じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

池永陽「犬の写真」

2022-03-31 16:03:16 | Weblog
★ 春期講座は6日目。半分を超えた。今年も桜が美しい。4月になる。

★ 日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 隠された鍵」(講談社文庫)から池永陽さんの「犬の写真」を読んだ。

★ 69歳で亡くなった母の遺品整理をしている兄弟とその家族たち。きれいに整理された母親の行李から出てきた犬の写真。兄弟がまだ小中生だった頃、飼っていた「イル」という名の犬だ。その犬は母が拾ってきた雑種犬。親戚を転々として、不遇な少女時代を過ごした母が見過ごせなかった捨て犬だ。この写真を契機に、物語は長男・振一の回想に入る。

★ 自分の気持ちをうまく表現できず、家族を怒鳴りつけ、ときには暴力を振るった父。母は子どもたちを守るためにそんな夫に耐えていた。しかし、ある日、遂に堪忍袋の緒が切れる。行く当てもないのに家を出た母。束の間のことと高をくくっていた父。しかし、それが1週間となると、さすがに心配になってきた様子。振一が「イル」に導かれるままに、ある洋館を訪れると・・・。

★ 悲しくもほっこりしたエピソード。しかし深く読んでいくと、ちょっと怖い何かを感じる。


★ 私の家族もかつて犬を飼っていた。時期をずらしながら4匹。スピッツ、テリア、プードルと種類も違い、性質もそれぞれだった。そして仕方のないことだが、犬の寿命は人間よりも短く、それぞれとの別れを体験することになる。

★ かつて椎名誠さんの「犬の系譜」を読んだが、我が家も犬とともに変化を遂げてきた。犬猿の仲というが、犬と人間は結構良い関係を結んでいる。人間が理性を進化させたためか、それとも犬が人間の扱いに慣れたためだろうか。 

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石田衣良「伝説の星」

2022-03-29 17:05:53 | Weblog
★ 春期講座4日目。新年度の生徒もほぼ出そろった。今年度も頑張りたい。

★ さて、今日は石田衣良さんの「伝説の星」(日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 隠された鍵」講談社文庫所収)を読んだ。石田さんの「池袋ウエストパーク」シリーズの1編だという。

★ 果物屋の息子でありながら池袋界隈のトラブルシュータ―・真島誠。今回は往年のロック歌手がロック博物館を造るという話に巻き込まれる。裏には何か怪しい影が・・・。

★ 池袋に多彩な人脈をもつマコト。彼らをうまくプロデュースしながら、トラブルを解決していく。

★ 暴走族やギャングものはあまり好きではないが、このシリーズははまりそう。石田さんのうまさだろうね。


★ アカデミー賞授賞式でのアクシデントには驚いた。いつかは受賞作品を間違えたりしたが、ライブゆえの出来事か。ウィル・スミスの平手打ち、見事に決まったなぁ。何か映画の1シーンのようだった(日本のコメディアンでまねをする人がいるかな)。ぶたれたコメディアンを私はあまりよく知らないが、ああゆうイジリ(ブラックジョーク)が、アメリカの話芸にはあるのかな。

★ デンゼル・ワシントンがウィル・スミスに言ったという「最高の瞬間に悪魔は囁く。誘惑に負けるな。」は名言だ。
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ドラマ「セイレーンの懺悔」

2022-03-27 16:43:09 | Weblog
★ 麗かという形容がピッタリの初春の日曜日。贅沢にのんびり過ごすことができた。

★ 中山七里さん原作のドラマ「セイレーンの懺悔」(2020年)を観始めたら面白くて、最後まで(4回分)まとめて観た。

★ テレビ局の報道記者・朝倉多香美。彼女はいじめで妹を亡くし、それをきっかけに報道記者になったという。そんな彼女は東京都葛飾区で起こった女子高生誘拐殺人事件を追うことに。事件の背後に少女たちのいじめがあったことを知りスクープを手にするのだが、それは誤報だった。

