じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

髙村薫「父が来た道」

2024-11-30 19:36:18 | Weblog

★ ドラマ「遺留捜査」(2021)の第7話には「闇バイト」が登場する。

★ 廃業したキャバレーで男性の刺殺体が発見される。男性はあるヤクザ組織の幹部だが、実は潜入捜査をしている警察官だった。その組織は特殊詐欺に関わっているらしい。

★ 今、一人の若者が「闇バイト」に応募している。どうやら強盗をするようだ。その手口(調査グループが押し込み先を調べ、実行グループが強盗する)が最近流行りの事件と類似している。(ニセ警官が後始末をするところは違っているが)

★ 上川隆也さん演じる糸村刑事は、遺留品の「石」に注目し、真相に迫る(犯人は意外な人物だった)。最後は親子愛にほろっとさせられる。「闇バイト」とは、このドラマに先見の明があったのか。

★ さて今日は、髙村薫さんの「地を這う虫」(文春文庫)から「父が来た道」を読んだ。副総理まで務める政界のドンの運転手が主人公。

★ 政界のドンも最初からその地位にあったわけではない。魑魅魍魎蠢く政界の中で権謀術策を駆使し、ここまで上り詰めてきた。そしてこのボスを支えてきたのが地元の後援会の会長だ。ところが贈収賄事件の罪を一人被って、彼は今収監されている。

★ 主人公の青年はこの会長の息子で、ボスと父親との縁で運転手を務めて3年がたつ。もともと青年は警察官、それも贈収賄事件を担当する捜査2課に配属されていたが、父親の事件を経て職を辞した。

★ この青年運転手の目を通して、政界の実態、政界のドンが見ている世界を垣間見る。官庁、業界、政治家の癒着はなくならないものか。この三者に警察、検察が加わるともはや泥沼だ。

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千葉雅也「デッドライン」

2024-11-26 01:20:54 | Weblog

★ アマゾンで注文したコピー用紙、ヤマト運輸で届けられる予定なのだが、予定日を過ぎても届かない。問い合わせてみると、配送ミスでなんとオキナワに行ってしまったとか。優先的に27日には届けるというが、いったい何があったのか。ミステリーだ。

★ 韓国ドラマ「悪霊狩猟団カウンターズ」を観た。世にはびこる悪霊をカウンターと呼ばれる人々が退治し、召喚(除霊)するというもの。ストーリーは少々じれったく感じるが、それなりに面白かった。主人公の高校生ソ・ムン役のチョ・ビョンギュさんは菅田将暉さんに似た感じがした。

★ 読書は、千葉雅也さんの「デッドライン」(新潮文庫)を読み終えた。2019年の野間文学新人賞受賞作。

★ 主人公は哲学を専攻する大学院生。修士論文に追われながら、恋愛遍歴を重ねる。といっても同性との関係だ。

★ 哲学の話は難しい。ドゥルーズって誰?「自由になる。それは動物になることだ」というフレーズは考えさせられる。カントやハイデガーも難しいが、現代哲学、特にフランスの哲学は更に難しい。

★ 哲学の本を読んでいると「コトバ」というのがもどかしくなる。哲学者は自分の概念を何とか伝えようと独特な専門用語や比喩表現を使うから、他者にはなかなかわかりづらい。外国語となると尚更だ。

★ 「デッドライン(提出に締切期限)」が迫り焦る気持ちはよくわかる。私も何度か経験した。

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吉田修一「グリンピース」

2024-11-25 01:06:00 | Weblog

★ 期末テストが終わった終末。今日は午後6時には生徒がいなくなったので、ちょっぴりのんびりできた。U-NEXTでドラマ「遺留捜査」スペシャルを何本か観た。昔の警視庁編と最近の京都府警編。それぞれに面白かった。

