じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

川上弘美「お正月」

2021-12-31 18:02:36 | Weblog
★ 12月31日大晦日。今年最後の授業を午前中に終え、買い物でちょっとした正月気分を味わう。家に帰って、そばを食べる。大晦日はやはり「にしんそば」だ。高校生がまだ自習室を使っているので、空いている部屋を掃除して(といってもお掃除ロボットがしてくれた)、身近なものを整理。整理しながら正月にちなんだ文章をいくつか読んでみた。

★ まず、青空文庫で夏目漱石の「元日」を読んだ。明治43年(1910年)1月1日の「朝日新聞」に寄稿されたものだが、要するに漱石先生の愚痴だった。「元日をお目出たいものと極(き)めたのは、一体何処の誰か知らないが・・・」で始まる。元日を記念した原稿を依頼されたが、どうやら漱石先生はネタがないらしい。結局は「今原稿に向かっているのは、実を云うと十二月二十三日である」と言い訳を始める。気分が乗らないようだ。

★ お口直しに、川上弘美さんの「センセイの鞄」(文春文庫)から「お正月」を読んだ。こちらはなかなかドラマチックで面白かった。30代も半ばを越え、40歳が目前の女性、ツキコさん。かつては恋人もいたが、どうも恋愛というものがしっくりこなくて、一人ぼっちの正月を過ごしている。(結局、その恋人はツキコさんの友人と結婚をした)

★ 正月には近くの実家に寄るがここも居心地が良くない。母親がつくる湯豆腐だけが心を温めてくれた。

★ 一人の部屋で蛍光灯を取り換えるのをしくじり、足を切ってしまった。そのため正月をグズグズと過ごしてしまったツキコさん。意を決して街に出かけるが、何となく涙がでてくる。そんなとき、今や飲み友達となったセンセイ(高校生時代の国語の先生)に今年初めて会う。

★ ツキコさんとセンセイの関係が良い。なかなか幸運が訪れないツキコさんだが、川上さんの文章が優しい。「ツキコさんにとって素晴らしい1年になりますように」と祈りたい気持ちになった。

★ さて、これから2日間の貴重な休み。積み上がって、地震でも起これば一気に崩れそうな本の整理でもしようかね。作家の五十音順に並べるのが結構大変だ。
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稲葉真弓「水の中のザクロ」から

2021-12-30 16:11:17 | Weblog
★ 冬期講座真っ只中。7時半起床。8時半から11時半まで午前の部、11時半から13時まで買い物と昼食。13時から16時まで午後の部。16時半から21時45分まで平常授業。授業が終わってから翌日の授業準備。深夜1時か2時に就寝。自宅で経営しているので通勤時間がないので何とかやっていける。

★ さて、今日は大学入試センター試験、2020年度に出題された稲葉真弓さんの「水の中のザクロ」を読んだ。稲葉さんの名前は存じ上げなかったが、いろいろと賞を受賞されている。

★ 出題された部分は、「私」が「ケンコウランド」を利用したとき見かけた老女の様子から、自らの母を回想するというもの。老女の振る舞いから認知症が疑われるが、ちょうど「私」の母も同じ症状だったという。

★ 母は症状が進み田舎で一人暮らしができなくなって、東京で暮らす「私」と同居することになった。仕事を持ちながら認知症の母親と暮らすのは大変だっただろうが、「私」は純粋になっていく母を愛おしく描いている。

★ このお母さんが几帳面に薬を整理している風景は、私にとっても他人ごとではない。私も年をとるに従って、高血圧(3種類)、高血糖、高脂血症、血栓防止と薬が増えてきた。最近は、人の名前がなかなか出てこない。授業をしていても即妙なセリフが出てこない。じわじわと老いを感じる。(受験問題を解くことに関しては、まだまだ中学3年生には負けないけれど。)

★ 授業は明日31日の午前まで。午後からは簡単に掃除をして、ちょっとのんびり。授業再開は1月3日から。1日、2日か高校3年生に自習室を開放。体力の衰えは仕方ないとして、ハードな日々が苦にならなくなってきた。塾経営がもはや生きることそのものになってきた。どうやら名人の域に近づいてきたかな。
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志賀直哉「出来事」

2021-12-27 21:32:22 | Weblog
★ 冬期講座3日目。年の瀬も迫ってきたが年賀状をつくる時間がなく、今年も不義理となりそうだ。せめてもらった分だけは返さねば。