★ 窮地に落ちた彼女だが、真相を粘り強く追い求めた結果、意外な事実が見えてきた。

★ 二転三転する展開が面白かった。スーとした美人ながらお嬢ちゃんぽさが抜けない朝倉記者(新木優子さんが演じる)と歴戦の垢が染みついたような先輩・里谷太一(池内博之さんが演じる)さんのペアが良い感じだ。

★ 最初は数字(視聴率)ばかりを追うテレビ局の体質(「報道」の仮面をかぶったバラエティーだと感じた)に辟易としたが、確かに報道でしか伝えられないことがあると、観終わったあと大分洗脳された。

★ 最近、無表情のヒール役が多い高嶋政伸さんだが、今回の刑事役は共感できた。

★ 音楽が良かった。キャスティング、脚本、演出どれもうまくいったようだ。サイレンの語源はギリシャ神話のセイレーンだということを知った。原作を読んでみたくなった。
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映画「ラプラスの魔女」

2022-03-26 19:40:57 | Weblog
★ 朝日新聞「オピニオン」の紙面。佐伯啓志さんの「『ロシア的価値』と侵略」が面白かった。「米国流の合理的思考に従ってきた日本にあっては、ロシアの突然の侵略はほとんど理解を超えたものにしか映らない。あえて理解しようとすれば、プーチンは狂気に陥ったとか、病気だとかいうほかない」と指摘。一方で「ウクライナ人からすれば、いつ何時、ロシア軍が攻め込んできても不思議ではなかったのであろう」という。歴史や「ロシア的価値」を語りながら、これからの世界と日本の状況に言及されていた。

★ 米ソ冷戦やソ連崩壊後のパックス・アメリカーナと言われた時代から数十年。アメリカの力の相対的な低下や中国の台頭で、世界は新たな帝国主義時代に入ったのかも知れない。行き詰まった資本主義が様変わりする過渡期なのかも知れない。国境線が流動的になりつつある。

★ ドラマ「ピカード 第2シーズン」第4話を観る。時間軸が歪み全体主義に陥った未来を修正するため2024年にタイムスリップしたクルー達。カギを握る人物・ワッチャーを見つけることができるのかというところ。瞬間瞬間の我々の行動が未来を変えているという。

★ 唯物論的にすべてが因果律に支配されているというと「ラプラスの悪魔」を思い起こす。ということで、東野圭吾さん原作の映画「ラプラスの魔女」(2018年)を観た。東野作品と言っても「ガリレオ」や「新参者」とは変わった感じ。

★ 温泉地で連続して見つかった遺体。いずれも硫化水素による中毒死。事件なのか事故なのか。青江修介教授が科学者として調査をするが、物語は意外な方向へ。現実から離れすぎているのであまり感情移入できなかった。「妖怪大戦争」のような気分で見ればよいのかな。脚本の問題か、それとも青江教授役の櫻井翔さんのセリフ回しの問題か。何かイマイチだった。すずちゃんは相変わらずかわいかったけれど。
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石持浅海「Rのつく月には気をつけよう」

2022-03-25 19:39:55 | Weblog
★ 春期講座が始まった。夏や冬ほどではないが、そこそこ生徒が集まっている。朝の8時半からレギュラークラスが終わる9時45分まで、仕事三昧な日が続く。

★ こんな時期、込み入った作品は眠気を誘う(高橋和巳さんの「悲の器」はなかなか読み進まない)。軽い作品、石持浅海さんの「Rのつく月には気をつけよう」(日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 曲げられた真相」講談社文庫所収)を読んだ。題から察しがつく。牡蠣が食べれるシーズンのことだ。

★ 期待通り、どんぶり一杯の生ガキが登場する。4月、食べ納めと言わんばかりに、いつものメンバーが集まって盛大な生ガキパーティーが開催される。毎回ゲストを招くのが恒例で、今日もメンバーの一人が友人を誘ってきた。

★ その友人、かつて生ガキでひどい食中毒を経験したという。それからというもの、ずっと牡蠣を避けてきたが、このまま食べず嫌いで終わるのは惜しい、ということで、トラウマを克服するために今回の参加となった。

