コロナに感染し、重篤な状態であるにもかかわらず、受け入れ先の病院がみつからない。結局、翌日搬送されたものの帰らぬ人となったというニュースを見た。

★ 私たちは急病で困った時、救急に頼めば必ず病院まで搬送してくれると長年信じてきた。私の母も父も生前数回搬送され、病院で適切な処置を受け、時には入院させていただき、回復し帰宅することができた。いざとなれば病院で適切な治療をしてもらえる、この安心感の上に私たちの日常があった。しかしそれは、幻想であったようだ。

★ 今朝の朝日新聞「耕論」のコーナー、中島岳志さんが指摘されていた。内閣や行政がいう「自宅療養」それは本来の意味ではなく、「入院拒否」「入院謝絶」の言い換えだと。

★ 疫病自体は(たぶん)誰のせいでもないが、それへの対応は極めてまずい。第1波のときは、多分指導者たちもパニクったのであろう。学校の一斉休校と言う強硬策に打って出た。どれほどの効果があったのかは疑問だが、社会に与えるインパクトは大きかった。

★ それが少し下火になるやいなや、「Go To キャンペーン」の前倒しだ。政治の裏側でどういうやり取りがあったのかは不明だが、今から思えば「コロナ」の威力を甘く見過ぎていた。

★ 第2波、第3波、第4波、そして第5波と、政治は有効な手を打てず、首相に至っては「ワクチン」頼みの一点張りだ。

★ あれだけ危機を指摘する声があっても、オリンピックやパラリンピックは断行され、一方で戦時期、災害時のような野戦病院の計画が進んでいる。首相は自らの総裁再選や衆議院選の戦況ばかりが気がかりなのか、とさえ思えてくる。弱い野党も残念を超えて腹立たしい。

★ 先日のコロナに感染した妊婦が早産して赤ちゃんが亡くなった出来事も心に響く。ワクチン接種が奨励されても、肝心のワクチンが届かない。自治体の集団接種は予約が取れない。国が言うほどの供給があるなら、どこかで滞っているに違いない。

★ アルファ株の時のイタリア、そしてデルタ株のときのインドネシア。第4波の大阪の事例も深刻だった。政府はそうしたことから結局何も学ばなかったんだね。都知事の「あきらめてください」のフレーズばかりが耳に残る。菅総理の「自助」のフレーズも心に響く。国というものはもはやあてにならないのか。


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田中宇「タリバン」

2021-08-21 18:32:21 | Weblog


★ 平成14年発行の小学4年生用教科書「新しい国語」(東京書籍)に小林豊さんの「世界一美しいぼくの村」が採用されている。アフガニスタンが舞台。収穫した果実を父親と少年が市場(バザール)に売りに行く話。美しい村の様子、バザールの賑わい、いり豆、シシカバブやパンの焼けるにおいが印象的だ。戦争に行った兄に代わって初めて店を手伝う少年の緊張感、父親に子羊を買ってもらった少年の感動が伝わってくる。

★ 平和な日常が描かれた後でページをめくると、胸を打つ結末が。そこには「その年の冬、村は戦争ではかいされ、今はもうありません」と記されている。

★ 東西世界を結ぶ要衝地ゆえに何度も覇権にさらされてきたアフガニスタン。9.11同時多発テロの報復としてアメリカ軍により倒されたタリバンが再びアフガニスタンを奪取した。タリバンとは何者か。2001年に買ったものの積読だった田中宇さんの「タリバン」(光文社新書)を読んだ。

★ 第二次世界大戦後のアフガニスタン。冷戦下で、ソ連とアメリカの思惑に翻弄される国家。西洋型の近代化を目指す人々と社会主義化に発展を目指す人々。さらにはイスラム教の教えに基づき、政教一致の国づくりを目指す人々。自国内での政争に大国の思惑が交錯し、民族間、派閥間、宗派間で対立が絶えず、結局、テロに活路を求める過激派。

