やっぱり幸せ♪

日常の色んなこと、特に発達障害を持つ息子との素晴らしき日々を綴っていきたいと思います。

弟のお店

2016年03月21日 | 日記

3月は、母親の亡くなった月でもあり、17年経った今でも、母の命日が近くなるたび心が揺れ動きます。

 

先日、お彼岸を兼ね、実家にいる弟と一緒に両親のお墓参りに行ってきました。

父の友人が参ってくれたのでしょうか、父の愛した北海道のお酒が供えられていました。

そして、2種類のお花も。。。

一つは、私と年の近いもう一人の弟が供えてくれたものでした。

 

毎年、母の命日がある3月のお彼岸に、彼は参ってくれます。

この弟は、カフェレストランを一人できりもりし、定休日も月に1日しかとっていないので、ほとんどお店で寝泊まりしていて、実家には帰ってきません。

それでも、毎年お参りに来てくれることに、心のどこかでほっとしています。

 

弟は、14歳で家を飛び出しました。

まだ、中学2年生でした。

家にあった8万円程の現金を持ち出して、彼は、行方不明になりました。

3年後に自ら家に戻って来たものの、数か月後にはまた自宅を離れ、一人で暮らすようになりました。

 

住む場所も働く場所も転々としていましたが、どこで何をしているのか分かっているだけで安心しました。

雇われ店長として飲食店を転々としていたので、私も、いろんなお店に食べに行ったものです。

 

そんな弟が自分のお店を持つようになったのは、父の亡くなった年でした。

勤めていた店の方針と合わなかったり、厳しい飲食業界の風に店が閉店してしまったりで、何度もリストラされ、雇ってもらえる店が見つからなかったときに、父が手を差し伸べました。

 

父の退職金の半分以上を使い、賃貸ながら2つの店舗をぶち抜き工事をして、実家から車で1時間余りの場所に弟の理想の店を作り上げました。

実は、すでに父は高次脳機能障害を持つようになり、弟の存在は覚えていても、弟の顔はもちろん、弟がどんな風に成長してきたかも覚えていません。

それでも、父は、弟に店を持たせてやることを望みました。

 

もちろん、悩みに悩んだ末、決断を下したのは私です。

父のこれからの介護に、いったいどれだけお金がかかるのか想像もつきませんでした。

ひきこもったままの弟のことも心配です。

それに、彼は、今まで親の介護に関わってきませんでした。

「だからこそお店を自営して、将来は、借りた以上のお金を援助していく!」と言う弟。

けれども、厳しい飲食業界・・・弟のお店が必ず成功するとは限らないのです。

 

結局、弟の望みを、そして、「お店を持たせてやりたい」という父の望みを叶えることにしました。

しかし、父は、弟のお店がOPENして4か月も経たないうちに亡くなってしまいました。

 

完成したばかりの弟のお店に、2回だけ、父と一緒に食事をしに行くことが出来ました。

 

父は、嬉しそうに店の中を眺め、「うまいやん!」と、弟の作ったオムライスを食べていました。

「ほんまに儲かるんかなぁ・・・?」と、心配そうな私に、父は、

「儲からんでもええ。自分が食べていけるだけ稼げたら充分や!」

と、言っていました。

 

あれから3年半、まだまだ弟のお店は繁盛しているとはいえません。

人件費を捻出出来ず、土日の夜しかバイトを入れることが出来ないそうです。

それでも、父が力を貸してOPENしたお店で、弟が頑張っていることが嬉しいです。

 

弟のお店は、親子向け・・・中でも、小さな子どもに対する思いやりが溢れたお店でした。

店の奥には、何百という絵本が棚に並んでいます。

壁掛けのテレビは、スポンジボブやピンクパンサーなどのアニメがず~っと無音声で流れています。

かわいらしい季節のオブジェが控え目に飾られた空間で、食事を待っている間、ママさんが子ども達に読み聞かせをする・・・そんなお店なのです。

 

先日、弟のお店に寄った時、ママさん一人の食事を、幼児用の食器で二人の小さな子どもに分け与え、ゆっくり食事をしている親子がいました。

お昼時で席が埋まっていて、さらにお客さんが入ってきた時に、弟は、

「混んでいますので、かなり待っていただくことになります。」と、断っていました。

子どもが主役。子どものペースでいいお店なのです。

 

私は、店の奥で食事をしながら、涙が溢れそうになりました。

きっと、これが弟が望んでいたものだったんだろうなぁ。。。

母親に叱られてばかりいた子どもの頃の私達は、母親が傍にいると怖くて緊張して、息が詰まりそうでした。

それで、また失敗して、叱られる。。。

 

ただ、笑顔でご飯を食べる。

ただ、一緒に絵本を読む。

親子が幸せでいられる空間を、彼は作りたかったのでしょうか。

 

お墓を掃除し終え、静かに手を合わせます。

時間差はあっても、こうして、家族で集えて良かった。

 

色々あったけど、今、両親に一言伝えるとしたら、やっぱり、「ありがとう」でしょうか。

そして、もう一言、付け加えます。

 

「しっかり、見守っていてよ!」