★ 夜、吉田修一さんの「熱帯魚」(文春文庫)から、「グリンピース」を読んだ。就活中の若い男。自分で借りている部屋はあるものの、今は彼女の部屋に入り浸っている。

★ 男には入院中の祖父がいて、祖父の年金で食いつないでいる。他に身寄りがないので時々見舞いに行くが、弱った人を見るのはどうも苦手なようだ。そもそもがわがままな性格なのか、仕事が決まらないいらだちなのか、男は彼女にグリンピースの缶を投げつけた。男はグリンピースが好物なのだ。

★ あまりの男の身勝手さに彼女は部屋(もともと自分が借りている部屋なのだが)を出ていくのだが。

★ 仲が良いのか悪いのか。相性が合うのか合わないのか。当事者たちにもわからない様子。煮え切らないカップルがうまく描かれている。不平不満を言うなら、いっそ独りで生きてゆけばよいのに。そんなことを思うのは年をとったせいだろうか。二人が仲直りをして作った酢豚はおいしそうだった。

☆ 読書中の作品

歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」探偵見習の男がヤクザ組織に潜入しているところが面白い。

奥田英朗「オリンピックの身代金」1964年の東京オリンピック。変わっていく東京の様子がよくわかる。

百田尚樹「永遠の0」特攻で戦死した祖父のことを孫が調べる。果たして祖父はどんな人だったのか。

辻井喬「終りなき祝祭」旧家出身の新進陶芸家が女性解放運動で活躍した女性と結婚する。

下村敦史「闇に香る嘘」目の不自由な主人公。彼が「見る」風景が巧みに描かれている。

千葉雅也「デッドライン」哲学の話と同性愛。刻々と迫る論文の締め切り。

長嶋有「三の隣は五号室」変な間取りのアパートに住んだ人々の遍歴。

萩原浩「神様からひと言」サラリーマンが主人公。

垣根涼介「君たちに明日はない」リストラ請負会社に勤める男が主人公。

折原一「帝王、死すべし」あの小学生刺殺事件がモチーフか。

立松和平「光る雨」連合赤軍事件を描く。

東野圭吾「禁断の魔術」ガリレオシリーズ。

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村上龍「限りなく透明に近いブルー」

2024-11-22 15:51:34 | Weblog

★ 中学校の期末テストが終わる。次は高校の期末テストと冬期講座の準備。塾業界の年末年始は修羅場と化す(笑)。

★ さて今日は、村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」(講談社文庫)を読み終えた。この作品も文庫が発行された1979年から80年ごろに1度読んでいるから2度目になる。

★ 第19回群像新人文学賞(1976年)及び第75回芥川賞受賞作。とにかく衝撃的なデビューだった。

★ 全編、特に前半の麻薬、乱交、暴力シーンは凄まじい。文章がうまいだけに映像がリアルに浮かんでくる。

★ 主人公のリュウは米軍基地のある町に住んでいる。若者たちが集まって開かれるパーティー。麻薬の煙、錠剤、注射で酩酊した彼らは男女入り乱れて性交に浸る。

★ やがて仲間たちはそれぞれの道を進み、リュウは薬のせいで精神を病んでいるようだ。

★ どうしようもない閉塞感。何かから逃避するような刹那感が漂う。

★ 少し前の時代には破壊すべき旧体制があった。うやむやの内に体制は維持され、暴力的ないらだちが内向しているかのようだ。

★ ポケットの中で砕けたガラス片。それは夜明けの空気に染まり、限りなく透明に近いブルーとなる。リュウはこのガラス片のように「限りなく透明に近いブルーになりたい」と思う。

★ 彼を残して時代は流れているようで寂しいエンディングだった。彼はこれからどのように生きていくのだろうか。

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本城美智子「十六歳のマリンブルー」

2024-11-21 18:15:16 | Weblog

★ 中学校の期末テスト1日目が終わる。あと1日。期末テストが終われば次は冬期講座の準備だ。

★ さて今日は、本城美智子さんの「十六歳のマリンブルー」を読み終えた。第10回「すばる文学賞」(1986年)受賞作。私は1987年3月26日に一度読み終えたとメモがある。