★ 今回、タリバンが政権を奪取し、撤退する米軍機に群がる人々の映像は、ベトナム戦争のサイゴン陥落を見るようだ。

★ カブール大学の教師や学生を中心に社会主義を目指す勢力とイスラム主義に基づく国づくりを目指す勢力が醸成されていった様子は興味深かった。ビンラディンの動きや彼を取り巻く諸勢力の動きは、幕末の日本を見るようだ。国内の争乱は近代化には不可欠なのだろうか。

★ ジャーナリストの文章は学者が書く小難しい本とは違って、とても読みやすかった。アメリカで右派が勢力を伸ばすという田中さんの予言は、トランプ大統領の誕生で見事に的中した。

★ ソ連の覇権主義(アフガン侵攻)、アメリカの資本主義、パキスタンはパキスタンで問題を抱え、サウジやトルコもアメリカとの関りで、不安定になりがちだ。古代史、肥沃な三角地帯をめぐって、多くの国家が覇権を争い、成立と滅亡を繰り返してきた。時代はよりグローバルになり、スペイン・ポルトガル、イギリス・フランス、アメリカ・ソ連と役者は変われど、超大国の覇権争いは後を絶たない。人類が滅ぶまで、サル山の争いは続くのだろうか。
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読書感想文

2021-08-18 19:48:46 | Weblog
☆ 夏期講座は4分の3が終了。夏休みもあと1週間だ。

☆ コロナ大流行に真夏の長雨。歴史に残る年になりそうだ。

☆ 緊急事態宣言が出ようと、若い人たちの動きは活発だ。周りで話を聞いていてハラハラする。

☆ さて、中学生の夏休みの宿題で苦労するのが、読書感想文と理科の自由研究。十分な指導がないまま、当たり前のように出されるから、大概の生徒は苦しんでいる。

☆ 読書感想文、一時期は、ネットのコピペや毎年同じものを提出と宿題としての意味が薄れ、授業中に書かせたり、任意の提出だったりしたが、最近、また復活した。

☆ ファンタジー系やミステリー系は書きにくいので、クラブ活動を題材にした作品を勧めた。

☆ ところで、最近、教職員や小中学生のコロナ感染が増えている。予定通り新学期が始まるか、心配なところだ。
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奥田英朗「真夜中のマーチ」

2021-08-14 19:55:12 | Weblog
★ 週末、少し時間ができたので、読みかけだった奥田英朗さんの「真夜中のマーチ」(集英社)を読み切った。

★ まっとうに生きてる人から見ればどうかと思うような人々。そうした連中が10億円争奪戦を繰り広げる。

★ イベント業を営む横山(ニックネームはヨコケン)。イカサマのお見合いパーティーで食いつないでいるが、最近は経営も苦しい。そんな折、財閥の御曹司がパーティーに。三田物産の三田(ニックネームはミタゾウ)。ところが財閥とは何の関係もなかった。そんな二人が、渦の中心となり、富豪の娘でありながら父親と不仲の黒田(クロチェ)やヤクザの「フルテツ」、チャーニーズ強盗団が絡んで、話はだんだんややこしくなる。

★ 果たして、ヨコケン、ミタゾウ、クロチェは10億円を手にすることができるのか。

★ 人物が交錯し話はもつれていくが、意外とストレートな終わり方だった。読みながら映像が浮かんでくるが、実際この作品はドラマ化されているという。そちらも観てみたい。

★ さて、東京都のコロナ新規感染者が連日5000人を超え、全国では20000人を超えたというが、驚きも薄れ、だんだんニュースに鈍感になっていく。数字が増えても、どうも他人事のように感じる。コロナ慣れというやつか。
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三災七難

2021-08-12 21:28:29 | Weblog
★ コロナ・デルタ株の猛威が止まらない。その上、異常気象による水害が進行中だ。日蓮さんの「立正安国論」、その中で引用されている仏典の三災七難を思う。

★ 飢饉による物価高騰、戦乱や革命と言った紛争、そして伝染病の流行を三災というらしい。七難は更に細かく、疫病、他国からの侵略、国内の反乱、天体の異変、日食や月食、季節外れの風雨、干ばつを上げている。

