英語と書評 de 海馬之玄関

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留学試験問題を中国語と韓国語でも出題する文部科学省の倒錯と無策

2008年10月31日 12時28分41秒 | 日々感じたこととか



        【Just because Lee-chan is so pretty doesn't matter!】


文部科学省が、今まで日本語と英語で実施してきた「日本留学試験」(EJU:The Examination for Japanese University Admission for International Students)を新たに中国語と韓国語でも出題する方針を固めた由。新聞報道によれば「受験者数の9割弱を占める中国(ママ)と韓国に配慮することで、さらに両国から多くの留学生を呼び込み、留学生30万人計画を早期に実現する」( 読売新聞:2008年10月26日)狙いとのこと。

馬鹿か、です。而して、「留学生30万人計画」なるものが当時の福田康夫首相の提唱にかかることを鑑みれば、また一つ、政治家の資質としては優秀だが世界情勢と国民の思いに鈍感な福田前首相の無能さのツケが我々日本国民に廻される事態が発覚したと言うことでしょう。

・日本留学試験
 http://www.jasso.go.jp/eju/whats_eju.html
 http://www.jasso.go.jp/eju/jp_subject.html

・留学生30万人計画
 http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/rireki/2008/07/29kossi.pdf
 http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/rireki/2008/07/29gaiyou.pdf


「留学生30万人計画」なるものは「日本を世界により開かれた国とし、アジア、世界との間のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」を展開する一環」(『留学生30万人計画骨子』)と位置づけられている。他方、2008年9月15日のリーマンブラザーズの破綻を端緒とする今次の世界金融システムの崩壊にかかわらず、否、崩壊してしまった世界の金融システムを再構築するためにも、これから3-5年の中期および5年以上の長期の観点からは世界経済のグローバル化は益々深化していくに違いない。要は、最適な時に最適な経営資源を最適な場所で調達する現在のグローバル化は、今後は、付加価値の高い人材を世界から受入れること、あるいは、経営と経済と政治を問わず枢要な国々の重要なポストを自国に好意的か、少なくとも、自国を理解してくれている人士が1人でも多く占めることの具現を各国ともに目指すことは必定。


而して、①そのグローバル化が更に深化した世界ではシュンペーターの言う意味での「クリエーティブな商品」をコンスタントに開発可能にすべく、優秀な人材の層を厚くする競争に各国とも邁進せざるをえず、加えて、②自国の味方や理解者(親日家や知日家)を枢要な諸外国の広範な領域で重要なポジションにつける競争もまた激化することでしょう。

なぜならば、グローバル化の更なる深化は、グローバル化を単なる国際経済領域のトレンドではなく政治と文化とを貫く生態社会的な環境そのもの(eco-system environment itself)に変容させるだろうからです。そして、グローバル化の深化が個々の人間にとっては(ビジネス)チャンスであることも含め個々人がマネージできる範囲を超えた事象であり、畢竟、主権国家を超える国際紛争調整の機構が成立しない限り、グローバル化の波濤から個人を保護する主権国家の役割はグローバル化の深化に比例して拡大強化されるしかないと考えるからです。

この国際政治と経済の状況認識からは「外国人の日本留学試験を中国語と韓国語でも実施する」という今回の文部科学省の決定は是認されるべからざる暴挙。そう私は考えます。日本留学試験(EJU)を中国語と韓国語で実施することは、(1)世界、就中、アジアから付加価値の高い人材を日本に集めることとも、また、(2)将来の親日家・知日家を枢要な国でその社会の枢要なポジションに押し上げることともほとんど無関係であるだけでなく逆効果とさえ思われるからです。

蓋し、支那のエリート層とはとても言えない(『犯罪白書』と出入国管理データから見て、国粋馬鹿右翼の差別的な言辞の如く「その多数が「犯罪目的」での入国者」とまでは言えないにせよ)学業や日本理解よりも出稼ぎが主な目的の非エリートの支那人と世界の嫌われ者である韓国人が圧倒的多数を占める、そんな日本の大学の「留学生」としての将来の自己イメージは他のアジア諸国や非アジア諸国の優秀かまたは有力な若者にとって日本留学の企てをディスカレッジするこは必定。加えて、限られた国家予算をそのような「学生ビザを就労ビザ」と勘違いしている支那人留学生や世界の爪弾き者に割くことは「留学生30万人計画」の目的から見ても不適切極まりない。

