じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

川端康成「有難う」

2021-07-31 12:22:54 | Weblog
★ 夏期講座は27日間の内、8日分が終わった。世間ではコロナ・デルタ株の勢いが加速し、感染者の低年齢化も進んでいる。一層感染に気をつけていきたいものだ。

★ 「これが最後」と言いながら、頻発される緊急事態宣言。もはや日常化し、効果が激減している。そもそもが政府、とりわけ菅総理の発言が響かない。記者とのやり取りも言葉遊びの域を出ない。ご本人は真摯に対応しているつもりなのだろうが、それが伝わらないのは、(残念ながら)もはや人柄か。人事刷新、大胆な若返りが必要かも知れない。

★ さて、なかなか本も読めないが、「心に残る物語 日本秀作選 宮本輝編 『魂がふるえるとき』」(文春文庫)のページをめくっていると、川端康成さんの「有難う」が目についた。

★ 以前、映画「有りがたうさん」(1936年)を観た記憶がある。原作は川端康成さんだったんだ。

★ 「有難う」は川端版ショートショート「掌の小説」(新潮文庫)にも収められているので、そちらを読んだ。わずか5ページの短い作品だが、詩情豊に描かれている。

★ 伊豆半島あたりの貧しい漁村。昭和10年前後、折からの不況で食っていけず、母親が娘を売りに行く。遠い駅まで走る乗合自動車、今日の運転手は「有難うさん」だ。「有難うさん」というのはこの運転手のあだ名で、道で馬車や大八車や人力車や馬まで、追い越すたびに「ありがとう。」と頭を下げて敬礼する。その「人の好さ」を人々が評して「有難うさん」と呼ぶようになったという。

★ 一期一会と言うが、舗装されていない田舎道をガタゴトと自動車が走るうちに、娘は「有難うさん」に一目惚れをしてしまったらしい。

★ 暗い世相と人の運命。その一方で、「ありがとう」と繰り返されるフレーズ。一抹の救いを感じる。「今年は柿の豊作で山の秋が美しい」という。作品はこの文で始まり、この文で作品が終わっている。山の色彩が目に浮かぶ。
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古文単語

2021-07-25 16:23:56 | Weblog

塾生が古文単語が覚えられないと言うので、参考書を買ってきた。

マドンナ荻野先生の「古文単語230」
わかりやすくて、読み物としてためになる。語源まで踏み込んで欲しいところもあるが、そこは大学入試対策に徹している。

坂野先生が始めた「ゴロゴ」シリーズ。これでもかというほどの語呂合わせとイラスト。下ネタも結構多い。思わず吹き出すものもあったが、肝心の古語を覚えられるかな。

富井先生の「FORMULA」。オーソドックスな作りだけれど、できる生徒にはこれが一番良いかも。持っているだけでかしこそうだ。

それにしても、「あはれ」が「あ~は~れ~」からきているとか、「おどろく」が、雷のゴロゴロからきてるとか、参考になった。


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筒井康隆「走る男」

2021-07-24 11:28:49 | Weblog
★ オリンピックの開幕だ。無観客の開会式。出演者やボランティアの方々の奮闘には頭が下がるが、やはり盛り上がらない。世間では、バッハ会長の長演説や天皇の開会宣言時の菅総理、小池都知事の「不敬」が話題になっている。

★ ドタバタのオリンピック。バッハ会長の迷調子に睡魔が襲ってきたのか。完璧な段取りをしているはずが、総理大臣、都知事の慌てふためいた起立が全世界に配信されてしまった。

★ オリンピックがなぜこの時期(酷暑の夏)なのか、開会式がなぜこの時間帯なのかを考えれば、オリンピックをめぐる利権を垣間見ることができる。

★ 甲子園(高校野球)の開会式のようにシンプルなもので良かったのに。いつの時期からかすっかりショータイムになってしまった。

★ さて、近未来廃れたオリンピックを予言したかのような筒井康隆さんの「走る男」(「佇む人」角川文庫所収)を読んだ。

★ もはや人が体をあまり動かさなくなった時代。オリンピックの価値は薄れ、人々の関心もなくなっていた。形だけ残った長距離走で、組織委員会にスカウトされた男が走る。

★ 男はトップを走っている。とはいえ、参加者はわずかに3人。それでも男は走る。走りながら考える。「どうして人は、走るのだろうか」と(まるで「走れメロス」のようだ)。そんなこんなで物語は進み、数十年が過ぎ去った。男は気持ちを切り替え、ゴールを目指す。まだオリンピック組織委員会は細々と残っていた。老人が事務を執っていた。彼の帰りを待っていたという。

★ 「より速く、より高く、より強く」、その価値が薄れた近未来のオリンピックが描かれていた。
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マクドナルドのCM

2021-07-22 19:01:20 | Weblog
★ 夏期講座2日目。今日はちょっとのんびり。

★ マクドナルドの新しいCM、銀座1号店ができてから50年というやつ。50年前にビッグマックを食べられずに失恋した少女は誰かと思いきや(後半祖母役で出てくる)宮崎美子さんご本人だという。