★ さて、志賀直哉の「出来事」(「清兵衛と瓢箪 網走まで」新潮文庫所収)を読んだ。1988年の大学入試センター試験(いやこの時代はまだ「共通一次テスト」だったかな)に出題された作品。

★ 季節は夏真っ盛りの7月末。明治から大正にかけての電車には冷房の設備などあるはずがなく、乗客は半睡状態で暑さをしのいでいた。そのとき、子どもが電車に巻き込まれた。一瞬の悲劇に凍りつく車内。

★ しばらくして、子どもの泣き声が響いた。生きている。ひとまずは安堵。しかし、まだ安心はできない。電車の周りにはやじ馬も集まってきた。子どもの容体を見ると大したけがはしていない。電車の前の網が功を奏したようだ。

★ 子どもの母親も駆けつけてきて、子どもの無事を確認すると乗客はみんなホッとした様子だ。

★ 作者が実際に体験した話のようだ。まるでスケッチのように描かれている。作者の筆を通して、人々の心も見えるようだ。(この作品を書いた後に作者が電車にひかれたというから、妙な因縁だ)


★ オミクロン株の脅威を知りながらも、コロナ慣れしてしまったのか、スーパーなどの商店街は人であふれている。ヨーロッパでは1日の感染者数が10万人を超える国もあり、感染者数の合計ランキングでは、イギリス、フランス、ドイツ、スペインなどが上昇している。遠からずアジアにもこの波が襲ってくる。

★ ワクチンも打った。マスクに消毒、日常的な備えはもはや日課になっている。できる限り「密」を避け、換気にも気をつかう。これ以上にどうすれば良いのかな。免疫力を高めるしか手立てはないのか。
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ドラマ「オペレーションZ」

2021-12-26 21:55:35 | Weblog
★ 真山仁さん原作のドラマ「オペレーションZ」(2020年)を観た。

★ 日本は国家財政破綻寸前にあった。そんな時、日本最大の生命保険会社で取りつけ騒ぎが起こった。この会社が破綻すれば日本を発端とする世界恐慌が起こるかも知れない。この危機は江島副総理の尽力で何とか乗り切るが、時の内閣は総辞職。火中の栗を拾う形で江島政権が誕生する。

★ 江島内閣が掲げたのは「オペレーションZ」という政策。歳出大幅な削減と増税による財政健全化を目指すというもの。この政策を実現するため財務省のエリートからなる首相直属のチームがつくられた。

★ 首相から与えられた課題は歳出の50%カット。極めて困難なこの課題に官僚自身も葛藤する。

★ 首相の政策を支援することが自分たちの使命と結束したチームは、歳出の50%を占める社会保障費と地方交付税交付金ゼロを目指すことになる。これは当然ながら国民に負担を強いるもので、国民の反発は必至。それ以前に社会保障を掌る厚生労働省、地方を所管する総務省の厚い壁があった。


★ 使命(あるいは省益)をかけた官僚同士のやりとりが面白かった。江島総理の政策はどの立場から見るかで評価が分かれるところだ。そもそもは長年赤字国債を発行し続けてきた政府与党の責任だ。一方、国民も1000兆円を超える国債残高の数字を聞いて、何となく大丈夫かなと思いつつ、何となく「何とかなるだろう」と思っている。

★ 財政健全化を目指して国民の負担を強いる政党や政治家は乏しく、それどころか更なるバラマキで選挙に勝とうとしている。ポピュリズムに走っている。もはや引き返すことができないのかも知れない。

★ 国家が破綻し、強制的な歳出カットや重い増税、ハイパーインフレに直面して初めて過ちに気づくのかも知れない。しかしその時はもはや手遅れだ。

★ 見方によっては随分と財務省よりの作品だが、暴論と笑っていられないところが恐ろしい。江島総理役の草刈正雄さん、財務官僚・周防役の溝端淳平さんが良かった。「デフォルトピア」というSF小説を書いている作家・桃地実役の堀内正美さんは大島渚監督のようだった。厚労省年金局長役の阪田マサノブさんは岸田総理に似ているなぁと思った。

 
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「クリスマスの約束」

2021-12-25 23:14:55 | Weblog
★ 小田和正さんの「クリスマスの約束2021」。24日の夜に放映されていたが、うっかり見逃してしまった。残念に思っていたところ、パラビで見れるではないか。早速、観た。70を超えてこの美声。すごいなぁ。

