じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

「小説と格闘した時代」

2018-06-30 19:25:31 | Weblog
☆ 石原千秋さんの「漱石と三人の読者」(講談社現代新書)から第2章「小説と格闘した時代」を読んだ。

☆ 夏目漱石を通して、明治20年代から40年代にかけて、小説というものがどのように形成されてきたのかが書かれていた。

☆ 「小説」というジャンルが実はそれほど古いものではないということを改めて知った。その「小説」も美文、写生文、写実主義、自然主義と変遷してきたと書かれていた。自然主義文学の意義と限界とでも言おうか、そこに漱石が登場する。

☆ 「(自然主義文学が)やがて社会性を失い私小説に収斂してしまった」というのが定説だという。門外漢にはこうしたことも発見だ。「性の問題を好んで主題化したこともあって」「出歯亀主義」と揶揄されたことなども面白い。

☆ ところで「出歯亀」は明治時代に実際に起こった強姦(今でいう強制性交)殺人事件の犯人の名前からつけられたもの。当時は「出歯る」などというナウい言葉も流行ったとか。今でも「のぞき」のことを「出歯亀」と言ったりする。

☆ 英語では、「ピーピング・トム」。語源はチョコレートのブランド「ゴディバ」にも関連するから、興味のある方は検索あれ。

☆ 話は反れた。要するに自然主義はエンディングを読者に託して終わる形。勧善懲悪の戯作物よりは可能性が広がったが、何とも締りは悪い。「え、ここで終わり」とびっくりすることがある。うまくいけば余韻を残すが、下手な作品では消化不良のもやもや感が残る。それを踏まえて、漱石の仕掛けとは。続きを読み進めたい。

☆ 蛇足ながら、昔、渡邉健一著「音楽の正体」(ヤマハミュージックメディア)という本で「レット・イット・ビーは終わらない」という章があった。完全終止で終わるのではなくて、あえて不完全なコードで終わることによって、繰り返し聞きたい気分にさせる。人間の感性を利用した面白い仕掛けだと思った。小説も名作は似たような構造があるのかも知れない。

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映画「オデッセイ」

2018-06-30 01:09:26 | Weblog
☆ 映画「オデッセイ」(2016年)を観た。

☆ 火星に一人残された宇宙飛行士兼植物学者がいかにサバイバルをしたか、彼をいかにして救出したかを描いた作品。もちろんSFだが、近未来には起こりうるかも知れない。火星の映像がすごかった。

☆ 主人公の宇宙飛行士にはマット・デイモン。トム・ハンクス主演の「キャスト・アウェイ」の宇宙版という感じかな。古くは「ロビンソンクルーソー」

☆ 絶望的状況の中で生き残るには、希望を持ち続けること。一つ一つ課題をクリアしていくこと。明るく楽天的な人が生き残るのかも知れない。
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危機管理マニュアル

2018-06-29 17:52:25 | Weblog
☆ 1980年代から90年代にかけて、「開かれた学校」が志向された。校内暴力などの生徒の荒れの顕在化や学校のアカウンタビリティが主張される中、閉鎖的な学校を批判し、地域に開かれまた地域の資源を教育活動に活用することが求められた。

☆ 「いつでも参観してください」といったオープンスクールのような試みもあった。

☆ しかし、1999年の京都市立日野小学校事件や2001年の大阪教育大学付属池田小学校事件を受けて、学校は閉じられた。

☆ 今まであまりクローズアップされてこなかった「不審者」対策が求められるようになった。文科省は2013年に「危機管理マニュアル」のモデルを策定し、各学校で具現化することを求めた。

☆ 「学校の危機管理」と言う言葉は1980年代にもあった。手元に牧昌見・小暮和夫・家田哲夫編著「学校の危機管理」(ぎょうせい 1991年)や「学校の危機管理読本」(教育開発研究所「教職研修総合特集No.84」1991年)がある。その内容は、教職員間の軋轢や校内暴力、学校事故が主なもので、「不審者」は想定されていない。

☆ 学校は牧歌的な雰囲気の中にあった。

☆ 文部科学省は2002年に「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」というものを作成した。その中に「不審者」への対応のフローチャートが書かれているが、どうもこの「不審者」は気が優しい。教職員が対応し合理的な用事がなければ退去を求め、応じなければ警察に連絡と言った内容だ。持ち物(凶器)にも気をつけようとナイフやピストル、爆発物らしきものが例示されているが、そうした凶器を学校に持ち込もうとする「不審者」が紳士的であるとは考えにくい。

☆ 刃物は振り回し、銃は乱射して侵入するものだろう。

☆ さて、学校はどう対応すべきか。打つ手は限られている。その中でどうやって児童・生徒たちを守るのか。

☆ 「いじめにたいする基本方針」「危機管理マニュアル」など学校は内規や書類が増えるばかりだ。そればかりか書類が完璧でも、それを運用するスタッフの力量や訓練が求められる。通り魔的犯罪やテロ犯罪は実に迷惑なものだが、対応せざるを得ない時代になったようだ。
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星新一「鏡」

2018-06-29 17:40:05 | Weblog
☆ 星新一さんのショートショート集「ボッコちゃん」(新潮文庫)から「鏡」を読んだ。

☆ ある夫婦が悪魔をつかまえることに成功し、その悪魔を虐待することで、日常の鬱憤を晴らすというもの。悪魔は「お願いします」「いじめないでください」「帰らせてください」と懇願するが、夫婦の虐待はエスカレートする一方。

