★ 菅元総理の発言が話題になっている。岸田内閣に引導を渡すのか。
★ 「引導」ということで、今日は水上勉さんの「雁の寺」(「雁の寺・越前竹人形」新潮文庫所収)を読み終えた。
★ 京都洛西の孤峯庵には、画師・岸本南嶽による雁の襖絵がある。その南嶽が死に、彼と馴染みのあった女性・里子を孤峯庵の慈海和尚が引き取るところから物語が始まる。
★ 昭和初期の話とはいいながら、当時の僧侶は戒律を蔑ろにし、飲酒するは、愛人を囲うはと乱れている。慈海もまた酒に溺れ、夜ごと里子との肉欲に溺れていた。
★ 孤峯庵には一人の小僧がいた。名を慈念という。家庭環境に恵まれず、北陸からこの寺にやってきて、中学に通いつつ、僧侶への修行をしながら、寺の雑務を担っている。
★ 和尚とその愛人の女性、そして小僧という不思議な構図で話が進む。
★ ある日、和尚が失踪する。
★ なぜ和尚は姿を消したのか。終盤、真相が明らかにされる。三島由紀夫の「金閣寺」とはまた違った角度で、若い僧侶の屈折した心理を描いている。