畢竟、世界の共通語である英語か日本語で留学生試験は実施すべきである。蓋し、英語も日本語もできる各国の優秀な人材か、日本に興味がある各国のエリート階層の子女、すなわち、優秀か有力か。グローバル化が益々深化する状況で日本が欲する留学生の中核はそのような若者でないはずがない。ならば、優秀でもなくその母国で有力でもない、支那と韓国からの留学生でもって「30万人」の数字合わせをしたところでそれは日本の国益にとって何の意味もない。それどころか、再度帰しますが、例えば、タイ・ベトナム・カンボジア・トルコ等の親日国を始め多様な国の優秀かまたは有力な留学生を獲得するためには中韓の優遇は逆効果となろう。而して、今回の文部科学省の決定は、「高学校歴保持者で新卒者を固めよ」という経営Topからのオーダーを受けたある大手予備校の人事部が、社会人としては全く使い物にならないことは常識であるにもかかわらず、ICU(国際基督教大学)の学生に内定を乱発したのと同じ愚行というべきだと思います。

ならば、嫌われ者の韓国人はゼロにするとして、(支那を含め)国籍にかかわらず優秀または有力な留学生を獲得するには、日本の大学自体の充実と、大学卒業後の就職等の出口の整備が肝要。畢竟、留学生の何割かがハーバードの合格を蹴って早稲田に入学するとか、ミシガン大学やUCLAを蹴って千葉大学や熊本大学に入学するようにならない限り、「30万人計画」の実は達成しえないのではないか。而して、世界の嫌われ者とその国の重要なポジションに将来就く可能性の低い「出稼ぎ目的」の留学生を受入れることで「30万人」の帳尻を合わせるなどは本末転倒というべきであり、蓋し、留学生試験の言語に中国語と韓国語を追加するなどはいかさまにすぎない。私はそう考えます。

以下、本件を報じたDaily Yomiuriの記事。尚、外国人を巡る私の基本的な考えについては下記拙稿をご一読いただければ嬉しいです。

・外国人とはなんじゃらほい
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-292.html

・外国人がいっぱい
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-198.html

・揺らぎの中の企業文化−日本的経営と組織は国境の消失する時代に拮抗しうるか
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-199.html

・国籍法違憲判決が問う<国民概念>の実相と再生
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-419.html



●Chinese, Korean to be added for intl students' test
Chinese and Korean languages will be added to the current examination to evaluate the academic abilities of foreign students who would like to study in Japan, the Education, Science and Technology Ministry said.

The plan, which the ministry agreed on Saturday, aims to promote the early realization of the government's effort to increase the number of international students in Japan to 300,000. It takes into account the fact that Chinese and South Korean students account for nearly 90 percent of those taking the Examination for Japanese University Admission for International Students (EJU). The ministry hopes to further increase the number of students from both countries.

Although the examination has been available only in Japanese and English, the overwhelming majority of students taking the test are Chinese and South Korean. Of 19,206 students who took the examination in June 2008, Chinese students accounted for 74 percent and South Korean students 14 percent.The ministry also decided to adopt the two languages to evaluate the students' basic scholastic abilities beyond the language barrier, according to the sources.(Oct. 27, 2008)


●留学生試験、中国語と韓国語でも実施へ
日本への留学を希望する外国人留学生の学業遂行能力を評価する試験は、今後、中国語と韓国語でも実施される。そう、日本の文部科学省が発表した。

土曜日(10月25日)に同省が了承した計画は、外国人留学生を30万人に増やす政府の取り組みを早期に実現するためのもの。而して、支那人と韓国人がこの日本留学試験(EJU)の受験者の90%近くを占めている事実を鑑みた結果、この(留学生試験を中国語と韓国語でも実施するという)計画は作成された。同省はこれら両国からの留学生の一層の増加を期待している。

日本留学試験は今までは日本語と英語でのみ受験可能だったが、この試験の圧倒的多数の受験者は支那人と韓国人。すなわち、2008年に日本留学試験を受験した19,206人の74%は支那人であり、14%が韓国人だった。而して、この受験者実績に注目した上で、文部科学省は言葉の壁を越えて学生の基礎学力を評価できるようにすべく中韓の2ヵ国語の採用を決めたのだ。



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