★ 春期講座前半戦終了。春期講座はまだ受講者が少ないので負担は小さい。
★ 朝日新聞の「文芸時評」で古川日出夫さんが芥川龍之介の「歯車」を紹介していたので読んでみた。35歳でこの世を去った芥川の遺作だという。
★ 古典にテーマを求めた作品とは違って、私小説、心境小説といったところか。主人公は神経が過敏になり、十分に睡眠がとれず、底なし沼に落ちたようにもがけばもがくほどに苦しみが増幅される。
★ 彼は時々目に歯車を見るという。その後頭痛を発症するというから、今でいう片頭痛か。
★ 私も高校3年生から予備校生時代にかけて、ストレスからか片頭痛を発症した。最初は目の病気かと思い、町医者の眼科医の紹介で日赤で検査をするも原因がわからず、次いで府立医大で問診の結果、片頭痛ということになった。私の片頭痛の特徴は閃光暗点というもので、まぶしいような盲点が現れる。それに合わせて煙草の煙など匂いに敏感になり、その後激しい頭痛が襲った。鎮痛剤を飲み、横になっていれば嘘のように治るのだが、いつ発作が起こるかも知れないという不安感が強かった。
★ この片頭痛も、大学に合格し1年もたてば嘘みたいに起こらなくなった。やはりストレスだったようだ。
★ 芥川もまたストレスからの精神的な不調だったのだろうか。当時は強い睡眠薬が手に入ったから、それに頼ってしまったのか。
★ 「歯車」の物語は、知り合いの結婚披露宴に招待された話、義理の兄が鉄道事故で亡くなった話などが綴られていく。目に浮かぶ歯車とレインコートうぃ着た人物が不気味だ。それは死を間近にして見えた幻影だったのだろうか。
★ さて、古川さんの「文芸時評」では角田光代さんの「方舟を燃やす」(新潮社)、滝口悠生さんの「煙」(「文学界」2024年4月号)も紹介されていた。どちらも興味深い。