★ 「立正安国論」では相次ぐ災難は人々が正法を誹謗し、邪法を信じることから起こるという。今の時代から見ると少々まゆつば物だけれど、自然の乱れが人々に不安を与え、それが結果として争乱に発展するというのは道理だ。

★ 当時は鎌倉時代で、政権を握っていたのは北条氏一族。元の襲来(元寇)に対処する幕府の様子は大河ドラマ「北条時宗」にも描かれていた。

★ 今の時代に時宗が出現すれば、現今政府の泥縄的危機管理をどう見るであろうか。

★ コロナの新規感染者数を見て大慌て、場当たり的対応に、しっかりとした理念がないから朝令暮改の繰り返し。「イソップ」のオオカミ少年のように、瀬戸際、正念場をくり返し、緊急も日常的になれば全く緊急ではない。はぐらかすばかりで、本音の見えない政権リーダーの言葉に、人々の心は動かず、最後は開き直って「自己責任」に丸投げだ。「ワクチン大明神」でも祀ればどうか。

★ なんか世の中めちゃくちゃになりつつあるように感じる。
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中島河太郎「推理作家協会四十年」

2021-08-10 14:34:03 | Weblog
★ 日本推理作家協会70周年アンソロジー「夢現」(集英社文庫)から、中島河太郎さんの「推理作家協会四十年」を読んだ。

★ 検閲が厳しかった戦争が終わり、探偵小説は「読物界の寵児」となったという。昭和21年、江戸川乱歩を中心に懇親会のような「土曜会」が結成され、それが翌年「探偵作家クラブ」になったという。草創期は作家クラブとはいいながら試行錯誤の連続で、乱歩の影響力が大きかったから外部からは「乱歩クラブ」などと囁かれたという。

★ 昭和38年に社団法人化し、名称も「日本推理作家協会」と変えられた。乱歩の理事長引退を機に、個人サロンからの脱却を図ろうとしたという。

★ 作家って結構我が強そうだから、組織化するのは大変でしょうね。

★ 私はかつていくつかの学会や研究会に入っていたが、組織というものはどこもよく似たものだと思った。こういう沿革記は読者にとってはどうでも良いことだが、将来の研究者にとっては貴重な資料となる。

★ さて、70周年アンソロジー「夢現」、日本推理作家協会の歴代理事長の作品を集めたというから、実に豪華な顔ぶれだ。江戸川乱歩、松本清張、生島治郎、阿刀田高、北方謙三、逢坂剛、大沢在昌、東野圭吾、今野敏など。女性はいないんだね。
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ドラマ「ひねくれ女のボッチ飯」

2021-08-09 17:34:34 | Weblog
★ 夏期講座は半分終了。後半戦に入る。

★ 今日は時間がなかったので、昼食はセブンイレブンの冷凍炒飯。下手な中国料理店顔負けのうまさだ。「孤独のグルメ」は週1だし、「ゲキカラドウ」は見終わった。ということで、「ひねくれ女のボッチ飯」を見ながら食べた。

★ 飯豊まりえさん演じる女性。いろいろと訳ありらしく、今はコンビニでバイトの日々。7か月付き合ったカレからも別れを告げられ、やけっぱちになっていたところ、SNSでハンドルネーム「ホワイトホース」の投稿記事に出会う。そこでは、大衆的なグルメの写真にちょっと長いメッセージが添えられていた。

★ そのメッセージに勇気づけられ、いつしか彼女は大衆食堂(女性一人では入りづらい店構えだが、だんだんその世界に馴染んでいくところが面白い)を食べ歩くことに。心象風景をモノローグで語るところは「孤独のグルメ」と似ている。第1話は中華料理店のカツカレー、そして今日は第2話を観た。第2話は大衆食堂の生姜焼肉定食。

★ 豚の生姜焼きが実にうまそうだ。何といってもご飯が超うまそうに見える。思わず、セブンイレブンで冷凍の生姜焼きを買ってきた。

★ しばらくはこのドラマをおかずに、食事をしよう。
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