★ 江ノ島に住む16歳の女子高校生が主人公。大きな悩みがあるわけではなく、夢や希望があるわけでもない。日々を何となく生きている。

★ ふと会った小学生時代の同級生の男の子。別に心中しようとしたわけではないがオーバードーズに。

★ 会話文と地の文が混在。「」のない文体が特徴的だ。

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重松清「流星ワゴン」

2024-11-17 16:37:38 | Weblog

★ 昔、「ウルトラQ」のエピソードに「あけてくれ」というのがあった。仕事と生活に疲れたサラリーマン、彼の乗った電車が時空を超えた旅に出るという話だった。

★ また、人間は死の間際に自分が歩んだ生き様を走馬灯のように見るともいう。

★ 今日は、重松清さんの「流星ワゴン」(講談社文庫)を読み終えた。一言でいえば父と息子の物語。

★ 主人公の男性は人生に行き詰っていた。息子は中学受験に失敗し、仕方なく通うことになった公立中にはなじめず不登校に。妻はどうやら見知らぬ男と不倫を重ねているようだ。そして男性はリストラされ、失業の身に。

★ 男が、終電が終わった駅前のベンチで、ウイスキー瓶を片手に「もう死んでもいい」とぼんやりしていると彼の前に一台のワゴン車が止まった。助手席から男の子が笑顔で「乗ってよ」と誘う。

★ ワゴン車に乗っているのは少年とその父親らしい。男はこのワゴン車に乗って、今までの人生を振り返る。どこで道を間違ったのか。どうすれば良かったのか。男は、現実と仮想の世界を行き来しながら考える。

★ 途中で、男の父親(なぜか今の男と同じ38歳)も乗車し、物語が膨らんでいく。

★ 果たして人生はやり直せるのだろうか。

★ 幸福な毎日を送ってきたのに、振り返ってみると不幸になっている、というのが印象的だった。

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平中悠一「She's Rain」

2024-11-16 16:44:39 | Weblog

★ 今日は一日中鬱陶しい天気。

★ 平中悠一さんの「She's Rain」(河出書房新社)を読んだ。1984年度「文藝賞」受賞作。

★ 私は1987年3月24日に1度読み終えたとメモしてある。「久々に快い小説だった。テーマはいたって簡潔。文章も飛ぶように流れていく。ただそうした中で、純粋な想いがまぶしいほどに輝いている。17歳だからもてる感覚。17歳だから放てる輝き。それは私のとっては青春への郷愁かも知れない。大上段に構えて恋愛を論じるのでもなく、素直に自分の気持ちに忠実に書いていることが魅力的だ。現代の“私小説”はこういう形になるのであろうか」

★ なかなか絶賛している。それからおよそ40年。今読むと何かつまらなかった。ある短い期間の出来事をスケッチのように描いているのは、村上春樹さんの「風の歌を聴け」のようだ。カタカナが多いのは、田中康夫さんの「なんとなく、クリスタル」のようだ。こうした傾向は、80年代の特徴なのだろうか。

★ ピュアな青春が胸に刺さらなくなったのは、私が年をとったせいだろうね。

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野沢尚「リミット」

2024-11-15 19:40:00 | Weblog

★ 野沢尚さんの「リミット」(講談社文庫)をやっと読み終えた。500頁を超える長い作品だった。

★ 連続児童誘拐事件。新たに一人の少女が誘拐された。警視庁は直ちに対応に当たる。身代金要求に備えて被害者宅には捜査一課特殊班捜査係が配置された。女性刑事、有働公子はその一人だった。

★ 身代金受け渡し、犯人側は運び役として公子を指定する。この誘拐事件の裏側で、もう一つの誘拐事件が起こっていた。公子の息子が拉致されていたのだ。息子の命を守るため、公子は独断で行動を開始する。警視庁では、刑事が犯人側と内通していたとの疑惑も。