★ 50年前に「こんなCMあったかな」と考えたが、思い当たらない。それに画質が古くない。

★ メイキングを観ると、1号店の情景はセットで、少女は今の宮崎さんが演じられているというから、びっくりした。(バックに流れるのは小坂明子さんの「あなた」。50年後は手嶌葵さんが歌われている)

★ 宮崎さんと言えば私と同い年のはず。カメラのCMだっただろうか、ふくよかな水着姿を披露されていた印象が残っている。「今の君はピカピカに光って」って。

★ カツラをかぶり、デジタル技術で修正したのだろうが、見事に少女を演じられている。すごいなぁ。

★ そうか50年か。私の世代は日本が高度成長をする一番良い時代に育った。21世紀は日本の時代だとか、JAPAN as NO.1
とか言われたけれど、オイルショック、バブル経済、阪神淡路の大震災にオウム事件に東日本大震災、そして新型コロナ。いろんなことがあったなぁ。
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米澤穂信「白木の箱」

2021-07-21 15:52:33 | Weblog
★ 夏期講座が始まった。これから8月26日まで、頑張るしかない。

★ ちょっとした休憩時間にショートショートを読む。「超短編! 大どんでん返し」(小学館文庫)から、乾くるみ「なんて素敵な握手会」、蘇部健一「トカレフとスタンウェイとダルエスサラーム」、似鳥鶏「VSパンダ」そして米澤穂積「白木の箱」を読んだ。

★ 乾くるみさんの「なんて素敵な握手会」は、タイトル通り「握手会」の風景。「騙されないぞ」と読んだせいか、オチが大体分かってしまった。

★ 蘇部健一さんの「トカレフとスタンウエイとダルエスサラーム」は三題噺のような感じだ。全然関係ないようなこの3つが、どう関係しているのやら。字数の制約があるからか、もう一歩って感じかな。

★ 似鳥鶏さんの「VSパンダ」は、テレビでよくある肉体派タレントの企画もの。最後はちょっとぶっ飛び過ぎかな。まぁ、ゴジラも核実験による突然変異だけれど。

★ 米澤穂積さんの「白木の箱」。チャレンジ精神旺盛の夫が遭遇した悲劇。「ウルトラQ」にありそうな話だね。なんとか日本に帰ってきたものの、変わり果てた姿となり・・・。

★ 短時間で、いろいろなシチュエーションを味わえるのが楽しい。 
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ドラマ「ゲキカラドウ」

2021-07-19 21:14:04 | Weblog
★ 東京オリンピック、何かグラグダになってきた。賛成派はどうも自分の利害(利権)が絡んでるようだし、反対派は(一部の過激な人々は別として)何となく不安だなぁって感じだ。肝心のアスリートはどうもそっちのけで、オリンピックも変わってしまったなぁって感じだ。

★ さて、地方に住む一庶民はオリンピックなどどこ吹く風で、夏の暑さにマスク装着とフーフーと言いながら過ごしている。「孤独のグルメ」「シェフは名探偵」の新しい話は週1なので、ここ2,3日はドラマ「ゲキカラドウ」(2021年)を観ている。

★ 関西から東京に転勤になった中堅飲料メーカーの営業マンが、激辛の料理を味わいながら、営業マンとして成長していくという話。

★ 「ゲキカラドウ」は「激辛道」とも書く。毎回出てくる料理がほとんど真っ赤。トウガラシ、トウガラシ、そしてまたトウガラシ。カプサイシンは効能があるというが、ここまで刺激的だと脂汗を超えて、失神しそうだ。

★ 辛さの中に旨さを見つけるというが、辛いものは辛かろう。以前、ラーメン屋でラーメンと高菜ごはんを注文して、熱い、辛いで泣きそうになったことがある。

★ 体験するのは遠慮したいが、観る分には面白い。ジャニーズWESTの桐山さんが主人公の猿川を演じている。本当に激辛にチャレンジしているのだろうか。

★ 今年1月から3月にテレビ東京系列で放映した番組らしいが、夏にも合う番組だ。
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五木寛之「海を見ていたジョニー」

2021-07-18 16:15:39 | Weblog
★ 1974年に刊行された五木寛之さんの「海を見ていたジョニー」(講談社文庫)、新装版が出ていたので読んだ。

★ ジョニーが戦争から帰ってきた。一時帰休というやつらしい。カウンター越しに出された大きな手を見て、ジュンイチは言葉に戸惑った。彼は大きな黒人で、ニックネームは野牛(バッファロー)のジョニー。

★ 姉の店(ピアノ・バー)を手伝う10代の少年、ジュンイチ。ジャズに魅かれ、店が終わった深夜の岸壁でトランペットを吹くのが楽しみだった。将来、ミュージシャンになることを夢見て。

★ ある夜、いつものようにトランペットを練習するジュンイチの前に、ジョーニーが現れた。彼はジャズについてジュンイチに語った。「ジャズを好きだってことは、人間が好きだって事だ」(20頁)