☆ 悪魔は隙を見て逃げるが、憂さ晴らしの対象を喪った夫婦のその後は凄惨極まりないものだった。

☆ 人間の攻撃性はエスカレートする。弱い者いじめは人間の本性なのだろうか。悪魔がもし子どもであったりペットであったならと考えれば背筋が寒くなる。

☆ スザンヌ・ヴェガの「ルカ」を聴きながら、心の闇を考える。
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池澤夏樹「スティル・ライフ」

2018-06-29 17:08:56 | Weblog
☆ 池澤夏樹さんの「スティル・ライフ」(中公文庫)を読んだ。

☆ アルバイト先の染色工場で「ぼく」が出会った佐々井と言う男。謎めいた彼の誘いに応じて「ぼく」は彼の計画に乗ることにした。

☆ 理系の人が書いた理路整然とした作品。確かに物理や天体や生物の話もでてくるが、もっと深く踏み込めば哲学的な領域に入りそうだ。それは読者の読み方次第というところだろうか。

☆ 名前、性別、年齢、職業、そんな属性を捨象すると、人間ていったい何なのだろうか。故あって透明人間のようなシンプルライフを送る「佐々井」を通して、考えさせられる。
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花村萬月「ゲルマニウムの夜」

2018-06-27 23:21:48 | Weblog
☆ 花村萬月さんの「ゲルマニウムの夜」(文春文庫)を読んだ。

☆ 少年期をカトリック教会併設の教護院で過ごした青年が社会から出戻って、初体験をする話。文章を読んでいると主人公は凶悪犯のようでもあるが、その実、幼児的あるいは乳児的であることに気づく。

☆ 凝縮された文章。無駄がない。スキが無い。クライマックスの性描写は刺激的だった。

☆ 「すべての快感の本質は、反復にある」(49頁)

☆ 性的快楽の絶頂に宗教的悟りを開いた様子。空腹は最高の調味料。禁欲は最高の快楽へとつながる。宗教と性的快楽は紙一重だったのだ。
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拳銃リスク

2018-06-26 22:09:21 | Weblog
☆ 元自衛官が警察官を殺害して拳銃を奪い、さらに発砲して人を殺害し、小学校に侵入。警察官と銃撃戦の末、被弾して逮捕される。

☆ 何という事件だろうか。銃乱射事件が起こるたびに、銃規制が論議されるのはアメリカ社会ばかりだと思っていた。しかし、日本にも銃はあったのだ。

☆ この手の事件を調べてみると、以前に元陸上自衛官が拳銃強奪を目的として、警察官を殺害した中村橋派出所警官殺害事件(1989年)というのがあった。そのときの犯人は20歳。今回の犯人は21歳と言うから、この点もよく似ている。

☆ このときの動機は強盗で、そのために拳銃を確保しようとしたらしい。今回の動機は何か。犯人が重体らしいのでまだ何もわからない。

☆ 犯人が侵入した小学校では教職員がさすまたで対応しようとしたが、刃物ならともかく、拳銃には無意味だ。むしろ被害がなかったのは不幸中の幸いだ。

☆ 世界には「教員にも拳銃を」と大胆な主張をする指導者もいる。最近では「精神科医に拳銃を」と主張する意見も見られた。護身用という事だろうが、拳銃に意思はない。警官でさえ奪われる銃を市中に拡散するリスクはあまりに大きい。

☆ 先の新幹線の事件と言い変な事件が目につく。これを機に警察官のリスクが高まらねば良いが。巻き添えになる市民が出なければ良いが。
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夏期講座

2018-06-26 17:35:10 | Weblog


☆ 夏期講座のチラシが完成しました。今年は「ラクスル」でカラー印刷。

☆ 5000枚刷って、8000円ぐらい。安いねぇ。
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「忍者部隊月光」

2018-06-26 16:25:22 | Weblog
☆ 遅い昼食のBGM代わりに映画「忍者部隊月光」(1964年)を観た。

☆ テレビのシリーズは小学生のとき少しだけ見た記憶がある。今でいえば自衛隊特殊部隊のようなものだろうが、それが日本古来の忍者と合体している。背中に負う日本刀は邪魔にこそなれあまり実用性はないが、これはファッションだから仕方がないか。

☆ 進路を指す月光の独特のポーズ。これもあまり意味はないが、昭和時代の子どもには受けた。三日月は美しいなぁ。アクション俳優と言うよりかはお姫様だ。

☆ 特撮や編集はさすがに古さを感じるが、懐かしさでもある。1964年と言えば、先の東京オリンピックの年。高速道路など変わりつつある東京の風景が見られた。
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田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」

2018-06-25 11:27:05 | Weblog
☆ 田辺聖子さんの短編集「ジョゼと虎と魚たち」(角川文庫)から表題作を読んだ。良かった。

☆ 映画では、恒夫を妻夫木聡さん、ジョゼを池脇千鶴さんが演じていた。映画は何度も観ていたので、小説を読みながらそれぞれのシーンを思い出した。ほぼ原作通りだった。

☆ 足の不自由な女性(サガンの小説からジョゼと名乗っている)が、ふとした事故がきっかけで大学生の恒夫と出会う。女性は高飛車な物言いだが、それが甘えの裏返しであることを恒夫は感じている。

☆ 荒っぽい大阪弁は喧嘩をしているようだが、それもリア充の幸福感に溶けていく。

☆ 恒夫と同じように、ジョゼをかわいい、愛おしいと思った。先のことはわからないが(映画ではそのあたりもちょっと表現していた)、幸福を満喫する二人に心が安らぐ。
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