★ 面白半分かそれとも同情してか、メンバーが食中毒の経緯を彼女に尋ねる。彼女の食中毒はどうやらノロウィルスによるものらしいが、この出来事の裏には何か陰謀があるようだ。推理好きの面々は好き勝手に憶測を膨らますのだが。

★ 生ガキ、若い頃は何度か食べたが、ここ数十年は食べていない。スーパーで売られている「生食用」を信じないわけではないが、なかなか一線を越えることができない。カキフライは美味しくいただいているのだが。ところで、最近は年中カキフライを見かける。お店の人に「大丈夫か」と聞くと、「冷凍だから大丈夫とのこと」。もはや「Rの月」は伝説になりそうである。
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連城三紀彦「白雨」

2022-03-24 17:56:37 | Weblog
★ 録画しておいたNHK「100分de名著 エドガー・アラン・ポースペシャル」第3夜を観る。取り上げられていたのは「黒猫」。酒が災いして猫殺しから、殺人に至る男の異常心理が紹介されていた。人間の心に潜む二面性が話題になっていた。

★ さて、今日は連城三紀彦さんの「白雨」(日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 曲げられた真相」講談社文庫所収)を読んだ。いじめが絡んだ学園モノかと思いきや、薄暗い雰囲気の連城ワールドに入っていった。

★ 祖母から母、そして孫娘へと3代続く物語。キーとなるのは血染めの着物。祖父が祖母を刺した32年前の無理心中事件。当時まだ少女だった母親は秘密を無意識の奥底に封じ込めてきた。しかし、娘のいじめ問題をきっかけで、その封印が解かれる。

★ 文章は少々込み入って、物語の迷宮に迷いそうだが、最後は「ああそうだったのか」と意外な結末に納得する。

★ 明日から春期講座。春期講座は2週間と短く、受講生も少ないが、スタートダッシュが勝負。早起きして8時30分からの授業に頑張りたい。
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薬丸岳「オムライス」

2022-03-23 16:08:45 | Weblog
★ 薬丸岳さんの「オムライス」(日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 マーベラス・ミステリー」講談社文庫所収)を読んだ。

★ 世の中には男運に恵まれない女性がいるものだ。小学生の息子を残し、夫は交通事故で急逝。母として生きることを誓いながら、ふと知り合った男性と離れられない関係に。息子も最初は懐いて再婚に至るが、実はその男、働かず、暴力を振るうどうしようもないDV男だった。更に、結婚前から、愛人がいたらしい。そんな男に息子は愛想をつかし、母親とも冷たい関係になっていた。

★ そんな折、住んでいるアパートが放火され、男が死んだ。最近近所で連続する放火魔の犯行と思われたが・・・。

★ 元法務技官の夏目刑事が活躍する。「オムライス」が決め手になったというが、エンディングは切ない。

★ 相棒シーズン20が最終回だという。録画しておかねば。最近は暇に任せて「CSI 科学捜査班」や今野敏原作の作品(「ハンチョウ」「東京湾臨海署安積班スペシャル」)を観ている。昨日のNHKドラマ「家出娘」は見逃してしまった。またオンデマンドで観よう。
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北森鴻「ラストマティーニ」

2022-03-22 15:36:29 | Weblog
★ 新型コロナのまん延防止措置が解除され、今夜から飲食店の時短が緩和される。ただ、東京電力管内の電力が逼迫しているということで、突然の大停電(ブラックアウト)が起こらないか気がかりだ。次から次へと困難は襲い来る。

★ さて、北森鴻さんの「ラストマティーニ」(日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 マーベラス・ミステリー」講談社文庫所収)を読んだ。主人公はバーを経営する香月圭吾。空調が故障して仕方なく店を臨時休業にした。休んだら休んだらでバーマンの性か、行きつけの店を飲み歩く。まずは、「BAR谷川」。70歳に近いだろうか、老練なマスターが絶品のカクテルを提供する店だ。