★ ジョニーがふいと姿を消して10か月。戦争に行ったのだという。そのジョニーが帰ってきたのだ。しかし、それはかつての彼ではなかった。

★ ジャズを通した青年と米兵の心の絆。戦争はジョニーから何を奪ってしまったのか。五木さんの文章がとても沁みる。ジョニーがピアノ・バーで演奏した「レフト・アローン」を背景に読むと最高だ。
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曽根圭介「尋問」

2021-07-17 15:12:52 | Weblog
★ 近畿地方も梅雨が明けた。京都はまん延防止の重点措置が解除され、街の人出や交通量は多くなった気がする。それに比例するかのように新規の感染者数は増加傾向だ。遠からず第5波がやってきそうだ。(いつまで繰り返すのやら)

★ 7月17日と言えば例年ならば祇園祭の山鉾巡行。しかし、コロナの影響で2年連続で中止となった。疫病退散のイベントも現代の流行り病には効果なしか。

★ さて、今は奥田英朗「真夜中のマーチ」(集英社)、柚月裕子「臨床真理」(角川文庫)、桐野夏生「顔に降りかかる雨」(講談社文庫)、久坂部羊「無痛」(幻冬舎文庫)を読んでいるが、どれも長編でなかなか進まない。

★ ということで、「超短編! 大どんでん返し」(小学館文庫)を買ってきた。これなら1作品10分もかからない。乾くるみ、米澤穂信、東川篤哉、葉真中顕、法月綸太郎、翔田寛、下村敦史、恩田陸、深緑野分、青柳碧人、柳広司、北村薫、乙一、門井慶喜、曽根圭介、長岡弘樹などなかなかの顔ぶれだ。

★ まずは、曽根圭介さんの「尋問」を読んでみた。女性が失踪した。その件である男が尋問されているのだが・・・。「尋問」というタイトルにはめられてしまったなぁ。

★ 昼食時、「孤独のグルメ 9」の最新話を観る。金目鯛の煮つけうまそうだった。お店の店主は小堺さんだったんだ。マスク姿だと誰なのかわかりづらい。俳優さんも大変だなぁ。緊急事態宣言下での撮影は大変だったろうなぁ。
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芦沢央「投了図」

2021-07-15 15:49:49 | Weblog
★ 夏休み目前、学校では三者面談が行われ、生徒たちに1学期の成績が示されている。新しい指導要領の下、どうも評価(評定)の方法が良くわからない。そもそも成績をつける側の教員がどれほど理解しているのであろうか。

★ それはともかく、塾業界は夏期講座に向けて準備に忙しい。昨年は春のコロナ休校の影響で3週間に短縮された夏休み。今年は従来通りの5週間に戻った。

★ そんな中、1日100頁の読書目標はなかなか実行できず、短い作品ながらアンソロジー作品集「神様の罠」(文春文庫)から芦沢央さんの「投了図」を読んだ。

★ コロナ禍の古書店。店主は義父の店を継いでいる。商店街で休業が相次ぐ中、営業を続けていると「自粛警察」による心無い嫌がらせが。どうせ客は来ないと店を閉めることに。

★ コロナ禍であっても大イベントは別物らしく、この街で将棋のタイトル戦が開催される。しかし、そこにも嫌がらせの貼り紙が・・・。

★ 将棋の投了図と人生の投了図をダブらせて描かれているようだ。勝負の世界に勝敗は避けられない。いかに負けるか。物語は少々強引に思えるが、想定外が頻発するご時世、こんなことがあってもおかしくはない。

★ さて、秋の衆院選を前に政局模様。ポスト菅の動きも活発化しているが岸田氏も石破氏もパッとしない。ニューリーダーを目指す河野氏はワクチンでつまづき、西村氏は今やスケープゴートだ。竹下派の加藤官房長官や茂木外務大臣はまずはどちらが派閥を引き継ぐか。間隙を縫って、まさか小池都知事か。二階翁の出方次第か。安倍氏、麻生氏もまだ影響力を発揮したそうだし。政権交代できる野党もなく、混とんとした世相(政争)が続きそうだ。
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乾くるみ「夫の余命」

2021-07-11 17:48:23 | Weblog
★ アマゾンで注文していた杉田淳子編「アンソロジー カレーライス!! 大盛り」(ちくま文庫)が届いた。なんと偶然ながら1作目が池波正太郎さんの「カレーライス」、2作目が向田邦子さんの「昔カレー」だ。この作品集、何か縁があるようだ。少しずつ読み進めていこう。

★ さて、今日は人気作家6人によるアンソロジー作品集「神様の罠」(文春文庫)から、乾くるみさんの「夫の余命」を読んだ。

★ 50年、いや人生100年時代だから、60年、70年と連れ添う夫婦もあれば、わずか数年、あるいは数か月に愛を燃やすカップルもある。この作品は余命1年を宣告されながら、結婚を決断したある夫婦の物語だ。

★ 時系列をさかのぼる構成が面白い。最後のどんでん返しには度肝を抜かれた。思わず2度読みしてしまったではないか。

★ さすが乾さん。うまいねぇ。
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