じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

今村夏子「七月三十一日晴れ」

2024-09-28 19:06:55 | Weblog

★ 異常な猛暑も一段落。今日は近隣の小学校の運動会だった。ただ「今」に生きている子どもたちのパワーに圧倒される。頼もしい。

★ さて今日は、今村夏子さんの「七月三十一日晴れ」(「新潮」2024年10月号所収)を読んだ。

★ 先日、京都新聞文化欄、渡邊英理さんの「いま、文学の場所へ」で紹介されていたので読んでみたくなった。

★ 紀伊水道に面する人口四千人ほどの小さな漁村町。そこにある旅館に住み込みで勤める女性が主人公。彼女はこの町を訪れ、住み込みで働き始めてからすでに30年。かつての新米スタッフも今ではベテラン従業員だ。

★ この30年。町は大きく変わった。アニメの聖地ということで来訪者も増えた。旅館の名前も随分とハイカラになった。新米スタッフを優しく支えたかつての先輩スタッフは旅館を離れ、今では彼女が新人の面倒を見ている。

★ 今年も新たな新人を迎えた。何か訳ありな様子。年の差同様、最初は距離を置いていた二人だが、だんだんと気ごころが知れてくる。

★ 読み終えて、先ほどの新聞記事を読む。その記事には原倫子さんの挿絵が描かれている。「ああ、あの場面か」と思わず心が和む。

☆ 世相は、政党のトップが軒並み入れ替わり、今秋の衆議院総選挙、来夏の参議院選挙と政治の季節が続きそうだ。内政、外交共に課題が山積。国を問わず分断が進む中、政界再編の可能性も残る。まさか日本では「CIVIL WAR」は起きないだろうが。

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映画「シュリ」

2024-09-22 14:35:29 | Weblog

★ アマゾンプライムで韓国映画「シュリ」が配信されていたので、観た。1999年の作品で、ずっと以前に観た覚えがある。

★ 当時観て、初めて韓国映画は面白いなあと思った。それから「JSA」や「猟奇的な彼女」と観るようになった。「シュリ」が公開されて25年。ずっと動画配信されなかったので、どうしたのかと思っていたが、権利関係がややこしかったらしい。

★ やっとこの度、再上映、配信できるようになったそうだ。それもデジタルリマスターで、画像が美しい。

★ 「北」の工作員が「南」に潜入し、テロ活動を行っている。中でもある女性工作員は数々の暗殺を実行し、「南」の情報機関からマークされていた。

★ 南北は対立を続けながらも、一方で両政府高官による和平・統一の動きも見られた。そんな折、「北」の反政権部隊が「南」での大規模テロを計画する。「南」の情報機関は彼らを阻止できるのか。そして謎の女性工作員とは、という作品だった。

★ アクションと悲恋の対比が良かった。出演しているのは「キム・サブ」のハン・ソッキュさん。「パラサイト 半地下の家族」などでコミカルかつシリアスな演技が光るソン・ガンホさん。「北」の戦闘部隊の隊長役は「オールドボーイ」などのチェ・ミンシクさん。女性工作員役は、キム・ユンジンさんだ。このメンバーだけでも韓国映画界の歴史を見るようだ。 

★ 最初の「北」の戦闘員訓練の様子は、日本のコミック「あずみ」を思い起こした。競技場を舞台にしたテロは映画「ブラック・サンデー」を思い起こした。

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福田和也「甘美な人生」

2024-09-21 16:28:15 | Weblog

★ 入試問題に評論文がよく出題されるので、仕方なく読んでいる。

★ 私が大学を受験する際は、川副国基著「現代評論」(学燈文庫)を読んだ。そこには、阿部次郎、安倍能成、、土居光知、小泉信三、和辻哲郎、岡崎義恵、三木清、小林秀雄、唐木順三、桑原武夫、伊藤整、亀井勝一郎、中村光夫、丸山真男、加藤周一といった人の作品が抜粋されている。なかなかの顔ぶれだ。

★ 時代は変わって、最近では、鷲田清一、内田樹、河合隼雄、村上陽一郎、山崎正和、池上哲司、河野哲也、池内了といった人の作品がよく取り上げられているようだ。顔ぶれを見ると、高校の国語教科書の影響がありそうだ。

★ 柄谷行人や吉本隆明、江藤淳や福田和也といった人々の作品も出題されるが、ちょっと癖が強いかな。

★ 今日は、福田和也さんの「甘美な人生」(ちくま学芸文庫)から、巻末の表題作を読んだ。後記によると「甘美な人生」は、福田さんの最初の文芸批評集であるという。

★ 他の評論に違わず、言葉遣いは難しいが、裏表紙の要約がありがたい。「この世の如何なる酸鼻であろうと許容し、愚劣で、無意味な生存を肯定する。此岸を「彼方」として生きる明確な意志さえあれば、人生は『甘美』な奇跡に満ち溢れている」

