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田母神空将の冷静沈着な論考とNYTの陳腐な批判記事

2008年11月08日 08時39分35秒 | 日々感じたこととか

田母神俊雄前航空幕僚長の冷静沈着な憂国の論文『日本は侵略国家であったのか』に対する批判記事がNew York Timesに掲載されました。”Japan Fires General Who Said a U.S. ‘Trap’ Led to the Pearl Harbor Attack,”Oct. 31, 2008「アメリカの「仕掛けた罠にはまり真珠湾攻撃は決行された」と書いた将軍を日本が解任」、もちろん記者は大西哲光氏。さて、田母神論文とそれに端を発した前空将の更迭・退職に関して私はこう考えています。


・田母神論文:日本は侵略国家であったのか
http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf



1)田母神論文は(オリジナリティーのある特に優れたものではないが、逆に)冷戦構造の崩壊の前後に開示された旧ソ連側と西側の資料を踏まえたものであり、現在ではむしろ「常識論」とさえ言える。

2)国家がある歴史認識を正しいとか間違いなどと決めることなど土台できない(それは歴史家の仕事である)。実際、西洋の旧帝国主義諸国で「植民地支配」を謝罪した例など存在しない。更に、戦前の日本が「悪」であるとか、帝国主義は「悪」であるなどは歴史家でさえ言えないことだ。

3)自衛隊法61条等を根拠に個人としての言論行為を規制するのであれば、その段階で自衛隊法61条等とその運用は間違いなく「表現の自由」「思想・良心の自由」を定めた現行憲法に違反する。また、本件と所謂「シビリアンコントロール」(現行憲法66条2項)とは何の関係もない。「関係がある」と言う論者は、「シビリアンコントロール」の定義とその法的根拠(条文根拠または判例、ならびに、諸外国の立法例)を明示すべきである。

4)ただ、田母神前空将の懸賞論文寄稿は自衛隊の内規違反を犯しており、また、その地位の高さからみて政治的責任を問われるのはやむをえない。それは、論文の内容が正しいとか、村山談話が間違いとかいうこととは(残念ながら)無関係のこと。

5)畢竟、「更迭」やむなし→我々保守改革派は「田母神論文事件」を橋頭堡に政治領域で反日勢力に対して反転攻勢をかけるべし、と。


このような私の「田母神論文事件」認識からは、このNYTの記事はステレオタイプで陳腐な「埋草」にしか思えなかった。去る11月4日、アメリカ大統領も代わり、また、アメリカ発の金融恐慌を契機に世界史が激変しつつある現在、このような変化を拒否する傲岸不遜で独善的なリベラル派の世界認識こそ世界の不安定要因である。この記事を一読して私はそう感じました。以下、NYT記事紹介。






A high-ranking Japanese military official was dismissed Friday for writing an essay stating that the United States had ensnared Japan into World War II, denying that Japan had waged wars of aggression in Asia and justifying Japanese colonialism.

The Defense Ministry fired Gen. Toshio Tamogami, chief of staff of Japan’s air force, late on Friday night, only hours after his essay was posted on a private company’s Web site. The quick dismissal seemed intended to head off criticism from China, South Korea and other Asian nations that have reacted angrily to previous Japanese denials of its militarist past.


金曜日(10月31日)、第二次世界大戦に日本が突入したについては米国による誘導があったと主張する論文を書いたとして日本軍の高官が更迭された。その高官は当該の論文で日本がアジアにおいて侵略戦争を行ったことを否定し、かつ、日本の植民地政策を正当化した。

防衛省は金曜日の深夜、日本の航空自衛隊の幕僚長、田母神俊雄将軍を解任した。それはある民間企業のウェブサイトに彼の論文が掲載されてからほんの数時間後のことである。この素早い解任は、これまでも日本がその軍国主義的な過去を否定する事態に対しては怒りをもって応じてきた支那、韓国およびその他のアジア諸国からの批判を避けるために行われた節がある(★註:「これまでも日本がその軍国主義的な過去を否定する事態に対しては怒りをもって応じてきた」のは、当該国の国内政局に起因する幾らかの例外を除けば、支那・韓国・北朝鮮の特定アジア3国にほぼ限定されていることは言うまでもない)。


The defense minister, Yasukazu Hamada, said the essay included an “inappropriate” assessment of the war, adding, “It was improper for a person in his capacity as air force chief of staff to publicly state a view clearly different from the government’s.”

