醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1368号   白井一道

2020-04-01 10:40:45 | 随筆・小説



    徒然草第192段神・仏にも、人の詣でぬ日


原文
 
神・仏にも、人の詣でぬ日、夜参りたる、よし。

現代語訳
 神、仏に人の詣でない日や夜に参るのもいいものだ。

 神様も仏さまも日本人は大事にしてきた
              白井一道
 ここの仏さんには、旧制中学時代、殴られた経験があるんです。この仏さんは配属将校でしたからね。私はこの仏さんの甥っ子でしたけれども、何の容赦もありませんでしたよ。皆同じように殴られました。
彼の話はとりとめもなく続いた。
 我々日本人にとって亡くなられた方を仏さんと言い、この仏さんは実に勤勉な方であったと、語り合ったりする。法事などで良く耳にする言葉である。決して神様の話をすることはない。家に帰り、台所に行くと荒神様のお札が貼ってあったりする。奥さんが自分の母親がやっていたことを真似て神社から台所の神様、家内安全を祈願した神様を祀ったつもりでお札を貼っている。
 私たちの日常生活には特に意識することなく、仏様と神様が入ってきている。仏教を信じているわけでもなく、日本神教を信仰していると自覚することはない。ただ私たちは日常生活から神様も仏さまも排除する必要を特に感じることがない。このような状況は兼好法師の時代からのものであるということを私は『徒然草第192段』を読んで感じた。