★ オフコースの曲は学生時代(1980年頃)よく聞いた。「秋の気配」など当時は理解できなかったが、年を重ねるにつれてジーンとくるようになった。

★ パラビでは歴代の番組も観られるではないか。ちょっと意地悪な気持ちで第1回目を観た。2001年かな。オープニングの「言葉にできない」からもう感激。ゲストのない小田さん一人のライブ。貴重なライブ。

★ 20年間、いろいろとあっただろうなぁ。私の人生にも多くの思い出が詰まっている。あと何回、あと何年。小田さんの美声を聴けるかわからないけれど、できることならいつまでも聴き続けたいものだ。
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飛鳥高「飯場の殺人」

2021-12-25 17:45:06 | Weblog
★ 冬期講座第2日目。特に心動かされることもなく手近にあった本を読む。

★ まずは、ミステリー文学資料館編「江戸川乱歩の推理教室」(光文社文庫)から飛鳥高さんの「飯場の殺人」。数ページの作品なので、ちょっとした合間に読めた。工事現場の飯場で現場監督が殺された。そのとき現場にいたのは4人。犯人は誰か、というもの。現場に残された足跡がヒントだった。何かよくわからなかったが、タイトル下の作者名が「飛鳥」ではなく「飛島」になっているのがミステリーだった。

★ 飛鳥高さんという作家は今まで読んだことがなかった。1960年代に活躍された方らしい。

★ 大学入試センター試験シリーズでは1999年に出題された山田詠美さんの「眠れる分度器」を読もうと思ったが、連作短編なので、先に「健全な精神」(「ぼくは勉強ができない」新潮文庫所収)を読んだ。年上の女性と付き合っている高校生男子のちょっと複雑な心情が描かれていた。

★ 連日朝8時30分からの授業。そのため7時半起きる。世間様では普通だろうが、夜型人間には辛い生活だ。「オペレーションZ」の続きが観たいし(テイストは「日本沈没」に似ている)、睡魔が襲ってこなければ、今日の朝日新聞「天声人語」で触れられていた「グッバイ、レーニン!」(2003年)も観たい。

★ 政治体制の激変に翻弄される庶民が描かれているらしい。そう言えば、先の戦争の敗戦時、日本も価値観が大きく変わったなぁ。土曜の昼休み、関口宏さんと保阪正康さんの「もう一度!近現代史」が面白い。今日のテーマは東京裁判だった。
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井伏鱒二「たま虫を見る」

2021-12-24 19:41:13 | Weblog
★ 冬期講座第1日目。クリスマスイブも関係なく生徒たちは頑張っている。朝8時半から11時半まで午前の4コマ。午後1時から4時まで午後の4コマ。そのあとレギュラークラス(日常の授業)がある。遅い人は夜の10時まで。

★ 合間を見て、2012年の大学入試センター試験に出題された井伏鱒二の「たま虫を見る」を読む。人生の折々で遭遇した「たま虫」。物語はこの「たま虫」を軸に「私」が今までの人生を振り返る。

★ 作者が実際に「たま虫」に遭遇したのか、それとも「たま虫」というのは何らかの比喩、あるいは作者が考えたフィクションなのかはわからない。小説なのだからなんでもありだ。

★ 作品の終盤で、「私」は未来、また「たま虫」を見ることを想像しながら「私の不幸の濃度を一ぴきずつの昆虫が計ってみせてくれる」と述べている。「不幸の濃度」か。

★ 「私」が大学生になって恋人ができたとき、その恋人が「私」のレインコートに付いていた「たま虫」をはじき落とし、更には草履で踏みにじるシーンが面白かった。「私」にとって思い入れのあるモノも彼女にとっては単なる虫なのだ。

★ 「私」が当局から危険分子として呼び出されるところも面白かった。ポケットに入れた「たま虫」の死骸がいつしかバラバラになっているシーンでは、ヘッセの「少年の日の思い出」を思い起こした。
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仁木悦子「月夜の時計」

2021-12-23 20:07:14 | Weblog
★ 明日から冬期講座が始まる。その準備に忙殺。クリスマスも正月もただ通り過ぎていく。塾業界にいると仕方がない。

★ 昨夜はBBCのドラマ「シャロック・ホームズ バスガヴィルの獣犬」(2002年)を観た。知的に論理的に犯罪の真相を暴いていくシャーロック・ホームズ、この作品ではピストルをもって犯人を追いかけることも。ワトソン君とのコンビは絶妙だ。原作は20世紀の初頭に発表されたというが、時代をこえて面白い。