★ 犯人たちが犯罪に至るまでの経緯。誘拐の目的や誘拐した子どもたちのその後。臓器移植の問題と絡めて国際的な犯罪にも言及する。

★ 稀代の脚本家の作品なので、ドラマのようにどんでん返しを繰り返して展開していく。描写が克明なので、少々長いなぁと思った。

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見延典子「もう頬づえはつかない」

2024-11-14 21:44:32 | Weblog

★ 中学校の期末テストが迫ってきた。日頃勉強しない子たちも押し寄せてくる。対策問題をつくるのに追われる。

★ とはいえ、合間を縫って、見延典子さんの「もう頬づえをつかない」(講談社)を読み終えた。1978年発表の作品。文芸誌の新人賞ではなく、大学の卒業論文(?)として書かれたのが異色だ。それでいて俗な新人賞作品よりも面白かった。

★ 主人公は大学生の女性。バイトで家賃を払い、何とか食いつないでいる苦学生だ。彼女には風来坊のような彼氏がいて同棲していたが、ふと出ていった切り1年間も音信がなかった。その間、彼女には新しい男ができていた。

★ 前の風来坊とは違って、清潔好きで小まめな男。彼女のことを大切にしてくれそうなのだが、彼女はあの風来坊を忘れることができない。そんな時、その風来坊が1年ぶりに帰ってきて、三角関係になってしまった。その上、彼女は妊娠をしてしまう。どうやら風来坊の子らしい。彼女が下した決断は。

★ ダメ男とわかっていても、ダメ男であるがゆえに尽くしてしまう。この女心はどういうことなのか。母性と言えばそれまでなのだが。追えば逃げていき、突き放すと甘えてくる。酒に酔っては言いがかりをつける。どうに厄介な男だ。

★ この作品は映画化され、主演の桃井かおりさんと奥田瑛二さんが印象に残っている。風来坊のダメ男役は森本レオさんだった。

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庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」

2024-11-13 15:41:03 | Weblog

★ 11月も中旬だというのに温かい。洗濯物がよく乾くのでありがたいが。

★ 高校生は公募制推薦の受験が始まる。最近の大学入試は夏休み明けの「AO(総合選抜型)入試」「指定校推薦」、11月から12月の「公募制推薦」、1月の共通テストを経て、2月から3月は一般入試と続く。実に長丁場だ。早く進路を決めたい高校生が増え、「指定校推薦」や「公募制推薦」に人気が集まる。

★ かつての京都などは(もう50年ほど前だが)高校三原則で、「高校は大学入試の予備校ではない」などと澄ましていたが、そんなことを言っているから「一浪」と書いて「人並」と呼ばす現状に甘んじていた。おかげで学生の街・京都は予備校が大盛況だった。(そんな京都の高校教育もすっかり変わったが)

★ 今や少子化の時代。現役合格は当たり前。善かれ悪しかれ、進路も多様化している。

★ そんな現状を思いながら、今日は庄司薫さんの「赤頭巾ちゃん気をつけて」(中公文庫)を読み終えた。第61回(1969年)芥川賞受賞作。

★ 主人公は当時東大一直線の日比谷高校3年生の「薫くん」。ところがその年、学園紛争の影響で、東京大学の入学試験が中止された。前年、東大合格者数で日比谷高校は灘高に首位の座を奪われた。東京では学校群制度が導入され、日比谷高校も変わりつつあった。

★ 東大入試が中止になったことを主人公はあまり気にかけていない。周りは「京大に行くのか」「一橋にするのか」「東工大にするのか」それとも「一浪するのか」と騒がしいが。

★ そんなことより、薫くんは左足親指の生爪をはがしてしまい、幼なじみの女の子との関係も微妙になり、年上の女性医師の魅力に胸をときめかせ、日々を送っている。

★ 独白調の文体が特徴的だ。薫くんは何かと饒舌な近所の奥さんが苦手だが、彼もまたなかなか饒舌だ。

★ 村上龍さんの「69」のような高校生もいれば、薫くんのような高校生もいる。「ブルーライトヨコハマ」が流行り、ピンキーとキラーズが人気だった時代。面白い時代だ。

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