強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書 663)神谷 秀樹文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
★ 世界経済が崩壊しつつある。私達は9・11で貿易センタービルの崩壊を目の当たりにした。同時多発テロは、想像を絶する、まさにありえない事件だったが、今の経済状況に同様な感じを受ける。まさに、私達は今、世界恐慌を体験している。
★ 「強欲資本主義 ウォール街の自爆」は、実にタイムリーな書である。今現在起こっていることが、どうしてこんなにスピーディーに出版できたのか、まずその点に驚いた。たぶん著者は今日のありさまを既に予見していたのであろう。
★ 長年ウォール街に身を置き、その裏と表、その正体を知り尽くしている著者だからこそ、今日の状況とその原因を見抜けたのであろう。マネーゲームに堕してしまった資本主義の変質を身をもって感じているからこそ、これほどまでに説得力のある文章が書けるのであろう。
★ 筆者は「世界バブルの大崩壊」を強欲と拝金主義の帰結と捉える。カネに群がる投資銀行、ファンドの人々の姿から強欲資本主義の本質をズバリと見抜き、その崩壊が今後の世界をどう変えていくのかを見通している。
★ 今尚、病状は進行中で特効薬もないし、処方箋は手探り状態だ。そんな中、著者は「共感」の回復などによる新しい資本主義の可能性も予言している。
★ 実に面白い本だった。「資本主義」の失敗の背景がよくわかった。資本主義は人間の欲望を巧みに利用した経済体制だが、倫理観や節度が失われたなら「欲望」が暴走、人間がカネの奴隷となってしまうことがよくわかった。「欲望」といったものは破裂するまで際限なく膨張することがよくわかった。
★ 以前、ある本で「創造的利他主義」といった言葉を知ったが、「欲望」をいかにコントロールできるのか、新しい技術革新と並んで、それはゼロ成長時代の人間に課された試練であろう。