★ いつも同じ味を提供すること。今宵も香月は職人技を楽しんだ。そして最後にオーダーしたのがマティーニ。しかし、それはひどいものだった。香月はそれを指摘し、谷川は非を認めて謝罪した。日を置かずして、「BAR谷川」は店を閉めた。

★ 香月と後輩で同じく飲食店を経営する工藤は、谷川ほどのベテランがなぜあんな失敗をしたのかを語り合う。そして一つの結論に達する。

★ 「なん百回作ったマティーニの中のたった一杯の失敗作であっても、もしかしたら客にとって唯一無二の一杯かもしれない。そんなものを作ってしまった自分を責めないバーマンは、本物ではない」。商売をする人間は心しなければならない戒めだ。これは塾業界も同じだと思った。

★ しかし、谷川は失敗作を恥じて店をたたんだわけではなさそうだ。彼は何を思ったのか。

★ 私は酒に詳しくないが、作品に出てくる酒や料理が実にうまそうで、それだけでも満足できる。

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横山秀夫「罪つくり」

2022-03-21 19:01:08 | Weblog
★ 春分の日だというが、いつも通りの授業。しかし、その方が体調が良いいようだ。今週末からは春期講座が始まる。貧乏暇なしって感じだ。

★ さて、今日は横山秀夫さんの「罪つくり」(日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 マーベラス・ミステリー」講談社文庫所収)を読んだ。終身検視官・倉石義男の「臨場」シリーズだ。このシリーズは、どうしても内野聖陽さんのイメージが根付いている。

★ 今回のエピソードは倉石検視官は脇役で、若手の刑事と彼らの生い立ちに焦点が当てられている。そうはいっても事件は起こる。容疑者を落とそうとする刑事と自白を躊躇する容疑者の緊迫感が伝わってきた。

★ ところで倉石検視官、物語の中で胃がんだという箇所がある。痩せているのも気がかりだ。これからも活躍してほしいのだが。
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大岡昇平「野火」

2022-03-20 17:49:27 | Weblog
★ NHK「100分de名著」、「エドガー・アラン・ポー スペシャル」で取り上げられた「アーサー・ゴードン・ピムの冒険」、極限状態の中で、人肉を食べるシーンがあった。この作品に関連して、大岡昇平さんの「野火」が紹介されていた。太平洋戦争、フィリピン戦線、絶望的な極限状態に置かれたある日本兵の物語だ。

★ 本棚に昭和30年初版(昭和56年改版)の色褪せた文庫があったので読み始めた。読みながら映画化されていることを思い出し、早速観ることにした。

★ 「野火」は2度映画化されている。市川崑監督の1959年のものと、塚本晋也監督の2015年のもの。

★ 市川作品はずっと昔、1度見た記憶がある。ただ断片的にしか覚えていなかった。作品はモノクロだが、それが効果的だ。主人公の田村一等兵役は船越英二さんだが、その痩せ具合、演技が絶妙だ。もはや戦後ではないと言われた昭和30年初頭とはいえ、終戦からの日が浅く、戦争はまだ人々の身近にあったのかも知れない。

★ 塚本作品はカラー作品。くっきりとした色彩が印象的だ。それゆえのグロさもある。しかし、戦争とはそもそも、グロテスクで醜いものなのだろう。前半イマイチ作品に入り込めなかったが、それはキャストの歯の白さだ。餓死寸前の極限状態のはずが、どうもまだ余裕があるように感じられた。後半から終盤にかけて、状況の深刻さが増したせいか、痩せ具合、歯の汚さにリアリティを感じた。

★ そして、映画を2本観てから原作を読んだ。映画では映像で語っているところを原作は当然ながら言葉で表現している。そのイメージは読者に委ねられている。出来事は映画で知っているが、小説では主人公のさらに深い内面が描かれている。

★ 結局、彼は復員し精神病院に入院。この作品はそこでの手記という設定だ。彼は今で言うPTSDか。

★ 「もし人間がその飢えの果てに、互いに喰い合うのが必然であるならば、この世は神の怒りの跡にすぎない」、グサッと刺さるセリフだ。
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