★ 「三つばかりなる捨て子」のエピソードは「なるほど」と思った。

★ 「文学者としての正体は・・・ぽおっと遊んでいる処にある」というところも良かった。

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村上春樹「かえるくん、東京を救う」

2024-09-18 15:40:06 | Weblog

★ 残暑にも程がある。外に出て人に会うたびに「暑いですね」があいさつ言葉になってしまった。

★ この暑さ、どうやら今週までのようだが、地球がおかしくなってきているのかも知れない。(温暖化のあとに急激な寒冷期、いわゆる氷期が来るなんて説もある。)

★ 不条理ということで、今日は村上春樹さんの「神の子どもたちはみな踊る」(新潮文庫)から「かえるくん、東京を救う」を読んだ。

★ 信用金庫融資管理課に勤める片桐がアパートに帰ると、そこに巨大な「かえる」がいた。状況が呑みこめず、呆然とする片桐。かえるは(「かえるくん」と片桐に呼ばせる)、近々東京直下で地震が起こるという。それは「みみずくん」の仕業で、東京を救うためにみみずくんと一緒に戦ってくれと片桐に依頼する。

★ 腕っぷしが強いわけでもなく、むしろパッとしない片桐はなぜ自分に白羽の矢が立ったのか不可解に思うが、焦げ付いた融資の回収で反社の人々と渡り合ったこともある。よくわからないながらも「かえるくん」と共に戦う決心をしたのだが、そんな彼に不幸が。

★ 「何が夢で何が現実なのか」

★ カフカの「変身」のような強引な場面設定。「かえるくん」は何かの象徴なのか。この作品は結局何が言いたいのか。そもそもが意味を問うことに意味があるのか。そんなことを考えさせられた。

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垣根涼介「信長の原理 上」

2024-09-15 20:19:56 | Weblog

★ 垣根涼介さんの「信長の原理」上巻(角川文庫)を読み終えた。とても面白い作品だ。

★ 信長の伝記でもなければ、従来からあるような歴史小説でもない。あえて言えば、「経営」の教科書だ。

★ 信長が「パレートの法則」を学んだはずもない。しかし、彼は自然を観察し、合戦を経験する中で、その法則を知ったとしている。

★ 前半、信長の幼少期については、山岡荘八作の「織田信長」(講談社文庫)と同じ道を辿るが、尾張を統一し、桶狭間で今川義元を討ってからは、彼の戦略眼が研ぎ澄まされる。

★ 上杉や武田を観察し、そのカリスマ性や資源の豊かさを分析。自らの欠ける点を自覚し、彼は尾張に人を集める政策を実行する。人を集め、町を栄えさせ、物流を盛んにし、そこから富を得る。富は軍備増強に生かされる。

★ 人物眼も秀でている。出自がどのようなものであれ、実力があれば積極的に採用する。一方古参の者でも、働かなければ排除する。それだけ徹底できるのは、彼なりの基準がしっかりしているからだろう。

★ かつて敵味方として戦った人物でさえ採用する。極悪人と評される松永弾正でさえも。貸しをつくって働かせる術も見事だ。荒々しい世の中でも、貸し借りに律儀なのは武人の仁義か、矜持か。

★ 木下藤吉郎の地頭の良さ、明智光秀の明晰さも際立っている。

★ 信長の天下布武の戦いはいよいよ佳境に入っていく。下巻を読み進めよう。

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坂東眞砂子「隠れ山」

2024-09-13 23:53:33 | Weblog

★ 久しぶりに荒井由実(松任谷由実)さんの「雨の街を」を聴く。この曲を聴くと、みつはしちかこさんの「小さな恋のものがたり」が浮かんでくる。何巻だったか確かアジサイの描かれた表紙。

★ 学生時代。今となっては戻ることもできないが、切なくそして良い時代だったと思う。

★ 今日は坂東眞砂子さんの「神祭」(角川文庫)から「隠れ山」を読んだ。実直な公務員の男性がある日失踪した。村の消防団が必死に探したが遂に見つからなかった。

★ それから数年。村では数々の目撃談が広がる。山で失踪した男性と会ったという話。男性は数々の話をするがそれには実際にあった醜聞を誇張した話も。当事者にとっては叩けばホコリがたつある話だが、迷惑千万。