In the essay, General Tamogami, 60, elaborated a rightist view of Japan’s wartime history shared by many nationalist politicians. But it was a rare formulation from inside Japan’s military, which, as Japan has been shedding its postwar pacifism in recent years, has gained a more prominent role.

Japan’s military — whose operations are restricted by the nation’s war-renouncing Constitution — should be allowed to possess “offensive weaponry” and widen its defense activities with allies, the general also wrote.・・・


浜田靖一防衛大臣は、田母神空将の論文には大東亜戦争に関する「不適切」な評価が含まれており、而して、「航空幕僚長という立場で、政府見解と明らかに異なる意見を公にするということは、たいへん不適切だ」と述べた。

当該の論文で展開された大東亜戦争を巡る田母神将軍(60歳)の保守主義からの歴史認識は民族主義的な多くの政治家によって共有されてはいる。しかしながら、このような歴史認識が日本軍の内部から提出されることは稀なことだ。もっとも、ここ数年、その戦後の平和主義を日本が脱ぎ捨てつつあることにともない、日本の軍隊もまたより重要でより一般の目にもつきやすい役割を担いつつある。

日本の軍隊は(その活動は戦争を放棄している日本の現行憲法によって制限されているのだけれども)「攻撃的兵器」の保有を認められるべきであり、また、日本は集団的自衛権が行使可能な範囲も拡大されるべきだとも田母神将軍は書いている。(中略)


Since the mid-1990s, the Japanese government has officially apologized for its wartime past and acknowledged its aggression in Asia. But in recent years, nationalist politicians belonging to the right wing of the long-governing Liberal Democratic Party have waged a campaign to revise Japan’s wartime history.

Few politicians have spoken as comprehensively as General Tamogami did. Instead they have telegraphed their sympathies with the rightist view of history. The current prime minister, Taro Aso, in the past publicly praised Japanese colonial rule on the Korean Peninsula. Mr. Aso, whose family’s mining business used forced laborers during World War II, also said Koreans gladly adopted Japanese names.

Hours before the general’s dismissal, Mr. Aso said, “Even though he published it in a private capacity, given his position, it is not appropriate.”
・・・


1990年代の半ば以降、日本は公式にその過去の戦争を謝罪してきており、そのアジアにおける侵略行為を認めてきた。ここ数年は、しかし、長らく政権与党の座にある保守の自由民主党に属する民族主義的な政治家の中には日本の戦争期の歴史を見直そうという動きも活発になってきている。

田母神将軍の如く包括的に語った政治家は稀であるにせよ、それら民族主義的な政治家の中には(戦争期の歴史を見直そうという)保守派の歴史認識に共感を表明する向きも少なくない。現職の内閣総理大臣麻生太郎首相も、かって、朝鮮半島における日本の植民地支配に対する賛辞を公にしたことがある。(その一族が所有していた鉱山では第二次世界大戦の間、強制的に連行されてきた労働者が使われていた)麻生首相は、朝鮮人は喜んで創始改名を受け入れたとも語ったことがあるのだ(★註:もちろん、日本は日本のためにも朝鮮を併合した。けれども、朝鮮における日本の所謂「植民地支配」が彼の地の民度と福祉、生産力と生産性を飛躍的に向上させた極めて良好なものであったこと、而して、経済的な理由にせよ、その大体において朝鮮の人々が「創始改名」を望んだことは紛れもない事実である)。

田母神空将の更迭の数時間前、麻生首相は「個人的に(個人的な資格で論文を)出したとしても、立場が立場だから(論文の寄稿は)適切ではない」と語った。(後略)



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