★ 日本のドラマでは真山仁さん原作の「オペレーションZ」(2020年)を観始めた。財政破綻する日本が描かれている。日本の近未来を見るようだ。

★ 今朝の「天声人語」、10万円給付で迷走した岸田内閣を批判している。「公明党の話を『聞いて』給付を受け入れ、財務省などの意見を『聞いて』半分をクーポンにし、最後は自治体の悲鳴を『聞いて』現金で構わないとした」と。クーポン案の背景には財務省があったのか。「財務省など」の「など」が気になる。

★ 新型コロナ、オミクロン株の市中感染。もはや水際は破られ、年末年始をはさんで第6波が襲来しそうだ。ウイルス相手の戦いは後手続きで何とも歯がゆいが、塾業界にとっては迫る入試がどうなるのかが心配だ。オミクロン株は岸田内閣にとって大きな試練となりそうだ。

★ 最後に、仁木悦子さんの「月夜の時計」(ミステリー文学資料館編「江戸川乱歩の推理教室」光文社文庫所収)を読んだ。現実世界の方が悲惨過ぎて、こうしたアリバイ・トリックがホッとする。
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小池昌代「石を愛でる人」

2021-12-21 17:51:21 | Weblog
★ 2015年の大学入試センター試験・国語に採用されたのは小池昌代さんの「石を愛でる人」。この作品が収められている「感光生活」(ちくま文庫)で読んでみた。

★ 詩人である「わたし」は地方局のテレビ番組に出演したことがあるという。本人にとっては緊張極まりなかったようだが、彼女をテレビに出演させたのが山形さんというテレビマン(こんな言い方今でもするかな)。その山形さんの趣味が「石」を愛でること。「わたし」は山形さんに誘われて石の展示会に行く。そこでのエピソードが綴られている。

★ 石や人の描き方が絶妙だ。展示会の空気が伝わってくる。最後はこれからの展開を期待させながら終わる。小憎らしいほどのエンディングだ。この先の話が知りたいがために「感光生活」を買ってしまった。

★ 小説と随想の中間のような作品。私小説と随想はどう違うのだろうか。まぁジャンルなどどうでも良いのだが。

★ さて、新聞に日本全国のワクチン接種状況が載っている。1回目を終わった人が全人口の79.1%、2回目まで終わった人が77.6%。3回目はまだ0.2%だ。およそ80%がとりあえず2回のワクチンを受けたことになる。これもパレートの法則か。陰謀説がささやかれるワクチン。8割が死に絶えても残り2割が生き残るって感じかな。

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楠田匡介「影なき射手」

2021-12-20 23:03:15 | Weblog
★ 「時効警察はじめました」(2019年)を観終わった。「時効警察」(2006年)「帰ってきた時効警察」(2007年)から12年。時効管理課を中心にほぼ同じキャストが演じるというのは驚異的だった。「時効警察はじめました」は視聴率で振るわなかったが、改めて見ると実に面白い。

★ 第4話の「ゾンビ映画殺人事件」などは当時流行っていた「カメラを止めるな」の要素が盛り込まれている。第2話の「超人気ミステリー作家の密室殺人」はミステリー作品の蘊蓄がいっぱいだ。その中で紹介されていたのが楠田匡介さんの「影なき射手」だ。

★ そこで、ミステリー文学資料館編「江戸川乱歩の推理教室」(光文社文庫)から同作品を読んだ。

★ アウトローの社長。仕事柄敵が多く、遂に射殺体で発見された。犯人はその筋では有名な殺し屋と思われたが、犯人は別にいた。犯人は誰か、そして凶器のピストルはどのように始末をしたのか。というのが読者への挑戦状だ。エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」の例もある。犯人は必ずしも人とは限らない。

★ 大学入試センター試験に採用された作品では井上荒野さんの「キュウリのいろいろ」(2018年度採用)を読んだ。35年前に息子を亡くし、昨年夫を亡くした初老の女性。お盆になるとキュウリを細工した馬をつくるのが習慣だ。そんな彼女に一つの依頼が。夫の同級生からで名簿を作るため夫の高校時代のスナップ写真を貸してほしいというのだ。そして彼女は夫が青春時代を過ごした夫の故郷を訪れることに。

★ 18歳の受験生に60を超えた女性の気持ちがわかるかどうか。

★ 大学入試共通テストまで30日をきった。これに続き、本格的に入試シーズンが始まる。今日、高校3年生と受験の話をしていて、私が大学受験をしてからもう50年近くがたったんだなぁと思うと感慨深かった。いろいろあったけれど、結局自分は何をしてきたのだろうかと思った。 
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