醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1268号   白井一道

2019-12-08 11:06:55 | 随筆・小説



    徒然草95段 『箱のくりかたに緒を付くる事』



原文
 「箱のくりかたに緒を付くる事、いづかたに付け侍るべきぞ」と、ある有職の人に尋ね申し侍りしかば、「軸に付け、表紙に付くる事、両説なれば、いづれも難なし。文の箱は、多くは右に付く。手箱には、軸に付くるも常の事なり」と仰せられき。

現代語訳
 「箱の刳形(くりがた)に緒を付けるのは左右いづれにつければよろしいのでしようか」と有職の人に尋ねましたところ「左側に付ける説と右側に付ける説があるが、どちらでも良い。文箱には、右に付けることが多いようだ。手箱の場合には左に付けるのが常のようだ」と仰せられた。

 
 茶道の袱紗(ふくさ)さばきについて  白井一道

 茶道の魅力とは何なのか。薄暗い四畳半の狭い部屋に入り、ぼんやりと床の間の掛け軸や花器、花を眺めているだけである。この静かな時間が良いのかもしれない。この静かな時間を楽しむことが茶を飲む楽しみなのかもしれない。戦国武将たちはこの茶室の中で死を決断し、戦いに挑んだという。
 茶室の中で亭主は時間をかけ、茶を入れる。その際に茶碗を拭く布巾を袱紗(ふくさ)、帛紗(ふくさ)というようだ。どのように袱紗を扱うのかを次にみてみよう。
 帛紗さばきの一例は、点者が茶席にはいる前に帛紗を三角形に折りたたみ、男性であれば帯の下からその一角をはさんで、女性であれば帯の上からはさんで出る。席に着いてから帛紗を抜き取り、右手で端を取り、左手親指を中央にいれて、帛紗を半分に折り曲げ、右手に取って、茶入、または棗を拭い、茶を点てる前、釜の蓋を取るときにも帛紗でそのつまみを取り、蓋を蓋置きに載せる。
茶を点て終わったのち茶杓を帛紗で拭うときにははじめと同じように帛紗さばきをして茶杓の中節から先に茶が付着したのを拭い、茶杓を持ったまま茶の付いた帛紗を建水の上で右手ではたき落とす。 帛紗を使い終わったらはじめのように三角形に折りたたみ、帯に付けて退出する。
兼好法師の『徒然草95段』を読み、茶道の袱紗捌きを思い出し、書いてみた。