★ 果たして男性はなぜ失踪したのか。

★ 都市伝説や陰謀論もこのように広がるのかも知れないと思った。

★ 2週連続の三連休。どのように過ごそうか。

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高橋弘希「指の骨」

2024-09-12 16:09:02 | Weblog

★ 今年の残暑は酷過ぎる。

★ さて今日は、高橋弘希さんの「指の骨」(新潮社)を読み終わった。南方の島で負傷しながら戦う一人の兵士の目を通して、戦争を描いた作品。

★ 兵士の視点で戦争を描いた作品としては、大岡昇平さんの「野火」を思い起こす。「指の骨」は戦後30年を経て生まれた作者が描いたところが特徴だ。

★ 「指の骨」とは、戦死(病死も含めて)した兵士の遺骨代わり。

★ 現代の日常にあっても苦しみは身近にある。先の戦争と限定せずとも、極限に生きる人間の有様と捉えれば親しみがわく。

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宇能鴻一郎「花魁小桜の足」

2024-09-10 18:32:27 | Weblog

★ 宇能鴻一郎傑作短編集「姫君を喰う話」(新潮文庫)から「花魁小桜の足」を読んだ。

★ 孤児として育った小桜は、花魁として長崎・出島で生きている。時代は幕末。小桜はオランダ船の老船長に気にいられ、娘のごとくかわいがられていた。そんな折、船長は国に帰ることに。

★ 再び会えぬことを知り、彼女はある隠れキリシタンから、入信し殉教すれば天国で会えると諭される。

★ 年末の絵踏。そこでキリシタンだと分かれば張り付けられ殉教者となる。彼女は次第に覚悟を決めていくのだが・・・。

★ 最後にはどんでん返しが描かれている。

★ 武家社会の虚構。主君に隷属する武士にとって武士道は都合の良い方便だ。切腹するにも、彼らは「自発的であることでかろうじて自尊心を保」っているという。卑猥な芸能で現世の苦しみからささやかな解放を得る庶民もまた然り。

★ この作品にはそうした世相への批判とエロチックなフェティシズムが描かれている。

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池永陽「シャツのぬくもり」

2024-09-09 17:19:47 | Weblog

★ 無性にコーヒーが飲みたくなった。行きつけの喫茶店が臨時休業だったので、仕方なくマクドナルドでアイスコーヒーのイートイン。専門店には及ばないが、ファーストフード店のコーヒーもなかなかうまくなった。

★ コーヒーを飲みながら本でも読もうとしたのだが、隣の席のご婦人お二人の会話が耳に入って集中できない。声が大きい上に、どうでもよい話を繰り返している、若い人たちが耳につけているワイヤレスイヤホンでも持ってくればよかった。

★ 仕方なく、2ページも読み進めないうちに退散。

★ コーヒーに未練があったので、今日は池永陽さんの「珈琲屋の人々」(双葉文庫)から「シャツのぬくもり」を読んだ。

★ ちょっとわけありのマスターが親から引き継いで珈琲屋を営んでいる。そこに日々商店街の人々がやってくる。今回はクリーニング店を営んでいた夫婦が主人公。どうやら夫が浮気をしているらしい。結婚して25年。店では重い鉄製のアイロンを持ってもって生活を支え、台所では包丁で夫と息子を養ってきた。その結末が夫の浮気か・・・。

★ 妻はどうしたものかと思い悩んで、珈琲屋のドアを開けた。

★ 25年生活を共にして今さらという感じもするが、25年生活を共にしたからこその倦怠期なのかも知れない。離婚するか、仕返しに自分も浮気をするか、それとも・・・。

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乃南アサ「福の神」

2024-09-08 22:23:41 | Weblog

★ 残暑が厳しい。洗濯物が乾くのはありがたいが。

★ さて今日は、乃南アサさんの短篇集「不発弾」(講談社文庫)から、「福の神」を読んだ。

★ もはや還暦に近い女性が経営する小料理屋「茜」。今夜もなじみの客や新規の客でにぎわっている。

★ 客商売をやっていると、好きな客も嫌な客もやってくる。好悪を顔に出さず笑顔で裁くのがプロの技。今、女将が嫌っているのは大手化粧品会社の次長という客。常連で通ってくれるのはありがたいが、酒の飲み方はきれいとはいいがたい。接待なのか、相手によって性格を変えるし、また酒が進むと絡みだす。

★ そんな嫌な客がいると思えば、最近もう一人、好感の持てるなじみの客が増えた。彼もまた化粧品会社に勤め、どうやら大手会社をスパイしている様子。

★ 物語は小料理屋の風景を描きながら、女将の過去に迫っていく。エンディングは思わずホロリとくる。

★ 私など自宅で塾稼業をしていると、仕事上がりに外で一杯などはまずない。生活時間が異なるため、友人からの誘いも何度お断りしたことか。

★ 20代のサラリーマン時代。アルバイトで「記者」をしていた時代は、赤坂の料亭や北新地のクラブで接待も経験した。社費なのでヘネシーの味も覚えた。エスカイヤークラブにも行ったなぁ。学生時代は主にパブ。社会人になってからは居酒屋も増えてきた。遠く40年前が懐かしい。

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